短編集

□昔話
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「わたし、ゆうきっていうの!」
遊ぼうよ、と手を握る女の子。
それが、俺とアイツの出会いだった。
鬼ごっこ、かくれんぼ、高鬼…毎日毎日遊んで、仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
いつも一緒にいて、幼稚園に行くときも、帰るときも、いつのまにか隣に居る。それは幼稚園を卒園して、小学校に上がっても変わらなかった。
毎日何かと男子とふざけていて、廊下を駆け回り、時には追いかけ、時には追いかけ回される。その時のアイツはとてもイキイキしていた。
運動神経抜群の俺達はリレーの選手を任されたりもして、放課後に校庭で練習したのはいい思い出だ。
学年が上がって5年生になる頃には、アイツは女子の癖にいつも先輩と殴りあっていた。俺達の代の先輩はヤンキーのなりかけみたいな奴が多くて、誰かが泣かされてるのが日常茶判事だった。…まあ、アイツが必ずその現場にいるのも日常風景だったけどな。
アイツは強いから、一対一だと先輩方は勝てない。だから、時々呼び出して大人数でボコボコにしてやろうって事があるんだ。そんな時はみんな俺に知らせてくれるから、俺も加勢して、逆にボコボコにするんだけどな。
「さあ、お前の罪を数えろ!」
って突っ込んで行くんだよ。面白くてしょうがない。かっこよかったからいいけど。
まあ、小学校も中学校もそんな感じだったよ。おかげで一時期は『相棒』って言われた。喧嘩の時が息ぴったりだったから、らしい。
今となっては懐かしいけどさ。
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