短編集

□女の子らしい格好
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「…お前、女の子らしい格好しないのかよたまには…」
いつものようにひょいと家に遊びに来ていた翔平が呆れた様に呟く。
「なぁアンク、あいつって家でもあんな格好なのか?」
あんな格好、とは黒のプルオーバーに黒のズボン、黒のパーカーという結希の格好を指している。
「…まぁな」
アンクは我関せずと言った表情でアイス片手にスマホをいじりながら答える。
確かに、比奈と比べると大分地味言えば地味だ。単に比奈がオシャレという事かもしれないが。
「あんな格好とは失礼な。大体、女の子らしい格好ってどんな格好よ?」
「なんかこう…ワンピースとか、スカートとか…」
「動きにくい無理」
「んじゃせめてピンクとか可愛いい色に変えるとか」
「無理」
「…はぁ」
撃沈。翔平は項垂れて溜息をついた。
「…映司よりマシだろ」
「映司って誰だ?」
翔平が?を浮かべてこちらを見る。…アンクめ、余計な事を!
「アンタは知らなくていいのよ、翔平」
なんだよーと翔平は毒づくが、さらりと流した。
「その癖ペンダントは付けるんだもんなー」
「…ペンダント?」
「あの、なんて言うか、メダルが割れた様なデザインの奴なんだけど」
「…あぁ」
アンクはあれか、と納得した。前に結希を看病した時に持っていた物。
「あれはお気に入りなんだよ…」
ぼそりと呟く。アンクが大好きだし、かっこいいし!とは当の本人がいる前で言える訳が無く、と言ってもそれ以上の理由が無いので、口を閉じるしかない。
「でもさ、少し位可愛い洋服持ってるだろー?ちょっと位オシャレしても」
「嫌だ」
「ちょっと位着てみても」
「面倒臭い」
「ちょっと位」
バン!
「…は、」
「しつこい」
だんだん苛立って来て、翔平の横スレスレに蹴りを入れる。
「…はい」
(……怖ぇ)

この日から、翔平が結希の服装について口出しする事は一切なかったという。

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