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□プロポーズのプラン
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しとしとと雨が降り注ぐロイヤルワンダー学園。
この星にも梅雨という気候的概念があり、連日雨が降っていた。
そんな訳で本日も雨天なり。
部屋の窓の向こうで雨に濡れてしっとりとした美しさを放つ紫陽花を眺めながらファインはのんびり呟く。

「今日も雨だね〜」
「出来たわ!」
「えっ?」

急に声を上げたレインに驚いてファインは振り返る。
先程まで机に向かって熱心に何かを書いていたのでそっとしておいたのだが、その何かが完成したらしく、レインは一枚の紙を掲げてはしゃいでいた。
傍で二人の天使とプーモが大人しく座ってレインの作業を見守っていたが不思議そうな表情でいたのでレインが何を書いていたか把握は出来ていないのだろう。
ファインはレインの近くまでやって来ると何事かを尋ねる。

「何が出来たの?」
「ブライト様と6月に結婚式を挙げる為のプランよ!」
「え?6月?何で6月なの?」
「ジューンブライドって言って6月に結婚すると幸せになれるのよ」
「へ〜、そうなんだ」
「それでね!雨でお外に行けなくて退屈だったからブライト様と6月に結婚する為のプランを考えてたの!」
「熱心に何を書いていたのかと思えば・・・まさに『絵に描いたぼた餅』でプモ」

呆れるプーモの言葉は都合良くレインの耳には届かなかった。

「プランってどんなプラン?レインの方から結婚を申し込むの?」
「違うわよ!ブライト様が私に結婚を申し込まずにはいられない壮大でロマンチックな恋愛劇よ!」
「れ、恋愛劇・・・?」
「ある日悪い人達がやってきて私を誘拐するの!それで無理矢理結婚させられそうになるんだけどそこにブライト様が颯爽と現れて助けに来てくれるの!その結婚待った!プリンセスレインは僕の花嫁だ!あぁブライト様!助けて〜!待っていてくれ、レイン!今すぐ君を助けるよ!それからブライト様は華麗な剣技でバッタバタと敵をなぎ倒していって最後に私の手を取って言うの!君が無事で良かったよレイン。君は可憐で美しいから沢山の人に狙われてしまって僕は気が気じゃないよ。どうか僕だけの花になってくれないかい?ブライト様、もしかしてそれって!?僕と結婚してくれないかい?レイン!はい!喜んで!!・・・とまぁこんな感じよ!!」
「結婚プランじゃなくていつもと変わらないただの妄想でプモ」
「キュ〜」
「ピュ〜」

より一層呆れるプーモとキュキュとピュピュ。
しかしやっぱりレインの耳に届く事はなかった。

「ねぇねぇどうかしら!?」

「ど、どうって言われても・・・」

「敵地の最奥で最愛の人を救う為の激闘を終えた直後にプロポーズっていうシチュエーションも中々ロマンチックじゃない!?」

「あれ?でもレイン、前はお花畑でプロポーズされたいって言ってなかった?」

「最近そういうシチュエーションのラブロマンス映画を見てこっちもいいな〜って思ったのよ!」

「ふ〜ん」

「ファインはそういう理想のプロポーズのシチュエーションはあったりする?」

「えっ!?あ、アタシ!?」

「シェイドにこういう風にプロポーズして欲しいとかない?」

「そそそそそそそそれは・・・・・・・・・色んな意味で思いつかない、かな・・・」

「そうなの?」

「だってあのシェイドがムード出してプロポーズするとかあんまり想像つかないんだもん・・・」

「言われてみればそうねぇ。するとしてもなんかぶっきらぼうに指輪とか差し出してきそうだわ」


(否定出来ないでプモ)


「この際その辺は無視するとしてファイン自身の理想はどうなの?こういう場所がいいとかこんな風に言われたいとか」

「う〜ん・・・とりあえず静かな場所ならどこでもいいかな。やっぱり人に見られながらってのは恥ずかしいし」

「じゃあ二人っきりがいいって事ね?ファインも中々ロマンチックじゃない!」

「そ、そう?」

「それでそれで?朝・昼・夜のどの時間がいい?」

「え?う〜ん・・・夜かなぁ?その方が雰囲気あるっていうか」

「そうよねそうよね!月明かりに照らされてプロポーズってかなりロマンチックよね!ファインも分かってるじゃない!!」

「えへへ、そう?」

「それでどんな言葉で口説かれたい?」

「う〜〜〜ん・・・・・・・・・思いつかない・・・」

「シェイドを抜きにしても?」

「うん・・・ていうかその辺はどうしてもシェイドの事が思い浮かんじゃうから出来なくなっちゃうんだよねぇ。シェイドが口説く所って想像出来る?」

「猫被りして演技してる時なら出来なくもないけど素だと到底無理ね」


(ハッキリ言い切ったでプモ)


「まぁアタシはぶっきらぼうに指輪を渡されるでもいいかな。その方がシェイドらしいしそれが一番だよ!」

「確かにそういうシチュエーションもアリと言えばアリね〜。言葉少なにぶっきらぼうにぐいっと小箱を渡されて開けてみたら中身は婚約指輪だったっていうのも悪くないわ」

「でしょでしょ?」

「で、その後はキスするのがセオリーね!」

「え・・・?き、キス・・・?」

「シェイドみたいなタイプはそういうのをしてもおかしくはないわ。勿論私のプランでもブライト様のプロポーズを受け入れた後にキスをする予定なんだけどね!」

「き・・・ききききキスはいいよ!結婚式の時で十分だよ!うん!!」

「え?でもそれじゃあ、プロポーズの後にシェイドがキスしようとしてきたらどうするの?」

「に、逃げる!全力で!!」

「・・・」







翌日


「シェイド、ファインにプロポーズする時があったらまず最初は手錠で繋いでおいた方がいいわよ」

「いきなり何を言っているんだお前は」








END
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