オリジナル倉庫

□つい買いすぎたお土産
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「・・・参ったな」

テーブルの上に広げた物を前にヴィンセントは困り果てていた。

「流石に見直すとしよう」

テーブルの上に広げた物―――ユフィへのお土産を前にヴィンセントはそう呟いて整理する事を決めた。
現在ヴィンセントは仕事の関係であちらこちらに訪れる機会があり、売店を見つけてはユフィへの土産を見繕っていた。
これはユフィが喜ぶだろう、これはユフィの好きな物だと考えては都度購入していた為、お土産の海が出来てしまったのである。
いくら喜んで貰う為とはいえ、こんなに貰ってもユフィは困ってしまうであろう。
そう思ってヴィンセントはお土産の見直しを決行する事にしたのだ。

「まずはこれだな」

最初に手に取ったのはサーフィンをしている可愛らしいチョコボがプリントされたタオル。
海外にしか売っていないタオルで、チョコボが好きなユフィには嬉しい物ではないだろうかと思って購入した。
これはお土産としてプレゼントしても良いだろう。
だから今自分が座っているソファの右のスペースに置く。

「これは・・・」

次に手に取ったのはペアのグラス。
模様の美しい手頃な大きさのグラスで実用的だからと買った物だ。
出張に行く少し前にユフィが欲しいと呟いていたので丁度良いだろうと思った。
ただ、問題はこの模様を気に入ってくれるかどうかだが・・・いや、気に入ってくれなければ売りに出せば良い。
それより次だ。

「これは・・・こっちだな」

アクセサリーを売っている店の前を通った時に目に入った蝶のブローチ。
ユフィによく似合うだろうと思って買ったものだ。
これもお土産候補として自分の右側に置く。

「・・・これは流石にいらないな」

オマケで貰ったプラスチックのタッパー。
とりあえずお土産袋と一緒に入れておいたが邪魔だし流石に喜ばれないので自分の左側に置いた。

「これはどうするか・・・」

このようにしてヴィンセントは次から次へと土産の選別をして精査していくのであった。
しかしその結果は・・・

「・・・・・・大して変わらないな」

自分の右側にはどっさりと土産物が積まれており、左側にはいらない物が指で数えるくらいしかなかった。
しかしもう一度選別した所で結果は変わらないだろう。
これには流石に苦笑を禁じ得ない。
ユフィへの土産に関しては買うのを抑える、という方向に舵を切るしかなさそうだ。
呆れにも似た溜息を吐いてコーヒーを飲んでいるとテーブルの上にメモがあるのが目に映った。
気になって手にとって裏返すと・・・お土産候補のお菓子の名前がズラリと書き連ねられているではないか。
しかも自分の字で。

「・・・こちらも選別した方が良さそうだな」

メモにはそれぞれのお菓子がどのような物かという情報が細かく記されており、他にもユフィが好きそうとか食べるかもしれない、などと書かれていた。
一体どれだけ自分はユフィの事で頭がいっぱいなのか。

「すっかり溺れてしまっているな」

ひょんな事から出会い、心を通わせる内に惹かれて気付けば引き返せぬ程に溺れてしまっていた。
年下であり、禁断の恋であると知り得ながらも求めずにはいられなかった。
傍にいて欲しいというただその一つの思いだけがヴィンセントを動かし、そうしてユフィとの婚約をものにしたのだ。
ユフィへの想いはこんな山のような土産だけで伝わるものではない。
だから早く帰国してありったけの想いを伝えたい。
華奢で生命力溢れる体を思いっきり抱きしめて柔らかさと香りと体温を堪能したい。
そんな風にユフィ一色の意識の海に沈んでいるとスマホがLINEメッセージが来た事を知らせた。

「・・・ユフィか」

恋人の名前を見て自然と笑みが浮かぶ。
メッセージには、明日、校外学習で隣町に行くのだと書かれていた。
自分もそうだったが校外学習なんてものは勉強に見えた遠足のようなものである。
レポートをまとめるのが面倒だが、そこは班のみんなと知恵を出して適当に何とかするもの。
少し前の自分を思い出しながらヴィンセントは返事を打った。

『はぐれて迷子にならないようにな』

『子供じゃないんだからならないっての!』

頬を膨らませている姿が容易に思い浮かぶ。
ユフィをからかうのは楽しい。

『そんな事言う奴にはお土産買ってきてやらないぞ!』

『ならば私もお前への土産は買わないでおこう』

本当は大量に買い込んであるが勿論それは言わない。
というよりもユフィは自分がユフィへ沢山の土産を買っていると想像しているのだろうか。
少し気になってユフィの反応を待った。
すると・・・

『今のナシ!お土産買ってあげるからお土産ちょーだい!!』

お土産を貰う為にお土産を買ってくるというトンチンカンな返事が返ってきた。
でも、こんな所もユフィらしい。
今自分の隣に山のようにお土産が積み上げられているというのにヴィンセントはそれを言わないで敢えてお土産のリクエストを尋ねた。

『土産は何がいい?』

『マテリアってのが欲しい!すっごくキレーなんでしょ?』

『そっちで言う所のビー玉みたいな物だぞ』

『ビー玉とは訳が違うって!無理しない範囲でいいから買って来てよ!』

『いいだろう』

「・・・また土産が増えたな」

小さく苦笑を漏らしてヴィンセントはマテリアが売っている店を頭に浮かべるのであった。














END
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