クリスタル横丁

□オフトゥン大戦を集結させた男の名は
1ページ/2ページ

クラウドたち主人公五人がオフトゥンに飲み込まれてから一時間後。
クリスタル横丁ではすべての人々がオフトゥンに取り込まれ、天の国に等しき甘美な眠りに就いていた。
ただ一人を除いては・・・。

「・・・異様な光景だな」

道路の真ん中を歩き、立ち止まって空を見上げる男の名前はヴィンセント・ヴァレンタイン。
赤いマントと紅い瞳が特徴的なその男だけは唯一オフトゥンに取り込まれていなかった。
オフトゥンは眠りに誘われた者を取り込み、そして永久にも等しい時間を眠らせてしまうのだがこの男は違った。
というよりも睡眠に関してそこまで貪欲ではないのでオフトゥンに誘惑されてもこの男は一切反応する事はなかったのだ。
え?本編?
あれは罪の償いの為だから睡眠に貪欲とはまた違うからノーカンノーカン。

さて、この異常事態を収束するべくヴィンセントは行動にかかった。
まず最初は友人の手を借りる事だ。
無数に浮かぶオフトゥンの中からある人物を探して出して見つける。
その人物は他と同じように頭から布団を被って気持ち良さそうな寝息を漏らしていた。

「スー・・・スー・・・」
「アーヴァイン」
「んん・・・ヴィンセント・・・?」
「起きろ、アーヴァイン」
「後十分・・・」

眠たげな声を漏らすとアーヴァインはもぞもぞとオフトゥンの中に潜って行ってしまった。
しかも「後十分」だなんて言葉を残して。
大体こんな言葉を残して寝る人間は宣言通り十分後に起きる事なんてない。
勿論アーヴァインに限らずだ。
やはり布団の魔力は侮れないなと溜息を吐きながらヴィンセントは奥の手を使った。

「セルフィの寝起き姿を見たくないのか?」
「・・・へ?セフィの寝起き姿?」
「そうだ。恐らくセルフィも今は寝ている筈だ。起こしに行けば寝起き姿が見られると思うが」
「起きるー!!」

ガバッと勢いよく布団を捲って起き上がるアーヴァイン。
そんな友人の姿に複雑な気持ちにならないでもないヴィンセントだったが起き上がってくれたのでもう何も言うまい。
素早く支度を終えたアーヴァインを伴ってヴィンセントは次なる仲間を求めて町を歩く。
そして―――

「見つけた」
「やっぱ寝る用の帽子被ってるね。ポンポンの部分柔らかそう〜」

次に二人が見つけたのはビビが寝ているオフトゥン。
ビビはいつもの三角帽子ではなく、就寝用の三角帽子を被って可愛らしく寝ていた。

「すぴー・・・すぴー・・・」

「さて、どうやって起こすか」
「僕に任せて。おーいビビー!」

「んー・・・なぁにぃ?」

「一緒にクリスタルヘブンでホットケーキ食べよ〜!」

「ホットケーキ?」

「そう!ティファに頼んでホイップクリームとチョコレートソースをいっぱいかけてもらうんだ!食べたくないかい?」

「食べたーい!!」

嬉しそうな声を上げるとビビもアーヴァインと同じようにオフトゥンから抜け出して支度をした。
これであと一人だ。

「キングについてだが・・・」
「うん?」
「私の予想ではあれがキングの布団だと思うのだがお前たちはどう思う?」

アーヴァインとビビを誘導してヴィンセントは空高くに浮かぶ一つのオフトゥンを指差す。
その指の先には『王』と大きな文字で書かれた布団が堂々と浮かんでいた。

「あれはきっと、ていうか絶対にキングだね〜」
「むしろキングじゃない可能性の方が低いと思うなぁ」
「どのようにして起こすか」
「僕が起こすよ。キングー!」

「・・・んぁ?」

「今日はセブンとサボテンダーの展覧会に行くんでしょー?」

「そうだった!!」

突然キングは覚醒するとすぐさま身支度を整えて戻って来た。

「危うく忘れる所だった」
「でもこの騒ぎをどうにかしないとサボテンダー展覧会も多分開かないよ」
「どーする、ヴィンセント?」
「この謎の布団がどこまでの性能を有するのか見せてもらうとしよう。この雲を晴らす事は出来るか?」
「OK!任せてよ!」

ヴィンセントをどんよりとした灰色の雲を指差すとアーヴァインはニヤリと笑って頷き、パンデモニウムを召喚した。
そして『暴風圏突入』によりその竜巻をもって空の雲を瞬く間に晴らしていった。
これにより広く澄み渡る空、そして温かく輝く太陽の光がクリスタル横丁に降り注いでいく。

「うぅ・・・暑い・・・」
「布団暑い〜」
「蒸し地獄じゃ〜!」

太陽の熱と布団の熱のコンボでオフトゥンで寝ていた人々が次々と布団を捲って起き上がって行く。
それと同時に布団は地上に降り立ち、その効力が失われた事を示す。

「どうやら布団の中の温度を下げる機能は持ち合わせていないようだな」
「作戦成功だね、ヴィンセント」
「ああ。だがこの布団をどうにかしない事には解決したとは言い難い。
 明日また肌寒い日になればこいつらは力を取り戻して今日と同じ事をやりかねん」
「それだったら俺にいい考えがある。ビビ、手伝ってくれるか?」
「うん!」

ビビに協力を仰ぐとキングは拡声器をビビにも渡してスイッチを入れて構えた。

「こちらは廃品回収車です。いらなくなった布団・羽毛布団・マットレス・枕等はこちらで全て燃やします。
 御用の方は遠慮なくお持ちください。一週間は受付致します」
「今なら大サービスでファイガでお手軽に燃やしまーす!」

オフトゥンにとって不穏なワードがクリスタル横丁全域に響き渡り、オフトゥンは怯えてどこか遠くの彼方へと飛び去って行った。
これで横丁を支配していたオフトゥンは全て消えたと言えよう。

「よし、これでいいな」
「やっぱり布団にとって燃やされる事ってかなり恐怖なんだね〜」
「全人類にとっても恐怖なんじゃないかな。一番苦しい死に方って焼かれながら死ぬ事だってドラマであったし」
「燃やすだの焼かれるだのの話は置いておくとして、まずは知り合いを回収しに行くとしよう」
「だね〜」

そんな訳でヴィンセントたちはユフィ達を回収しに行くのであった。











END





オマケ


アーヴァイン「はいセフィ〜、一旦お家に帰ろうね〜」
セルフィ「ん〜抱っこ〜!」
アーヴァイン「はいはい、お姫様のお気に召すままに」


ひょいっ(セルフィを抱き上げる)


アーヴァイン「それからケイト、ちょっとしんどいかもしれないけど僕の背中に掴まって」
ケイト「え?いいよアタシは。重いしそれこそアーヴァインの方がしんどいでしょ?」
アーヴァイン「へーきへーき!ケイトくらいの女の子なんて全然重くないしさ」
ケイト「でもセルフィを抱っこしてるでしょ?」
セルフィ「?}
アーヴァイン「だからって女の子を一人放っておけるほど僕も薄情じゃないよ。ほら、遠慮しないで掴まって」
ケイト「ん・・・じゃぁ宜しくね、アーヴァイン!」

ユフィ「ヴィンセント運んで〜」
ヴィンセント「送料と手数料がかかってもいいのか?」
ユフィ「意地悪言うなよ〜」
ヴィンセント「フッ、冗談だ。リュックは背中でよければ掴まってくれ」
リュック「いいの?」
ヴィンセント「ああ」
リュック「ユフィもいい?」
ユフィ「もっちろんだよ!」
リュック「んじゃ、お言葉に甘えて宜しく〜」



キング「この流れだと俺は締め担当になるな。セブン、どうしたらいいと思う?」
セブン「ん・・・?んぅ・・・そうだな・・・」(←キングにおんぶしてもらってる)
ビビ「セブン、眠たそう。そっとしといてあげよう?」
キング「それもそうだな。という訳で」











END




→後書き
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ