クリスタル横丁
□チョコ・チョコ・チョコ(多分真面目)
1ページ/3ページ
本日はバレンタインの前日。
チョコを作る為の材料を買いにエルオーネとシンクはスーパーに来ていた。
店内はバレンタインの飾りが施されており、ピンク系の色やチョコ系の色で店内が彩られている。
更に店に入るとチョコの大きなディスプレイが設置されており、今にもチョコの甘い匂いが香ってきそうであった。
「わ〜チョコいっぱ〜い!」
「こんなにいっぱいあると目移りしちゃうね」
「ホントだね〜。あ、もぐりんのチョコだ〜!」
「わぁ、可愛い!シンク、これ気に入った?」
「うん!」
「じゃあシンクにこれ買ってあげるね」
「いいの?」
「勿論!友チョコだよ」
「やった〜!じゃあ私もエルオーネに友チョコあげる〜」
「ありがとう!」
「えーっと、エルオーネのチョコは・・・あっ!標識チョコ発見!」
「本当だ!可愛い!面白い!私これがいい!」
「ラジャー!それじゃ材料も取ってきて買ってこよっか〜」
「うん!」
二人仲良く友チョコとチョコを作る為の材料を手に店内を回るのであった。
「な〜んて事があったんだ〜」
「それは良かったですね」
帰宅後、シンクはトレイの部屋に転がり込んで今日あった事を話していた。
膝の上にエルオーネから貰った友チョコを大事に置いて、トレイの肩に頭を乗せて寄りかかりながら語っているところである。
シンクはニコニコと笑顔を絶やさぬまま話を続ける。
「でねでね、エルオーネには標識チョコをプレゼントしたんだ〜」
「標識チョコですか。中々変わったチョコが売っていましたね」
「私もエルオーネもビックリだよ〜。でもね、エルオーネがそれ気に入ったって言うからそれあげたんだ」
「そうですか。エルオーネから貰ったチョコは食べないんですか?」
「明日がバレンタインだから明日食べるんだ〜。エルオーネも明日食べるんだって」
「なるほど。それにしてもシンクに良いお友達が出来て私は嬉しいですよ」
「トレイにも情報部っていう友達が出来て私嬉しいよ〜。トレイってあんまり友達出来なさそうだからさ〜」
「あれは友達とは言いません。極悪非道の悪鬼と言います。それからさりげなく私を貶さないで下さい」
溜息交じりに苦言を呈するがシンクは全く意に介した様子はなく、笑顔を崩さない。
つくづく天然は恐ろしいと思う。
「明日はシンクちゃんが愛情をい〜っぱい込めたチョコあげるからね〜」
「楽しみにしてますよ。ちなみにバレンタインというのはそもそもは―――」
「お休み〜」
蘊蓄を垂らし始めたトレイから離れてシンクはベッドに寝転がるのだった。
その頃、エルオーネは・・・
「なんて事があってね」
『そ〜か〜。良かったな、エル!』
ラグナとライン通話しつつチョコ作りに勤しんでいた。
甘いチョコの香りがエルオーネの部屋を満たしており、彼女の気分を浮つかせる。
「だから明日、シンクがくれた友チョコ食べるの。おじさんたちにも見せてあげるね」
『お、サンキュー。楽しみにしてるぜ』
「そういえばキロスさんとウォードさんも来るんだよね?」
『おう、来るぞ』
「じゃあチョコ直接渡せるね。レインの分もあるから、おじさん渡しといてくれる?」
『勿論だ!レイーン!エルがレインの分のチョコも用意してくれてるってよー!』
嬉しそうに伝えるラグナに、通話越しから「そう?楽しみね」というレインの声が聞こえた。
『ところでエル、もしかしてセフィロスの分のチョコも・・・』
「作ってあるけど?」
ビダーン!!という何かが床に倒れる音が通話越しに盛大に響く。
驚いたエルオーネは慌ててラグナに呼びかけた
「どうしたのおじさん!?大丈夫!!?」
『大丈夫よ、エルオーネ。大した事ないわ』
「そう?」
『もう、ラグナ。エルオーネがセフィロスオーナーにチョコを贈ってるのは毎年の事なんだからいい加減慣れなさいよ』
『だって〜!だって〜!』
『エルオーネ、今年はどんなチョコを贈るの?もしかしてハート型かしら?』
『ハート型なんて嫌だ〜!おじさんは認めないぞ〜!!』
「ふふ、レインってばそんな形のは贈らないよ。みんなと同じ普通の四角いチョゴだよ」
『あら、それは残念ね』
『残念なもんか〜!!セフィロスなんぞにハート型のチョコなんか絶対ダメだ〜!!』
『もう煩いわよラグナ!!』
わーわーと泣き叫ぶラグナにエルオーネはクスクスと笑いを小さく漏らす。
そこでふと時計を見やれば時刻は夜の23時を指していた。
流石にもう寝る時間だ。
名残惜しく思いながらもエルオーネは通話を切る事にした。
「もう遅い時間だから寝るね。お休みなさ〜い」
『お休み、エルオーネ』
『風邪引かないようにな』
「はーい」
赤いボタンをタップして本日の通話を終了する。
その後はエプロンや調理器具を片付け、パジャマに着替えて布団に潜った。
チョコの甘い香りは寝室にまで及んでいて、なんだかいい夢が見れそうな気がした。
「オーナー、きっと教会に避難して来るだろうからその時に渡そうかな」
明日の予定をふんわりと考えながらエルオーネは眠りに就くのであった。