クリスタル横丁

□今年もクリスマス
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場所は変わってユフィたちが住んでるマンション。
こちらでも漏れなく大規模停電の被害に見舞われており、部屋にはユフィとヴィンセントしかいない。
セルフィやアーヴァインたちは立て込んでいた仕事が漸く終わってこれからクリスタルヘブンに行く、という所で停電に見舞われ、電車が動かず足止めを食らっている所である。
対するユフィとヴィンセントはクリスタルヘブンでのクリスマスパーティー中止のお知らせを聞いてこうして真っ暗な部屋で二人ぼっちでいたのである。

「クリスマスパーティー中止か〜」
「停電が起きてしまったのだから仕方あるまい」
「つまんな〜い」
「停電が起きてしまったのだから仕方あるまい」
「それついさっき聞いた〜。それよかヴィンセント、寒い」
「停電が起きてしまったのだから仕方あるまい。それに・・・」

チラリとヴィンセントは腕の中のユフィを見下ろす。
今現在、ヴィンセントは座椅子に座っており、そのヴィンセントを椅子にしてユフィは座り、コタツの中に入っている。
電気の点いていない冷たいコタツだが。

「これ以上はどうしようもないと思うが」
「体温もっと上げろ―。ヴィンセント体温低いんだよ」
「そればかりはどうしようも出来ないな。大人しく我慢しろ」
「さーむーいー」

ズリズリと押し付けるように体を揺らしてくるユフィだが、ヴィンセントからしてみれば猫や動物が構えと言って体を押し付けてくる感じにしか取れない。
それにヴィンセント自身、ユフィをこうして後ろから抱きしめているから全く寒くない。
むしろ暖かくてこれ以上温度を上げたら暑いくらいだ。
むくれるユフィを宥めるように頭を撫でてやるがユフィは満足行かない様子。
さて、この猫はどうしたら機嫌を良くするのか。

「今日パーティーで食べる予定だったチキンとかケーキとかご馳走貰ったけどこんな暗さじゃ食べれないし」
「電子レンジも使えないしな」
「プレゼント交換楽しみだったのになー」
「セルフィがパンデモニウムを召喚してバラ撒くあれか。
 プレゼントのリボンや包装を崩さずにバラ撒くあの技は毎度の事ながら見事だと思う」
「見たかったなー」
「明日改めてパーティーを開催すると言っていただろう。我慢するのだな」
「我慢ばっか」
「・・・案外そうでもないぞ」
「え?」

ヴィンセントは近くにあった自分のカバンを引き寄せて手を入れると可愛らしくラッピングされた小包を取り出した。
少し前、アーヴァインがパーティー用のプレゼントとは別にセルフィへのプレゼントを買うと言って、流れで自分も買った物。
どのタイミングで渡そうかと悩んでいたが丁度良い。
少しムードに欠けるがユフィはあまり気にしないだろう。
そう思ってユフィの掌にそっと小包を置いた。

「ん?これ・・・箱?」

暗がりでよく見えない為、手探りでユフィは小包の外装を探る。
手触りなどからしてリボンがかけられているのも分かった。

「リボンかかってるし・・・もしかしてプレゼント!?」
「・・・そんな所だ」
「マジで!?いいの!?あ、でも明日のパーティーの分じゃないだろーなー?」
「それとは別のプレゼントだ。アーヴァインがセルフィ用に買うと言っていたのでなんとなく流れでな」
「あはは、頑張るねアーヴァイン。でもあたしのこれはついでかぁ」
「そういう訳では・・・」
「じょーだんだよ!へへへ、中身が楽しみだな〜」
「あまり大した物ではない」
「でもヴィンセントがくれた物だし・・・あたしは嬉しいよ」

「えへへっ」と笑うそれは暗くても照れくさそうにしているのが分かる。
これにはヴィンセントも何だか落ち着かない気持ちになる。
それなりに喜んでもらえるだろうと思ってはいたが、まさか「嬉しい」などと言ってくれるとは。

「あーあ、でもヴィンセントに先越されちゃったな〜」
「?」
「はい、これ」

今度はユフィがカバンから小包を取り出してヴィンセントの手に握らせる。
こちらも手触りからしてリボンが結ばれているのが分かる。

「これは・・・?」
「アタシからのプレゼントだよ。ありがたく思え〜?」
「明日は大雪になるかもしれんな」
「おいコラ!そんな失礼な事言うと返してもらうぞ!」
「お前のこれもパーティー用とは別なのか?」
「そーだよ。ま、まぁケイトがエイト用に別にプレゼント買うって言ってたから流れでサ!」

半分嘘。
エイト用のクリスマスプレゼント買うと言ったケイトに倣って自分もヴィンセント用のプレゼントを買ったのだ。
本当は色々計画を練っていたがこの流れはチャンスだと思い、手渡しを決行したのである。

「つまり、私のこのプレゼントもついでという訳か」
「そんなんじゃないって!」
「クク・・・冗談だ」
「あー!さっきのアタシの流れパクってるだろ!!」
「パクってなどいない。お約束というやつを踏まえただけだ」
「屁理屈捏ねんなー!」
「屁理屈などではない」

暗がりの二人の明るいやり取りはセルフィたちが帰ってくるまで続いたという。











END





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