クリスタル横丁

□男たちの休日
1ページ/2ページ

カーテンの隙間から朝日が差し込む休日。
その眩しさにヴィンセントの瞼は動き、そして紅玉の瞳が開かれる。

「・・・朝か・・・」

ゆっくりと起き上がってぼんやりと今日の予定を考える。
とは言っても休みの日なので仕事はないし、特にやる事も行く所もない。
今日は家でゆっくりしていようか。
そんな風に考えているとスマホからラインの通知が知らされた。
手を伸ばしてメッセージを確認すれば、それはアーヴァインからのものだった。

『おはよ〜。サンドイッチ沢山貰ったんだけど一緒にどう?それとももう朝ごはん食べちゃった?』

同じく休日であるアーヴァインから朝食の誘いを受ける。
これから朝食に何か食べようと思っていた所なので丁度良い。
アーヴァインのお言葉に甘える事にした。

『いや、まだだ。良ければ私の家で食べないか?コーヒーを出すぞ。それとも私がお前の家に行くか?』

『オーケー!僕がそっち行くから待っててよ』

交渉成立。
ヴィンセントはベッドから降りると寝間着から部屋着に着替えてアーヴァインを待つ事にした。








それから程なくして沢山のサンドイッチをビニール袋に入れて携えた、ラフな格好のアーヴァインが部屋にやって来た。
早速中に入れて丁度出来上がったコーヒーを出して共に朝食の席に着く。

「ごめんね〜、朝から押し掛けちゃって」
「気にするな。それにしても結構な量のサンドイッチを貰ったようだな」
「行きつけのサンドイッチ屋さんのおばさんがオマケしてくれたんだ〜。
 賞味期限近くて処理に困ってたからいるー?って。それでつい沢山貰っちゃってさ」
「なるほどな」

どちらからともなくサンドイッチに手を伸ばしてテープを剥がす。
ヴィンセントはミックスサンドを、アーヴァインはたまごサンドを手にする。
賞味期限が近いという割にはあからさまにしなびているという訳ではなく、まだ新鮮味が残っている。
確かにこれを処分するのは勿体無い。

「いただきます」
「いただきまーす」

一口齧って無言で咀嚼。
中々に美味しいその味に、これはアーヴァインが行きつけの店にするのも頷ける。

「そーいえば月間ガンマガジン買った?」
「ああ。特集のジュノンの店が気になるな」
「ヴィンセントも?今度キングも誘って行ってみない?」
「いいだろう」
「それでその後は船に乗ってコスタに行って海でナンパとかどう?」
「友人が儚く散る様を見るのは忍びないな」
「え〜?何で僕が絶対にフラれる前提なの〜?」

苦笑交じりに不満を漏らすアーヴァインにヴィンセントは小さく笑い声を漏らす。
この二人の会話はいつも大体こんな感じで静かに進行する。
ちなみに言うとこうして二人で静かに朝食を摂る事も珍しい事ではなく、よくある風景である。
アーヴァインの家がヴィンセントの家の近くにある為、任務で同行する時や休みの日の暇潰しなどにアーヴァインがヴィンセントの家に訪れるのが常だ。
たまにヴィンセントの方からアーヴァインの家に赴く事もあるが大体がアーヴァインの方からヴィンセントの家へ行く事の方が多い。

「こうなったらゲームで勝負だ。僕が勝ったら一緒にコスタでナンパだよ〜?」
「フッ、では私が勝ったら三人で寂しく海を眺めるコースだ」
「望む所だよ〜!」

朝食を手早く片付け、ゲームの準備に取り掛かる二人。
と、そこで不意にアーヴァインのスマホにラインのメッセージが入ってきた。
確認してみれば、それはセルフィからのものだった。

「あ、セフィだ。これから遊びに行ってもいい?だって」
「構わないが」
「んじゃ、誘っとくね〜」

友人の想い人の来訪を断る理由などない。。
それにセルフィの来訪を聞いて上機嫌になるアーヴァインを見れば尚更断る事など出来ない。
さて、どんな風にして二人の距離を近づけさせてやるか。
とは言ってもヴィンセントはユフィやリュックたちほどそういう作戦が思いつく方ではないので、出来る事と言えば極力二人きりにさせてやったり二人一緒に組ませてやれる事くらいなのだが。
しかしそれだけでもアーヴァインが幸せそうにするのだから全力は尽くすつもりだ。
そんな事をつらつら考えながら待っていると、程なくしてユフィとセルフィは家にやってきた。

「まみむめも〜!」
「おっじゃましま〜す!」
「いらっしゃい二人共〜!」
「リュックは一緒じゃないのか?」
「アニキと出かける用事があるから言うて今日はおらんねん」
「だから今日はアタシら二人だけって訳」
「そ〜なんだ〜。ところで二人はもう朝ご飯は食べたの〜?」
「そりゃぁ勿論!」
「今すぐにでも遊べるよ!」
「じゃあゲームしない?今ヴィンセントとしようとしてたところなんだけどさ〜」
「何のゲームしようとしてたの?」
「パーティーゲームだよ〜」
「パーティーゲームと言えば!」
「あれやね!」

「「二人羽織!!」」

アーヴァインは毛布を被ってセルフィの後ろに、ヴィンセントはユフィの後ろについてそれぞれにコントローラーを握る。
なんとも謎な絵面である。

「セフィ・・・これなに?」
「今アタシらの中でブームになってる二人羽織やで!画面見る方がボタンの指示して後ろにいる人が操作するんや!」
「それ・・・楽しいの?」
「めっちゃ楽しいよ!ねぇユフィ?」
「すっごい盛り上がるよね!」
「アービンたちもやれば分かるって!ホラ、始めよ!」

促されてとにかく始める二人。
難易度は高く、指示に素早く反応出来ないもののそれなりの楽しさはあった。
だがしかし毛布を被っているせいもあってやや暑い。
これならタオルケットを被れば良かったと二人は後悔したとか。

「アービン右!そこで○ボタン!」
「ヴィンセント左行って左!・・・って、ヴィンセント?」

カーソルが動かなくてユフィはヴィンセントの異変に気付く。
何気なく毛布をズラせば「すぅ・・・」という静かな寝息が耳に届いた。
どうやらヴィンセントはユフィを後ろから抱きしめたまま寝落ちしたようである。

「あ、ヴィンセント寝ちゃってる」
「ユフィが暖かいから寝落ちしたんじゃない〜?」
「な、何言ってるんだよアーヴァイン!」
「駄目だよユフィ、静かにしなきゃ〜。アタシも眠いし、寝よっかな」
「僕も寝よーっと。はい、セフィ。座布団」
「ありがとね〜。座布団大きいし、二人で使おっか〜」
「うん!」

ちゃっかりセルフィの隣に寝るアーヴァイン。
きっと良い夢を見れる事だろう。
なんなら魂がそのまま昇天してもおかしくないかもしれない。

「アタシも寝よっかな」

寝ている事で体重をかけてくるヴィンセントに寄りかかるようにしてユフィも静かに微睡むのであった。











END





→後書き
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ