クリスタル横丁

□ニャんということでしょう
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そして翌日


「んん・・・ふぁ〜・・・朝ぁ?」

カーテンの隙間から差し込む朝の光に起こされ、ユフィは目を覚ます。
上半身を起こして思いっきり体を伸ばす。
今日も新しい一日の始まりだ。

「ん?あれ?・・・元に戻ってる!」

黒のTシャツから伸びる自分の手足、そして艶々の肌。
これは完璧に人間に戻っている。
それを確認してもらおうとユフィは隣に眠るヴィンセントを揺り起こした。

「ヴィンセントヴィンセント!」
「ん・・・何だ」
「見てみて!アタシ元に戻ったよ!」
「・・・・・・そのようだな」

数秒寝ぼけ眼でユフィを眺めた後、状況を把握したヴィンセントは同じように起き上がってユフィをしっかりと確かめた。
長い手足、人間の肌、可愛らしくも少し生意気な顔。
まさしくユフィそのものだ。
もう昨日までの小さな黒猫ではない。
が、とある違和感に気付いてヴィンセントはクスリと笑った。

「クク・・・」
「?何笑ってんのさ?」
「服が前後反対だ」
「ん?・・・あ!なんか首元変だな〜って思ったら正体はこれか!直すから後ろ向いてて!」
「ああ」

小さく笑いながらヴィンセントは後ろを向く。
もぞもぞと衣擦れの音が聞こえた後、「いいよー」という許しが出て振り返る。
キチンと着直された服はよりいっそうダボダボ感を醸し出し、ユフィの体には大きすぎる事を暗に物語る。
そんな大きな黒のTシャツの裾から覗く白い太腿が艶かしく眩しい。

「おはよ、ヴィンセント!」
「ああ、おはよう、ユフィ」

ネコも良かったけどやっぱり人間の方がいい。
こうしてヴィンセントと挨拶が交わせるのだ、これ程嬉しい事はない。

「さってと、朝ご飯にしよっか。ご馳走してくれるよね?」
「ダメだと言ってもご馳走になるつもりだろう?」
「エヘッ、まーねー」
「・・・その前にセルフィたちを呼んでからだ」
「へ?何でセルフィたち?」
「お前はそこでもう少し横になってていい」

いきなりバサッとシーツを被せられ、視界を白で覆われる。
慌ててそれを脱ぎ去るが、ヴィンセントは既にベッドから下りていて、部屋から出ていくところだった。

「おいヴィンセント!」

ユフィの制止の声など聞かずにヴィンセントはさっさと部屋から出て行ってしまう。
一体何だというのだ。
いきなりシーツを被せてきてまだそこで横になっていろだなんて。
それにセルフィたちを呼んでどうするつもりだ?
一緒にモーニングに行く約束でもしていたのだろうか?
もしそうなのだとしたらセルフィに服を持ってきてもらうように言ってもらわねば。
でなければこんな格好では自分もモーニングには・・・

「・・・ん?」

落ち着いて自分の格好を見下ろす。
今の自分が身につけているのはヴィンセントが貸してくれた黒のTシャツ一枚のみ。
それ以外はホットパンツも下着も何も着ていない。
着て・・・・・・いない。

「〜〜〜〜〜!!!」

状況を把握したユフィは一瞬で顔を茹で上がらせ、バッとシーツを被ってベッドに伏せた。

(見られてないよね見られてないよね見られてないよね!!!??)

Tシャツとは言え薄っぺらい生地ではないし、黒だから透けてはない筈。
でも万が一見られていたら・・・。

(でもヴィンセント・・・もしかして照れてた?)

シーツを被せたのも、セルフィたちを呼んでくると言ったのも、ベッドで横になっていろと言っていたのもそういう事なら・・・。
本当はそうじゃなくて軽蔑されていたり、見たくないものを見せられて苛立ってら凹むがそんな様子ではなかったように思う。
出来れば照れていてくれたら嬉しい。

(一歩進展・・・かな?いやでもヴィンセントは紳士だし・・・ま、どっちでもいっか)

ユフィは嬉しそうに微笑むとぎゅっとシーツを掴んでヴィンセントの香りに包まれながらベッドに身を沈めるのだった。











オマケ


セルフィ「まみむめも!ユフィ、服持ってきたで〜!」
ユフィ「サンキュー!でも後で三人共ほっぺつねる刑だから!」
リュック「まーまー、ちょっとした事故って事で」
ユフィ「あれのどこが事故だよ!?」
ケイト「それよりさぁ、なんか起きなかったの?」
ユフィ「なんかって何だよ?」
セルフィ「大人の階段上ったり〜」
リュック「火傷したり〜」
ケイト「過ち犯したり〜」
ユフィ「すすすすすするかそんなこと!!!」
セルフィ「ありゃりゃ、それは残念やね〜」
ユフィ「残念とか言うな!てかリュック、その眼鏡何?」
リュック「ん〜?ちょっとした実験品だよ」
ユフィ「ふ〜ん、面白そうだから後でアタシにも貸してよ」
リュック「調子が良かったらね〜」

ケイト「(どう?赤い糸は?)」
リュック「(大丈夫、なんとか修復してるみたい)」
セルフィ「(良かった〜。ちなみに糸の細さはどうなん?)」
リュック「(限りなく透明に近い淡い糸。つまり前と変わんないかな)」
ケイト「(え〜?一晩一緒に過ごしたのにそれ〜?)」
セルフィ「(まぁそこは見守っていこうやないの。戻っただけでも良かったんやから)」
リュック「(そーそー)」
ケイト「(また赤い糸が切れなきゃいいけどね)」











END






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