クリスタル横丁
□大晦日スペクタクル
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その頃、エスタのレウァール邸ではラグナ・レイン・エルオーネが半纏を着てコタツに入ってまったりとテレビを見ていた。
そこに・・・
Prrrrrrrrrr
「あ、オーナーからだ」
ピッ、と着信に出るとエルオーネはコタツから出てテーブルの方に移動し、椅子に座って通話を始めた。
「もしもし?オーナー?どうしたんですか?」
『なんとなくかけてみた。意味はない』
「あ、判った、私に会えなくて寂しくなったんじゃないですか?」
『絶対に有り得ないと断言しよう。寂しさを紛らわすならベヒーモスで間に合っている』
「ベヒーモス・・・オーナーなら余裕で手懐けられそう」
『実際手懐けた事はあるがな』
「本当ですか!?」
『今はどこにいるか知らんがな』
「え〜?手懐けてたならモフモフしてみたかったのになぁ」
『今度モルボルを手懐けてやるからそれで我慢しろ』
「嫌ですよ!!もっとクァールとかそういう可愛らしい動物系のモンスターとかにして下さいよ!」
『お前には過ぎたるものだ。それよりどんな惨めな正月を過ごしている?コタツに入ってみかんでも食べているのか?』
「ブブー、みかんじゃなくてハーゲテマッスですー。冬限定のプレミアムイチゴ味ですー」
『アイスか、みかんと大差ないな』
「コタツにみかんも最高ですけどアイスもオツなものですよ?そういうオーナーは今何してるんですか?」
『ワインとチョコレートを食べながらアンジールとジェネシスを待っている』
「あ、今年はその2人も一緒なんですね。待ってるってどうしたんですか?」
『単純に到着を待っているだけだ。渋滞に巻き込まれたらしくてな』
「あー、それは大変ですね」
『待っている間暇だからお前の時間を潰しに電話をかけたという事だ』
「私の貴重な時間を潰さないで下さいよ」
『お前如きの時間など大した事はない』
「そんな意地悪な事言うとお土産買ってあげませんよ?」
『別にいらん』
「ええっ!?そこはいるって言って慌てて下さいよ!」
『いらん』
「そんな事言わないで下さいよ!凄いお土産を買って帰る予定なんですから!」
『そうか、いらん』
「・・・」
『・・・』
「・・・」(←ちょっと泣きそう)
『・・・』
「・・・」(←そろそろ泣きそう)
『・・・はぁ、何を買った?』
「まだ買ってなくて、元旦に買いに行くんですけど、エスタ製の道具福袋を買う予定なんです」
『家電製品の福袋か?』
「エスタの家電製品ですよ?タダの家電製品な訳ないじゃないですか」
『ほう、それは面白そうだな』
「でしょでしょ!実は顔馴染みのお店があって、そこの店主が私用に1つ取っておいてあげるって言ってくれたんです」
『独り身で憐れなお前の為に用意してくれたのだろうな。感謝するんだな』
「今は独り身でもいつか素敵な人と素敵な年越しをしますよーだ」
『言うだけならタダだな。ちなみにお前の素敵な年越しとやらは何だ?』
「そーですねー、ベタにゴールドソーサーの観覧車やホテルで新年の花火を一緒に眺めるのもいいし、
年越し飛空艇ツアーに申し込んで大空から初日の出を眺めるのもいいし、
家で2人でゆっくりまったり年越し蕎麦を食べながら新年を迎えるのもいいですね〜」
『『人』という漢字と『夢』という漢字を合わせると何になると思う?』
「儚い理想で終わらせやしませんよ。ぜ〜〜ったいにどれか1つは叶えてオーナーの鼻を明かしてやるんだから!」
『その時が訪れるのを楽しみに待っているとしよう。
その前にお前の婿になりたいという殊勝な奴が現れる奇跡を待つのが先だがな』
「逆に聞きますけどオーナーは何で私に相手が見つからないと思うんですか?」
『まずお前に惚れる要素が微塵もない。絶望的にな』
「そこまでボロクソに言わなくてもいいじゃないですか・・・でも料理出来ますよ?」
『辛いハンバーグを作った奴のどの口が言う』
「うっ・・・あれはハンバーグにかけるソースとケチャップの比率を間違っちゃって・・・」
『間違うようでは嫁の貰い手は望めないな』
「おちゃめなポイントって事で!」
『本当にそれが通用すると思っているのか?』
「そんな事言わないで下さいよ。自信なくなるじゃないですか・・・。
それよりオーナーは理想の女性とかいないんですか?ていうか理想ってあるんですか?」
『考えた事はないな』
「じゃあ、今思いつく事とかありますか?綺麗な人がいいとか可愛い人がいいとか料理が出来る人がいいとか」
『アンジールレベルの料理が出来るやつがいいな』
「アンジールさんは別格じゃないですか!おふくろの味ポジションは別次元ですよ!!」
『では調教し甲斐のある奴』
「ホントにドSですね・・・ていうかそれ、好みの女性になるんですか?」
『少なくとも従順な奴よりは楽しめる』
「オーナーもほとほと結婚は望めませんね」
『そもそも望んですらいないから何も悲しむ事はないな』
「むぅ・・・いっつもオーナーに勝てない」
『お前如きが私に勝とうなどと大それた事を思うな。あと5回は転生してから挑むんだな』
「5回転生しても勝てなさそうな気がするのは何故でしょうね?」
『弱者としての自覚をしつつあるという事だ』
「付き合いが長いって言って下さいよ」
『ん?来たか。切るぞ』
「はーい。よいお年を、オーナー」
『フン』
ピッ
「さ〜てと、コタツに入ってみかんでも・・・って、あれ?おじさんどうしたの?何で魂抜けてるの?」
「エルオーネ、アナタ、セフィロスオーナーと仲が良いのね」
「う〜ん、そうかなぁ?オーナーいっつも意地悪ばっかりだし。あ、優しい時も勿論あるけど」
「えっ!?優しい時があるの!?」
「うん」
「例えばどんな?」
「え〜っと」
「あ、ごめんなさいエルオーネ。また今度にして。ラグナの魂がいよいよ昇天しちゃうから」
「大変!おじさんの魂戻ってきて〜!」
「・・・」
返事がない、ただの屍のようだ。