クリスタル横丁

□ダブルプレゼント
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そうしてクリスマスの日。

白い雪がチラチラと舞い散る聖夜。
所謂ホワイトクリスマスなクリスマスイブの夜。
セフィロスの住むマンションのセフィロスの部屋ではクリスマスとセフィロスの誕生日パーティーが盛大に行われていた。
と言っても祝ってくれているのはアンジールとジェネシスの2人だけだが、セフィロスにとって親友の2人が祝ってくれるだけで大満足だった。
ちなみにセフィロスの誕生日がクリスマス、というのはアンジールとジェネシスが決めたものだ。
セフィロスの誕生日は本人ですらも判らない為、ならばと2人がセフィロスの誕生日をクリスマスに決めたのだ。
ここだけの話だが、2人がセフィロスの誕生日を決めてくれた時、セフィロスはとても喜んだとか。

さて、宴も酣となった頃、アンジールは時計をチラリと見やると何気なくセフィロスに言った。

「セフィロス、悪いがコーンフレークを買ってきてくれないか?」
「コーンフレーク?」
「そうだ。食後のデザートにパフェを作ると言っていただろう?実はついさっき買い忘れていた事に気づいてな」
「お前が食材を買い忘れるなんて珍しいな」
「俺だって忘れる時くらいあるさ。悪いが行って来てくれないか?」
「ああ、いいだろう」
「なら俺も行こう。バノーラホワイトリキュールが切れた」
「それもついでに買ってきて貰え。とにかくセフィロス、頼んだぞ」
「ああ・・・?」

同行しようとするジェネシスを制し、アンジールはセフィロスを一人で買い出しに行かせた。
セフィロスはどこか腑に落ちない顔をしていたが、アンジールお手製のパフェを食べる為にコートを着て出かけた。
作戦成功、といった顔で満足そうな表情を浮かべるアンジールにジェネシスは鋭く気付いてニヤリと笑う。

「アンジール、何か企んでいるな?」
「やはり気付いたか」
「お前は隠し事が下手だからな」
「仕方ない。実はな―――」

アンジールはエルオーネとの企み事についてジェネシスに語った。











チラチラと舞い落ちる雪が真っ暗闇の夜によく映え、どこか眩しくも感じられる外。
雪は薄くではあるが積もり始めており、歩く度に微かに、サクサク、という音が耳に届く。
吐き出す息は白く、現在の気温がどれだけ低いかを物語っていた。
早く帰ってコタツに潜って温まろう。
そしてアンジールお手製のパフェを食べるのだ。
セフィロスには珍しくそんな事をぼんやりと考えていた時―――

「オーナー!」

耳に痛すぎるほどの静寂の中、よく聞く声が暗闇の中に響く。
まさかと思って振り返ってみると、しっかりと防寒対策をしたエルオーネが何やら細長い箱と白の布袋を持って街頭の下に立っていた。

「・・・そこで何をしている」
「オーナーを待っていたんですよ」

エルオーネのセリフに一瞬呆気に取られたセフィロスだが、聡明な彼はすぐに合点がいったという顔をして勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「アンジールと結託したな」
「何で判ったんですか!?」
「やはりか。アンジールの様子が少しおかしいと思っていたらそういう事か」
「うぅ・・・アンジールさん、上手くやるって言ってたのに・・・」
「それで?何を企んでいる?」
「別に悪戯なんか考えてませんよ。それよりもっと健全なものです」

えっへん、と言わんばかりに言い放つとエルオーネは持っていた細長い箱をセフィロスオーナーの前に差し出した。
しかしセフィロスオーナーはそれをすぐには受け取らず、首を傾げて何なのか尋ねる。

「何だ」
「何って、クリスマスプレゼントのワインですよ」

一瞬、セフィロスは固まった。
そして沈黙した。
割と長く沈黙した。
それこそたっぷり数十分は・・・

「沈黙しないで下さい!そんなに私がクリスマスプレゼントを渡すのが意外ですか!?」
「天地がひっくり返るかと思うくらいにはな」
「失礼な!そんな事言うとあげませんよ」
「誰もいらないとは言っていない」

セフィロスオーナーは不敵に笑うとワインを受け取った。
ズシリと重く、軽く強めに箱を推してみるとすぐに何か丈夫な物に指が当たった。
きっと桐の箱に入っているのだろう。
どんなワインが顔を出すか帰ってから楽しみだ。

「アンジールさんとジェネシスさんと仲良く飲んで下さいね。それから―――」

エルオーネは白の布袋に手を差し入れると、紺色の布の塊のような物を取り出した。
いや、布ではない、毛糸だ。
それも、手編みのもの。
何だろうと思って眺めていると・・・


ふわり


首に巻かれた。
ちゃんと銀色の髪の内側を通ってしっかりと、けれども苦しくないように慎重に。

「お誕生日おめでとうございます、オーナー」

雪が舞い散る中、エルオーネはとても柔らかく微笑んだ。
それはセフィロスオーナーの誕生を心から祝福しているものに相違無かった。
これに関してセフィロスオーナーは今度こそ素直に呆気に取られる。
冗談抜きでここまでは予想していなかった。
そして、すぐに気付いた。

「・・・早くに帰っていたのはこれを作る為だったのか?」
「そーですよ。今日という日に間に合わせる為に頑張ったんですから!
 それから、途中からオーナーに貰ったココア作業の強い味方になって捗ったんです。ココア、ありがとうございますね」

また、エルオーネはニコリと笑う。
目を瞬かせながら静かに聞いていたセフィロスオーナーだったが、やがてフッと笑うといつもの意地悪な表情を浮かべて言った。

「足りんな」
「え?」
「これでは足りんな」
「えっ」
「これではクリスマスプレゼントの半分がやっとだな」
「どんだけハードル高いんですか!?」
「ちなみにワインがクリスマスプレゼントの100%の中の50%中49%を占めている」
「私の手編みマフラーの占有率1%ですか!?」
「残りを満たす為に今度ゴールドソーサーVIPエリアについて来い」
「え〜・・・え?今なんて言いました?」
「今度ゴールドソーサーのVIPエリアに行く用事がある。それについて来いと言っている。無理強いはしないがな」
「行きます行きます!むしろ無理強いして下さい!」
「その代わり、雑用はきっちりこなしてもらうからな」
「勿論ですよ!雑用でも何でもやりますよ!」

憧れのVIPエリアに行く機会が出来てエルオーネは小躍りしそうな勢いだった。
しかもまさかセフィロスオーナーが連れてってくれるとはとんだサプライズである。

「絶対に連れてって下さいね!」
「覚えていたらな」
「絶対に覚えてて下さいよ!」
「頑張って忘れるようにしよう」
「何でですか!?」
「それより寒くなってきたからそろそろ帰るぞ。ついでに送ってやろう」
「フフ、ありがとうございます」

寒い冬空の下、舞い散る雪の中を2人は並んで歩いて行くのであった。











オマケ



ラグナ「はうぁっ!!?」
レイン「どうしたの?」
ラグナ「今・・・武装してエルの所に行かなきゃいけない気がしたんだ・・・」
レイン「スコールに電話してみてエルオーネが無事か確認してみたら?」
ラグナ「そうしてみる」


ピポパポピパ♪

Prrrrrrrrrr


スコール『もしもし』

ラグナ「なぁスコール、エルは無事か?」

スコール『姉さんなら今普通にみんなとパーティーの後片付けをしてるぞ』

ラグナ「そうか、ならいいんだが・・・」

スコール『俺も片付けをしなければならないから切るぞ』

ラグナ「おう、じゃぁな」


ピッ


レイン「なんだって?」
ラグナ「エルは普通にみんなと後片付けしてるってよ」
レイン「ならいいじゃない」
ラグナ「それでもなんだ・・・この胸騒ぎは!!」
レイン「はいはい」








END





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