クリスタル横丁

□モヤモヤシンドローム
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実はエースに緊急コールされる前からあの現場にいた。
そこで、見てしまった。
ヴァイスとユフィが抱き合っている所を・・・。
正確に言えばヴァイスが一方的にユフィに抱きついていたのだが、どちらにしてもあの光景が中々頭から離れない。
それに何だかモヤモヤする。
これは一体どうした事か。

「で?それが何なのかを確かめたくて僕の所に来たの?」
「・・・あぁ」

モヤモヤを解消すべく、ヴィンセントは親友のアーヴァインを喫茶店に誘って相談に乗ってもらっていた。
ヴィンセントの手元には熱いブラックコーヒーが、アーヴァインの手元には冷たいアイスコーヒーが置かれている。

「そっかそっか、親友の頼みなら仕方ないね。じゃあまず最初にヴィンセントは二人が抱き合ってるのを見てどう思った?」
「・・・モヤモヤとした。釈然としなかった」
「怒った?悲しかった?」
「両方、だな」
「ユフィに対して?ヴァイスに対して?」
「・・・怒りの方はヴァイスで悲しみの方はユフィ、だな」
「もしもユフィの態度が満更でもなかったら?悲しい?憎い?」
「・・・悲しい、かもしれない」
「これが相手がヴァイスじゃなくて他の、例えばエースとか僕だったら同じ気持ちになる?」
「・・・恐らく」
「どうしてそんな気持ちになるのかな?
 ヴァイスはともかく、僕もエースもまともな方で、もしかしたらユフィを幸せに出来るかもしれない。
 それにヴィンセントにとってユフィはただの仲間なんじゃないの?」
「・・・確かにそうだが・・・・・・」

そう呟いてヴィンセントは少し考え込むようにして俯き、黙り込む。
対するアーヴァインは我ながらまるでカウンセラーのようだと思いながらアイスコーヒーを一口飲んだ。

ヴィンセントの恋愛遍歴は知っているし、その過程で心に負った傷も知っている。
今でこそ吹っ切れたらしいが、それでも過去の経験からヴィンセントは恋愛に対してどこか臆病で慎重になっている。
その証拠がこの現状だ。
ヴィンセントは無意識にユフィへの恋心に気付かないようにしようとしている。
過去のトラウマからくる心の防衛本能かもしれない。
そして、今ヴィンセントがユフィに対して抱いている気持ちは間違いなく『恋』だろう。
まだ淡い気持ちかもしれないが恐らく『恋』に違いない。
けれど、いきなりそれを突きつけたらきっとヴィンセントは戸惑うだろう。
加えてすぐにその気持ちを消し去ろうとするに違いない。
折角訪れた新たな春を最初から諦めてただ過ぎ去るのを見ているだけ、なんていうのは親友としても見過ごせない。
ここは慎重にヴィンセントに恋を自覚させつつ、それを柔軟に受け入れられるようにフォローしなければ。

「・・・ユフィは・・・大切な仲間だ。だが、それだけではない感情が私の中にある」
「ふ〜ん、特別な感情か〜」
「特別な・・・感情・・・」
「結論は急がずにゆっくり考えてみなよ〜。あ、でも考え過ぎるのは禁止ね〜。ヴィンセントってばすぐ考え過ぎるんだからさ」
「フッ、気をつけるとしよう」

苦笑して見せるヴィンセントにアーヴァインもつられて笑い、ヴィンセントを見守った。
本当に考え過ぎて変な方向にいかなければいいが・・・。











さて、そんな会話があった事をアーヴァインはセルフィたちに報告していた。

「へ〜、そないな事があったんやね〜」
「でさ、僕達で何とかしてあげられないかなって思うんだけどどう?」
「勿論やるに決まっとるやろ!」
「そーそー!大切な仲間の恋は成就させなきゃね〜」
「それに丁度良い話があるんやで!」
「え?何々〜?」
「エースとデュースが最近出来たお化け屋敷のペアチケットをなんやかんやあって2枚手に入れたんや。
 それで、兄妹以外のペアで行ってWデートしたい言うてたんや」
「なるほど〜!そこにヴィンセントとユフィを行かせるんだね〜!」
「そういう事やで〜!」
「すっごい都合が良すぎとかそんなんじゃないよ!」
「リュック、それは言わん約束やって!」

笑い合うセルフィとリュックだが、アーヴァインは敢えてそこには触れない事にした。
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