クリスタル横丁

□七夕石
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今、セブンとキングはとある賭けをしていた。
それは七夕祭りのメインストリートのスタートからゴールまでの間にセブンのお願いを全て叶える事が出来たら七夕石を交換する、というものだ。
余裕の表情で賭けに乗ったキングだが、果たしてセブンのお願いを全て叶えられるのか。
隣を歩く仏頂面にどんなお題を振ってやろうかとセブンが屋台に見回していると、見知った顔が焼きそば屋台を開いているのが目に入り、そこにキングを誘った。

「キング、焼きそばを食べないか?」
「いいぞ」

頷いてキングはセブンと共に屋台に近づく。
すると、額に白い捩り鉢巻きを巻いたザックスとエアリスが2人を迎えた。
ザックスの首にはピンク色の七夕石のペンダントがぶら下がっており、エアリスの首には黄色の七夕石のペンダントがぶら下がっている。

「よーっす!いらっしゃませー!」
「いらっしゃい。デート?」
「そんな所だ」
「2人はデートしなくていいのか?」
「掻き入れ時だからな。それにエアリスとこうして2人で焼きそばを作るのも楽しいしな!」
「ザックス、お茶飲む?」
「サンキュー、エアリス!」

ストローが刺さったペットボトルをエアリスが差し出し、ザックスがそれを飲む。
うん、幸せそうだ。
そんな2人を他所にセブンはとあるメニューを指差して注文をした。

「この『何が起こるか分からない食用ダークマター入り焼きそば』を1つくれないか?」
「まいど!!」
「という訳でキング、この焼きそばを食べてみてくれ」
「それが最初のお題か?」
「そうだ」
「フッ、いいだろう。残らず平らげてやるさ」
「ちなみにこれ、本当に何が起こるか、分からないから」
「・・・2人は試食した事は?」
「俺は食べたら三秒だけ防御力が限界突破した」
「私は食べたら2Pカラーになった、かな」
「・・・本当に大丈夫か?これ」
「死ぬこたぁないって仕入先のおっちゃんも言ってたから大丈夫だ!安心しろ!!」
「不安しかないだろ、こんなダークマター」
「死ぬ・・・ダークマター・・・うっ!頭が!!」
「落ち着けキング!ここはファイナルファンタジーだ!そしてお前はキングだ!決して糖分王の銀髪侍じゃない!!」

何かに目覚めかけたキングをセブンが懸命に宥める。
これ以上はツッコんではいけない。

「はいはい、そうこうしてる内に、出来たよ」
「すまない、ありがとう。さぁキング、これを食べて気分を落ち着けるんだ」
「作った俺が言うのもなんだけどよ、それを食べて落ち着くってのもどうなんだ」
「くっ!キンさんに不可能はない!!」

やっぱり半分目覚めかけてるキングだが、勇ましき箸使いで焼きそばを掴んで口に運んだ。
ズルズル!と野菜・肉・ダークマターを勢い良く食べ尽くしていくキング。
ソースと野菜とダークマターが奏でる焼きそばは美味しく、手が止まらない。
ダークマターは置いておくにしても、普通の焼きそばとしてはレベルの高い味に一人満足する。
満足して、掌が疼き始めた。

「ぐぅっ!!」
「キング、どうした!?」
「て、掌が・・・疼く・・・!!」
「掌が!?」
「ぐ・・・ぉおおおおおおおおおおおおお!!!」

掌の疼きの所為か絶叫するキング。
一体何が起きるというのか。
セブンは注意深くキングの掌を見つめる。
キングの掌は何やら蠢いており、何かの文字が浮かび上がりそうになっていた。
ズズズ・・・という不気味な音と共にそれはどんどんハッキリとしてきたものになり、最終的には―――『りんご飴』という文字になった。

「・・・りんご飴?」
「今俺が食べたい物だな」
「りんご飴食べたいのか?」
「祭りと言えばりんご飴だろう?」
「確かにそうだが・・・まぁいいか。私の分も買ってくれないか?」
「いいだろう。だが、この掌では誰かに見られた時に格好がつかないからお前には手伝ってもらう」

キングはするりとセブンと手を絡める事によって掌を隠す。
突然の事に一瞬驚いて目を丸くしたセブンだったが、クスリと笑ってキングの手を握り返して言った。

「これなら安心だな」
「ああ」
「それじゃあ二人共、私たちはもう行く。迷惑をかけてすまなかった」

「気にすんな!祭り楽しんでこいよ〜!」
「いってらっしゃ〜い!」

仲良く手を握って人混みの中へと消えていく二人をザックスとエアリスは静かに見守る。

「いや〜、祭りを満喫してるようで何よりだな」
「確か、オリエンスではお祭りとか、なかったんだよね?」
「ついちょっと前までオリエンスは紛争地域だったからな。それどころじゃなかったんだろ」
「そっか。ここでお祭りとかそういうの、いっぱい楽しめるといいね」
「だな。俺たちで出来る事があったらどんどん楽しい所に引っ張ってってやろうぜ!」
「うん!」
「その為にも頑張ってがんがん焼きそば作るぞ〜!」
「うん!いらっしゃいませー!焼きそばはいかがですか〜!」

焼きそば販売に二人は励むのであった。
ちなみに、キングがダークマター焼きそばを食べて暴走しかけたのがきっかけで何人かの客がダークマター焼きそばに興味を示して注文してきたのはここだけの話である。











END





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