クリスタル横丁

□あんみつ
2ページ/3ページ

セフィロスオーナーもシンクと同じように十回中十回もホームランを打った。
しかし唯一違う所と言えば、ホームランの的のど真ん中にずっと当て続けたという所だろうか。
シンクはホームランであったものの、真ん中より少しズレている事が多々あったがセフィロスオーナーは最初から最後まで真ん中に当てていたのだ。
これにはシンクも驚かざるを得ない。

「すご〜い、全部ど真ん中に当てた〜」
「このくらい出来て当然だ。アンジールやジェネシスだって余裕で出来る」
「オーナーたち三人が異常に上手すぎるだけですよ」
「それよりどうする?負けを認めるか?」
「このまま負けを認めるのは悔しいからまだやるよ〜」

そんな訳でシンクはもう一度マウンドに立った。
その隣のマウンドにセフィロスオーナーも立って構える。

「実力の差というものを見せてやろう」
「その言葉、そのままバットで打ち返してあげる〜」

「二人共楽しそうで良かったわ」

穏やかに微笑んでエルオーネはいつの間にやら買っておいたアイスキャンディーを食べながら二人のバッティングを眺めた。

















あれから数時間。
日が暮れ始めた頃に二人は漸く飽きたようで、バッテイングルームから出てきた。
出てきた二人にエルオーネがイチゴ牛乳を飲みながら声をかける。

「もういいの?」
「うん、お腹減っちゃった〜」
「それを少し寄越せ」
「いいですよ。シンクも次に飲む?」
「ううん、私はいいや。オーナーのファンに殺されるかもだし、ここは空気を読まないとね〜」
「空気ってなんの空気?」
「なんでもな〜い」
「美味かった」

セフィロスオーナーの言葉と共にイチゴ牛乳のパックがグシャリと握り潰される。

「ああっ!?私のイチゴ牛乳!!」
「お前に絶望を贈ってやろうと思ってな」
「なにしょーもない絶望贈ってくれてるんですか!?」
「焼き鳥一本奢ってやるからそれで我慢しろ」
「焼き鳥?もしかしてあのお店にこれから行くんですか?」
「ついて行きたければ好きにしろ」
「やった!シンク、一緒に焼き鳥食べに行く?」
「焼き鳥?」
「そう、焼き鳥の美味しいお店があるの。シンクも一緒に行く?」
「行く!焼き鳥焼き鳥〜!」

昼間に考えていたあんみつはどこへやら、シンクの頭の中はすっかり焼き鳥一色に染まった。
そうしてエルオーネの案内でやって来た焼き鳥屋は中に入ると時間的にまだ開店したばかりなのか、客の数は少なかった。
カウンター席なんかも余裕で空いており、そこへセフィロスオーナーが迷いのない足取りで歩いて行って座った。
続いてその隣にエルオーネが座り、次いでシンクが座る。
店員の女の子が運んで来たおしぼりで手を拭いていると不意に店主のおっさんが話しかけて来た。

「いらっしゃいエルオーネちゃん、そっちの子は見ない顔だけど友達かい?」
「そうだよ。シンクって言うの」
「友達と思ってるのはコイツだけだがな」
「そんな事ないですよ!!・・・ないよね?」
「う〜んとねぇ・・・」
「え・・・」
「あはは、冗談だよ〜」
「冗談じゃなかったりしてな」
「二人してからかわないでよ!」

怒るエルオーネだが、セフィロスオーナーとシンクをただ笑わせるだけでしかなかった。
そんな三人のやり取りを微笑ましく眺めながら店主のおっさんがメニューについて尋ねてくる。

「ところでエルオーネちゃん、今日もいつものコースでいいかい?」
「うん、いつものでお願い」
「あいよ!」
「ここにはいつも来るの?」
「うん。オーナーと二人でよく来るよ。他にも串カツ屋さんとかラーメン屋さんとかいろんなお店に二人で食べに行ってるの」
「ふ〜ん、仲が良いね〜」
「今度シンクも一緒に行ってみる?」
「うん、機会が合えば行きたいなぁ」

シンクの『仲が良い』という言葉に込められた意味に気付かぬままエルオーネはシンクの為にあれこれとオススメの店を考え始める。
二人の外食に自分が割り込んで良いものだろうかと考えたがエルオーネは気にしてなさそうだし、セフィロスオーナーに至っては反応すらしていない。
いや、アレは無関心でいるのだろう。
どちらにせよ、一緒にいても良いという事なのでシンクはその言葉に甘える事にした。

「ねぇ、エルオーネ」
「ん?なぁに?」
「エルオーネっていつも教会にいるんだよね?」
「そうだよ」
「じゃあ、今度遊びに行ってもいい?」
「勿論!いつでも来ていいよ」
「コイツは常に暇人だからな」
「暇人とは失礼な!ちゃんと教会のお掃除とかしてますよ!」
「それだけだろう」
「ほ、他にも・・・色々、やってますから・・・」
「ほう?ならば今度抜き打ちで観察させてもらうとしよう」
「えっ」

セフィロスオーナーによるエルオーネの弄りを眺めながら、シンクはこの横丁における一つの居場所を見つけた気がするのであった。














オマケ


シンク「ただいま〜」
クイーン「お帰りなさい、シンク。貴女が外食だなんて珍しいわね」
ナイン「一人で食ってきたのか?」
シンク「うーうん、エルオーネとセフィロスオーナーの三人で食べてきた」

11人「ふぁっ!?」

デュース「だ、大丈夫だったんですか!!?」
シンク「うん、全然平気だった。エルオーネが一緒だったしねぇ」
サイス「たとえエルオーネが一緒でもクラウドたちとか容赦無くフルボッコにされてんだろ」
エース「あれは最早タチの悪い嫌がらせだ。良くも悪くもシンクに興味がなかったんだろう」
セブン「でもなんでまたその二人と外食なんかしたんだ?」
シンク「うーんとね、最初はデザートが食べたくてエルオーネに声かけたの。
    そしたら、あるお店にセフィロスオーナーを連れて行くとサービスしてくれるからって事で都合良くその辺歩いてたセフィロスオーナーをエルオーネが引っ張ってきたの。
    でもセフィロスオーナーがバッテイングセンターで勝負しないとついて行ってやらないって言うからエルオーネの代わりに勝負してたんだけど、気付いたら夕飯時になっちゃっててね〜。
    それで一緒にご飯食べる事になったんだ〜」
エイト「色々あったんだな」
ケイト「ていうかセフィロスオーナーとバッテイング勝負して来たアンタが凄過ぎるよ」
キング「デザートの店には結局行かなかったのか?」
シンク「うん」
キング「そうか・・・」
サイス「残念そうにするなよ」
シンク「今度エルオーネに聞いておくね」
キング「頼んだ」
ジャック「それよりさぁシンク、その袋に持ってる物はなーに?」
シンク「ふっふ〜ん、みんなに焼き鳥のお土産だよ〜」
ケイト「マジで!?」
シンク「一人一本だから」
ナイン「いただきますだぜゴラァ!」
シンク「ところでマザーは?」
トレイ「マザーは今日も遅くまでお仕事です」
シンク「そっかぁ・・・」
トレイ「マザーの分はラップして冷蔵庫に入れて、マザーが帰ってきたら電子レンジで温めてお出ししたらどうですか?」
シンク「うん、そうする〜」




キング「オチなどなく終わる」
ジャック「それがもうオチだよね」








END





→後書き
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ