クリスタル横丁

□その頃船では
1ページ/4ページ

WPO主催の船上パーティーではWPO社員は勿論、要人たちも集まって賑わっていた。
そんな中、セルフィとリュックは可愛らしいドレスを身に纏ってケーキを食べていた。
セルフィは鮮やかな黄色のドレスに蝶のブローチを、リュックは明るいオレンジのドレスに控えめなネックレスを付けており、そして二人共ユフィとは色違いの蝶のイヤリングを着けていてとても華やかだった。
それは色んな男性が思わず振り返るほど。
そして、とある男の目線を釘付けにするほど―――。

「あ〜・・・セフィが可愛すぎて生きるのが素晴らしい・・・」

柱の影からセルフィに熱視線を送るアーヴァインの本日のコーディネートはベージュのジャケットスーツでオシャレに決めている。

「声かけないの?」

そんな彼の傍に立つのはパーティーコーディネートバージョンの衣装を身に纏ったビビ。
今日の帽子はシルクハット。

「いやいや、あの妖精のように可愛いセフィをもっと遠くから眺めて―――」

「今日のセルフィさんとリュックさん、いつにも増して可愛いよなぁ」
「なぁ。俺、前々から仲良くなりたいって思ってたんだよなぁ。パーティーのノリで声かけてみねぇ?」

「と、思ったけど眺めてる時間が勿体無いから声かけよっか〜」
「そうだね」

色々慣れっこにとなってるビビはツッコミはせずに軽く流す事でその場を対処した。





一方、同じくパーティーに参加していたエースはデュースの姿が見当たらない事に気付いて彼女を探していた。
つい先程までみんなと一緒にいたのに、いつの間にかいなくなっていたのだ。
どこにいるのだろうと周りを見回しなが探していると、シャンパンっぽい物を飲んでいるキングと目が合った。

「キング、デュースを知らないか?」
「デュースならデッキに出るのを見たぞ」
「そうか、ありがとう」

「おいキング!テメー未成年のくせに酒なんか飲んでんじゃねぇ!!」

「サイファー、これはりんごジュースだ」

ある意味定番とも言えるやり取りを、しかしエースは気にせずにデッキへと向かった。
キングは年齢に反して老けてるもとい大人っぽいから勘違いされるのも仕方ない。
さて、デッキに出たエースは再びデュースの姿を探し始めた。
なんとなしに夜空を見上げてみれば満点の星空がエースの瞳いっぱいに映る。

「星が綺麗だな」
「本当にね。あの時も夜空がこんな風に綺麗だったよね」
「ああ。だが、あの時の方がもっと綺麗で―――特別だった」
「今は特別じゃない?」
「今もまた違った意味で特別だ。ティファと・・・一緒だからな」

二階のデッキで愛を語らうクラウドとティファの会話が丸聞こえだが水を差すまいと無言を貫く。
いつか自分もデュースとあんな風に語らえたらと思いながらデュースを探す。
すると、この星空の下の静寂を美しく彩る二つの音色がエースの耳に届いた。
とても美しく、繊細なこの音色は間違いなくフルート。
きっとこの静けさを気に入ったデュースがこっそりフルートを吹いているのだろう。
そしてそこにエーコが加わって二人だけの小さな演奏会をしているのだろう。
その光景を想像したらなんだか和やかな気分になり、エースは小さく微笑んだ。
二人だけの演奏会を邪魔しないように影から見学しよう、と決めたその時―――

パチパチパチパチ!

「ん?」

フルートの演奏が終わり、代わりに大きな拍手が鳴った。
もしやと思ったエーがは音のする方を辿ってみると―――二人だけの演奏会どころかプチコンサートがそこに出来上がっていた。

「ありがとうございます!」
「ありがとー!」

「アンコール!アンコール!アンコール!」

「では、次はチョコボの歌を演奏しましょうか」
「いいわよ!」

観客のアンコールに応えてデュースとエーコは次なる演奏を始める。
その光景にやや呆然とするエースだったが、二人のフルートの演奏はプロ級に上手いのだから当然か、と心のどこかで納得した。
と、そこにビデオカメラを持ったシェルクとキスティスが登場してエースの両脇を固める。

「演奏会はまだまだ続きそうですよ」
「いや、デュースが楽しそうならそれでいい。折角の演奏だし、僕も聞いていたいしな」
「ダビングはいる?今ならパーティ価格で安くするけど?」
「いくらだ」

こうして、静かな交渉が成立するのであった。
















さてさて、もう一度場面を船の中に戻そう。
船の中では美味しそうな料理やデザートが立食形式で提供されていた。
エルオーネは目を輝かせながらそれらを頬張っていた。

「流石、豪華客船の料理。どれも美味しい!」
「楽しそうで何よりだよ」

赤いドレスを纏ったシャルアがエルオーネの横に立つ。
スタイルが良いのも相まってシャルアの美しさや大人っぽさをより引き出していた。
自分もこんな風になれたらいいな、と思ったりする。

「シャルアは食べないの?」
「少し食べたからもういいさ。それより、あれを見てみなよ」

シャルアの促す方向に目を向けると、セフィロスオーナーが沢山の女性や数人の男性に囲まれている姿が見られた。
招待客の中には企業の社長や要人などが来ている訳だが、それにしてもセフィロスオーナーに群がり過ぎである。

「オーナー、今回も沢山の人に囲まれてるね」
「それにも関わらず物の見事にニコリともしないぞ」
「退屈だからだと思うよ、きっと」
「あ、ドクター・アレシアだ」

ドクター・アレシアがセフィロスの方に近づくと集まっていた人たちはまるで蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ