クリスタル横丁

□パーティーの約束
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会計を終えた頃にはお昼時となっており、二人は昼食を摂る事にした。
現在ユフィはカルボナーラを、ヴィンセントはオムライスを食べている。
しかしカルボナーラを食べるユフィの顔はあまり浮かない。

「・・・浮かない顔をしているな」
「へ?」
「何かあったか?」
「んー・・・別にー。パーティーいいなーって」
「お前も参加出来ない訳ではないだろう?」
「場所だよ、場所」
「場所?・・・そういう事か」

パーティー会場が船であった事を思い出してヴィンセントは、ああ、と納得する。
賑やかな場所が大好きなユフィにとって今回のパーティーに参加出来ない事に対しては落胆の一言に尽きるだろう。
持って生まれたものはどうしようもないが、だからといって慰めにはなるまい。
これは浮かない顔をする訳だ。
しかし、疑問が一つ。

「何故私のスーツ選びに付いて来た?」
「気が紛れるかなーって。本当だったらセルフィとリュックと一緒に週末にドレス買いに行く予定なんだけどアタシ無理じゃん?
 だから二人の気分を盛り下げたくなくて公園でボーッとしてたんだよ。
 でもずっとモヤモヤしててさ・・・だからヴィンセントのスーツ選びについてって開き直れないかなーって思ったんだけど」
「結果は?」
「見りゃ分かるでしょ」

ユフィは重い溜息を吐くと慰めにカルボナーラを口に含む。
しかし甘いクリームソースはユフィの心の癒やすには役不足であった。
花が萎れたように落ち込むユフィにヴィンセントはしばしば沈黙していたが、何かを思いつくと静かに薄い笑みを浮かべた。

「―――ユフィ、お前は予定通り週末にドレスを買ってこい」
「はぁ?アタシの話し聞いてた?会場が―――」
「お前の方こそ私の話しを最後まで聞け。私達が参加するのは船の上のパーティーではない。
 そうだな・・・折角だからアレクサンドリアの高級レストランにでも行くか」
「え・・・?」
「お前さえ良ければパーティーの日に別の場所で食事でもしないか?」

思ってもみなかったヴィンセントからのお誘いにユフィは一瞬フリーズする。
が、すぐに立ち直るとバンッ!とテーブルに手をついて勢いよく立ち上がると勢い良く首を縦に振って言った。

「するする!食事しよっ!」
「高級レストランとは言ったがあまり期待はするな」
「分かってるって!とびっきりのおめかしして来るから覚悟しろよ〜!」

萎れていた花が満開に開いたようでヴィンセントは安心する。
喜んでもらえたようで何よりだ。

「早速セルフィとリュックに報告しなきゃ!」
「待て、ここの昼食代くらいは自分で払っていけ」
「後で払うから建て替えといて!」

ヴィンセントの制止も聞かずにユフィは風の如くその場を走り去ってしまう。
後に残されたヴィンセントはしばし呆気に取られていたが、すぐに我に戻ると溜息を吐いて財布を取り出すのだった。












そんなこんなでユフィたちの家。
ユフィは自宅のドアを勢い良く開けて元気よく「ただいまー!」と叫んだ。

「お帰りユフィ、どないし―――」
「セルフィ〜!!」
「わっ!?」

出迎えたセルフィだったが、突然ユフィに抱きつかれてよろめく。
なんとか倒れる事は免れたが一体どうしたというのか。
気になってユフィの表情を伺うと、ユフィは「花が咲いている」という表現がピッタリくるほどの笑顔を浮かべていた。

「どないしたんユフィ?何か嬉しい事でもあったん?」
「エッへへ〜!週末、アタシもドレス買いに行くよ!」
「え?でもユフィ、船やで?ダメなんやとちゃうの?」
「聞いて驚け!ヴィンセントとアレクサンドリアのレストランで食事することになったんだ!」
「え〜!?ホンマに〜!!?」
「何々?どーしたの?」
「リュック聞いて!ユフィ、パーティーの日にヴィンセントと食事するんやって!!」
「え〜!!?」

ユフィはパーティー当日が楽しみになった。











END
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