クリスタル横丁

□教会の私物化
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「オーナー、オーナーの荷物が届きましたよ」
「中身は何だ」
「シャンプーとリンスの詰め合わせです。また宅配ボックスに入りきらなかったみたいですよ」
「フン」
「ところで、またお願いがあるんですけど」
「たかりたいならそう言え」
「たかるって何ですか!!おねだりって言ってくださいよ!」
「お前そんな表現が合うと思っているのか?」
「思ってますよ!・・・多分」
「自信がないのがまた哀れだな」

セフィロスオーナーは嘲笑しながら起き上がるとダンボールに貼られているガムテープを剥がして箱の蓋を開けた。
箱の中には香りごとにボトルの色が違うシャンプーとリンスが入っており、美容関係に詳しい女性が見たら歓喜の声を上げる事だろう。
ちなみにこのシャンプーとリンスは有名化粧品ブランドの会社の社長(オカマ)がセフィロスオーナーを気に入っていて、格安で送って来ているものである。
そんなシャンプーとリンスの山の中からセフィロスオーナーは適当に白のボトルを二つ取り出してそれをエルオーネに渡した。

「仕方がないから恵んでやろう」
「あ、バニラの香り!これいい香りですよね。私大好きです」
「お前の鼻もまともに機能していたんだな」
「失礼な!!」

喜びの笑顔からすぐに頬を膨らませて不満そうな表情を浮かべるエルオーネ。
本当にこの男は意地悪だ。
話もそこそこにセフィロスオーナーは再びソファの上に沈み、エルオーネは事務所へと戻って行った。

「お待たせ」
「本当に貰ってきたぞ、シャンプーとリンスを・・・しかも無傷で・・・」
「見てるこっちの寿命が縮むかと思ったな」
「ちゃんとお願いすればオーナーも分かってくれるのよ。嫌味言われるけど」

((俺たちが相手だったら絶対嫌味で終わらないぞ))

「ていうか姉さん、いつもあんな感じで荷物も受け取ってるのか?」
「うん。オーナーが再配達先をこの教会に指定してるのよ。お陰でいつもいつも私が受け取る羽目になっててね」
「宅配ボックスがあるんだろう?」
「すぐいっぱいになるの。それにオーナーもよく出張とか行ってたりするから放置気味よ」
「生物もか?」
「生物の配達先はここに指定してるみたい。腐って虫が沸いて宅配ボックスが悲惨なことになるからって。
 お陰で大きい冷蔵庫を置くことになったわ」
「あれはそういうことか・・・」

クラウドとスコールが同時に背後の冷蔵庫を見やる。
ザナルカンド製の最新型家族向け冷蔵庫で、沢山の食材が入るやつだ。
色は光沢感のある白だが、この事務所には大方似つかわしくはない。
きっとアレもセフィロスオーナーが自腹で購入したものだろう。
教会の私物化もいいところである。

「ま、少しだけ分けてくれるだけマシなんだけどね」
「少しだけ分けてくれるだけでも十分だと思うぞ、相手が相手なら」
「そんなによく送られて来るものをいつも一人で食べてるのか?アレは」
「ううん、親友のアンジールさんとジェネシスさんを呼んで一緒に食べてみるみたい。
 三人共仕事がハードだからエネルギーの消費も激しいし、丁度いい量なんだって」
「俺たちへの嫌がらせをやめたらその消費エネルギーも減るだろうに・・・」

その言葉を口にした瞬間、クラウドはハッと扉の方を振り返った。
しかし扉は閉まったままでお約束のセフィロスオーナーが立っていた!なんて事はなかった。

「あ、危なかった・・・」
「滅多な事は言うな。すぐにフラグが立つぞ」
「流石のオーナーもそこまでじゃないわよ」

なんて軽く笑うが不安でどうしようもないのは何故だろう。
なんだか嫌な予感がするのは何故だろう。
不安を拭いたくなってクラウドとスコールはそろそろお暇しようと事務所の窓から出ようとした。

「姉さん、俺たちはそろそろ帰る」
「それはいいけど何で窓から?」
「普通に出て行ったら絶対に良くない事が起きるからだ」
「何かしらの口実で斬られる事間違いなしだ」
「大丈夫よ、さっきだって静かに来たから怒らなかったし。力にはなれないかもしれないけど私が一緒に行こうか?」
「いや、いい。とにかく窓から帰らせてもらう」
「そう?気をつけてね、二人共」
「ああ」

挨拶もそこそこに二人は教会を後にした。











帰り道の途中でWPOから呼び出しをくらい、渋々本部に向かう二人。
歩いている最中に何度も後ろを確認する。

「・・・追ってきてないな?」
「ああ、大丈夫だ、追ってきていない」
「それにしても相変わらず凄いな、エルオーネ。肝が鋼で出来てるだろ」
「危険がないのはいいが親父に聞かれると色々面倒そうだがな・・・」
「そういえば近々遊びに来るんだっけか?」
「母さんと一緒にな」
「レインが一緒なら大丈夫なんじゃないか?」
「母さんがいるからこそ精神的致死ダメージを受けてもすぐに復活するから面倒なんだ」
「ああ、そういうこと―――」

最後の「か」の言葉を呟こうとした瞬間、呟こうとしたその数秒の間にクラウドとスコールは後ろを振り向いた。
すると、拳サイズのメテオが二人の頭目掛けて彗星の如き速さで降ってきていた。
そして悲鳴を上げる暇もないままそれは二人の頭に直撃した・・・。




「大丈夫ですか?」
「いつもの事だし大丈夫じゃない?」

メテオが直撃した事により、床石に突っ伏している二人の元にシェルク・エーコ・キスティスの情報部三人衆が寄ってくる。
よく見る光景に三人は動じていなかった。
でも一応、この状況についてキスティスが尋ねる。

「今度は何したの?」
「いつもの嫌がらせに決まってんだろ・・・」
「それはご愁傷様です。それよりラグナとレインが来てますよ」
「スコールとエルオーネどこー?って言ってたわよ」
「・・・どーすんだ」
「・・・姉さんの事は黙っておこう」

戦争が勃発したのはその10分後であったという。











END




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