クリスタル横丁

□デートは闘い
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さて、四人が最初にやってきたのはコースターエリア。
ありとあらゆる種類のジェットコースターが立ち並んでおり、コースターマニア大歓喜のエリアとなっている。
パンフレットを読みながらリノアが驚きの声を上げる。

「ここのコースターエリア凄いよ!人数に応じて座席の数を変えられるんだって!」
「二人なら二人分しかない座席が出て来るという事か?」
「多分そうだと思う。私、一番前好きだしスコールとも二人っきりで乗れるから一石二鳥だね!」
「私も一番前が好きだから丁度いいわ。クラウドは平気?」
「ああ、勿論―――」

少し気取って答えようとした途端、地獄の底から漂ってきそうな悪寒がクラウドの背筋を這い上がってくる。
危険が・・・すぐそこまで来ている・・・。
クラウドの本能が警鐘を鳴らす。
生命の危機を感じ取ったクラウドはそれらを回避しようとぎこちなく背後を振り返る。
すると―――たまたまコースターエリアを歩いていたセフィロスオーナーをその目に捉えてしまった。
そして、目が合ってしまった・・・。

「・・・」

バンバンバンバンッ(スコールの肩を全力で叩く)

「痛いぞ、急にどうした」
「あれ、あれみろ・・・」
「ん?・・・・・・・・・嘘だろ・・・」

クラウドの指差す方を見て全てを悟ったスコールは絶望した。
絶望したと同時にリノアたちだけはなんとしてでも守らなければならないと本能が告げてくる。
そしてそれはクラウドも同じだった。
そうなった二人の行動は早く、すぐさまどのコースターに乗ろうかと選んでいるティファとリノアに話しかけた。

「ティファ、リノア、先にコースターに二人で乗っててくれ」
「どうしたの?クラウド」
「クラウドとスコールは乗らないの?」
「クラウドが心の準備が出来ていないそうだ」
「大丈夫?やっぱり乗り物酔いが・・・」
「まぁ、そんなところだ」
「ごめんね、私がコースターがいいってワガママ言ったから・・・」
「リノアが悪い訳じゃない。直前になって尻込みしてる俺が情けないだけだ」
「それよりも早く乗ってきたらどうだ?時間が勿体無いぞ」
「そうね。行きましょう、リノア。私達が一つだけ乗り終わる頃にはクラウドも心の準備が出来てる筈だから」
「うん。無理しないでね、クラウド」
「ああ、悪いな。ティファと楽しんでくるといい」

ティファとリノアが一つのコースターに乗り込んで発進したのを見送った所でクラウドとスコールは光速ダッシュで走り出した。

「逃げろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「くそっ!あっちも全速力で追ってきてるぞ!!」
「走れ!!!とにかく走れぇえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」

大きな土埃を上げながら二人はセフィロスオーナーを振り切ろうと全速力で走った。
しかしセフィロスオーナーとは距離を空けるどころか心なしかどんどん詰められている。
このままでは埒が明かないと考えたクラウドはスコールに一つの提案をした。

「スコール、このままどっかに発進しそうなコースターに乗り込むぞ!」
「その後はどうするつもりだ!?」
「風の向くまま気の向くままにどっかへ逃げるぞ!!」
「リノアたちはどうなる!!?」
「俺達がいなくなっても勝手にその辺のコースターで遊んでくれる筈だ!!」
「そうじゃない!!リノアたちが狙われたらどうするんだと聞いているんだ!!」
「二人が狙われる事は絶対にない!!何故ならあの男は俺たちに嫌がらせした方が凄く楽しいって判ってるからな!!!」
「安心と信頼の分析力だな!!!」
「不安と絶望の分析力の間違いだろぉおおおおおおおおおおお!!!」

ドドドドドドドドドドッ!!と騒がしい音を立てて二人はコースターエリア内を走り回る。
しかし、VIPエリアなだけあってコースターに乗り込んでいる人間はあまり見かけない。
こうなったら適当なコースターに乗り込んで発進しようか。
しかしそれをしては乗り込んだ時のベルトだの安全バーなどのやり取りで時間をロスするし、何より途中で抜け出せなくなる。
思考を巡らしていると、とある横向きのコースターが二人の目に飛び込んできた。
その横向きコースターはよく見ればエースとデュースの二人が乗っていた。

「大丈夫か、デュース?絶叫系は苦手なんだろう?」
「は、はい。ですが克服しないといつまで立っても皆さんと一緒に乗れませんし・・・
 それに・・・エースさんが手を握ってくれていますから・・・」

デュースは俯いて頬を赤く染めると、エースと絡ませている指にほんの少しだけ力を込めた。
その力を感じたエースも手を握り返してデュースを安心させる。

「これが終わったら次は何に乗る?」
「えっと、観覧車に乗りたいです」
「じゃあその後はお化け屋敷に行くか」
「ええっ!?」
「これも慣れる為だ」
「うぅ・・・エースさんが意地悪です・・・」

やや涙目になってオロオロとするデュースが可愛らしい。
この意地悪だってこういう風な反応をして困ったりするデュースを見たいからだ。
それにお化け屋敷にいけばデュースともっと密着出来て楽しむ事が出来る。
その後はデュースの大好きな自然エリアに行ってとても楽しそうにはしゃぐデュースを見よう。
色んな表情のデュースが見れるというこのプランはエースにとっては完璧なプランだった。
今日一日は本当に楽しめそうだ。

『それでは発車致します。どうぞ、コースターの旅をお楽しみ下さい』

ガタンッ(コースターが動き始める)

「う、動きました・・・!」
「目が回らないようにな、デュース」
「は、はい!」

握る手に一層力が込められて苦笑する。
降りた時が楽しみだ。

「そのコースター待てぇえええええ!!!!!」

「ん?」
「あれは・・・」

徐々に動き出す自分たちのコースターめがけてクラウドとスコールが物凄い形相で迫ってくる。
エースとデュースがぎょっとしているのも束の間、クラウドとスコールは地面を蹴ると二人が乗ってるコースターに飛びついた。

「な、何やってるんだ二人共!?」
「前方を見ろ!!」
「あ!全て把握しました!」
「そういう訳だ、相乗りさせてもらうぞ!」
「いくらなんでも危険です!」
「何やっても危険なんだから何やっても一緒だ!!」
「捨て身にも程があるだろ!!」

そんな事を話している内にコースターはどんどん上り坂を上って行く。
カタカタと着実に上って行く。
そして―――

「キャーーーーーーーーーー!!!!」
「「ぬぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」

デュースと男二人の絶叫がコースターエリアに響き渡る。
本当だったらデュースの叫び声を楽しむ筈だったのに何が悲しくて恐怖から逃げて来た男たちの絶叫も聞かねばならないのか。
若干の虚しい気持ちを抱えながらエースはデュースの声と景色に気を集中する事で現実逃避を図った。

「クラウド、ゲームセンターエリアが見えるぞ!」
「何か考えでもあるのか!!?」
「パンデモニウムを召喚してあっちのエリアに飛び移るぞ!!」
「判った!!」
「よし行くぞ!!!」

「「とうっ!!」」

クラウドとスコールはコースターから飛び降りると、スコールが召喚したパンデモニウムの暴風に乗ってゲームセンターエリアへとダイナミックに飛び移った。
その様子を呆然と眺めていたエースとデュースだったが、気付けばコースターはスタート地点に到着しており、とりあえず降りた。

「クラウドさんとスコールさん、大丈夫でしょうか?」
「アレはあまり関わらない方がいい。それより観覧車に乗ろう」
「はい!」
「その後はお化け屋敷だからな」
「うぅ・・・忘れようとしていたのに・・・」

恨めしそうな視線を送ってくるデュースだがむしろ逆効果で、エースを楽しませるだけであった。
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