クリスタル横丁

□デートは闘い
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クラウドとスコールが懸命に耐え抜いた結果、約束の日はやってきた。
ユフィたちに散々たかられた記憶なんて忘却の彼方に吹き飛んだ。
二人は幸せ全開のオーラでそれぞれの彼女をエスコートする。

「ここがVIPエリアに行く為のカーゴだな」
「すご〜い!豪華で綺麗だね!」
「本当ね、如何にもVIPって感じね」

VIPエリアに行くという事もあっていつも以上におめかししているティファとリノア。
ティファが大人っぽい服装をしているのに対してリノアは十代後半の少女らしい可愛いらしい服装をしている。
高い代償を払った甲斐はあった。

「わぁ、ゴールドソーサーがあんなに小さくなってく・・・!」
「どんどん遠くなって・・・雲の上まで来たわね」
「・・・」
「・・・大丈夫か?」
「・・・大丈夫だ、問題ない」

幸いカーゴの揺れは小さい。
それにイスもフカフカで楽チンだ。
この後に大きな揺れなどがなければ大丈夫な筈だ。
乗り物酔いを抱えているクラウドは無様な姿を晒すまいと静かにティファの事を考えながら気を紛らわせていた。
そうしてクラウドの努力が実ったのか、カーゴはあっという間にVIPエリアに到着した。

「ここが―――」
「あのVIPエリア・・・!」

VIPエリアに到着してカーゴから降りるとティファとリノアは感嘆の声を漏らした。
ゴールドソーサーが賑やかな金色で彩られているのに対して、VIPエリアは淡いグリーンとクリーム色を中心に彩られていた。
床は真っ白な大理石で出来ており、上品さを引き出している。

「いらっしゃいませ、お客様のお名前を頂戴してもよろしいですかな?」

クラウドたちがVIPエリアに魅入っていると立派で上品な白い髭をたくわえた執事姿の老齢の紳士が出迎えて来た。
思ってもみなかった出迎えにクラウドはやや戸惑いつつも答えを返した。

「よ、予約していたクラウド・ストライフだ」
「クラウド・ストライフ様でございますね。4名様のご案内でよろしいですかな?」
「ああ」
「では、こちらへどうぞ。お荷物はそちらの台車にお乗せ下さいませ」

執事に促され、旅行用の荷物を美しいデザインが施された台車の上に乗せる。
すると執事の近くに控えていたメイドが台車の把手を握り、押し始めた。
台車は特有のゴロゴロとした音を発せず、静かに車輪を回して動く。
そんな光景を眺めつつクラウドたちは執事に案内されて一つのコースターの前にやって来た。
コースターについてスコールが尋ねる。

「このコースターは?」
「ホテルに行く為のコースターにございます。激しいものではないのでリラックスされていて大丈夫ですぞ」

執事が運転席に乗り込み、メイドは柵のついた荷物席と思われる場所に台車ごと乗り込む。
そうしてクラウドたちは座席にそれぞれ座り、シートベルトを締めた。

「皆様お乗りになりましたね、それでは出発致します」

執事が赤いレバーを引くとコースターは線路に沿って静かに走り始めた。
そうしてほんの数秒だけ走り抜けると、眼下にVIPエリアの全てが広がってきた。
細かくエリア分けされているのか、丸い敷地がいくつも浮かんでおり、中心地と思われる所にはそれぞれのエリアを象徴するオブジェがそびえ立っていた。
これらについての説明を執事が始める。

「眼下に見えますはこのVIPエリアの全貌にございます。このエリアにおいては全てのアトラクションが無料でご利用いただけます」
「無料だって!」
「VIPエリアなだけはあるな」
「尚、お土産エリアのみに限り代金を請求致しますのでご了承下さいませ」
「お土産エリアなら仕方ないわね」
「少しでも安い事を祈るばかりだな」
「そこはご安心を。良心的な値段設定をさせていただいております」
「アンタたち基準の設定じゃなくてか?」
「いえいえ、一般人基準にございます」
「それでよく採算を取れるな」
「恐れながらVIP向けサービスにご加入いただいているお客様が沢山おられますゆえ。
 その中には出資頂いているお客様もおり、そういった方々のお力のお陰で成り立っております」
「へぇ」
「さて、そろそろホテルに到着致しますぞ」

静かに走っていたコースターは静かに動きを緩めて行き、やがては止まった。
そうしてクラウドたちが降り立った場所はホテルというよりは最早城のようなものだった。

「ここ城だろ」
「来るところ間違ってるんじゃないか?」
「ホッホッホッ、どのお客様も最初は同じような反応をしますぞ。ですがご安心を。正真正銘VIP専用のホテルにございます」
「これはこれでなんか面白そう!」
「ちょっとワクワクするわね」

適応力の高い女子組に半ば感心する。
ぐだぐだツッコんでても仕方ないので、とりあえず中に入る事にした。
城もといホテルの中は華美でありながらも上品な造りで、ふかふかの赤い絨毯が敷かれており、オマケにシャンデリアがキラキラと輝いていた。
他にもクラシック系の音楽が大き過ぎず小さ過ぎずな音量で流れており、空間をより上品に仕立て上げていた。
これを城と呼ばずしてどう呼べと。
四人で内装を珍しそうに眺めているとエレベーターの前に連れてこられた。
エレベーターの扉やその周りは銀の縁取りがされており、電気の光を受けて眩い光を反射している。

「どうぞお乗りくださいませ」

執事がエレベーターを開け放し、その間にクラウドたちが乗り込む。
エレベーターの中の床もふかふかの絨毯が敷かれており、音楽も流れている。
しかも、エレベーターの突き当たりの壁はガラス張りで、中で熱帯魚などが優雅な泳ぎを見せていた。

「綺麗〜!」
「熱帯魚なんてお洒落ね」

熱帯魚の水槽に釘付けになるティファとリノアに釘付けになるクラウドとスコール。
そうやって和んでいるとエレベーターはあっという間に目的の階に到着した。
エレベーターが動いた感覚はほとんどなかったのにいつの間に?と四人は内心驚く。
なるほど、VIPはこんな所も凄いのか。

「こちらとこちらのお二つがお客様のお部屋となります。どなたがどのお部屋に入りますかな?」
「じゃあ、俺とティファはこっちで」
「なら俺とリノアはこっちの部屋だな」

彼氏の意見に賛同し、ティファとリノアは頷く。
その後、執事から部屋についての説明などをされ、鍵を渡された所で四人は一旦クラウドとティファの部屋に集まった。

「それで?今日はどうするんだ?」
「もっちろん遊びに行くに決まってるじゃん!言わせないでよ、クラウド!」
「リノアの言う通りよ、早く遊びに行きましょう!」
「やれやれ、はしゃいで怪我をするなよ」

そんな風に言い放つスコールだったが、声色は満更でもない感じであった。
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