クリスタル横丁
□デートは闘い
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「・・・」
「・・・」
二人の男はスーパーのレジでたまたま出会った。
ルームシェアしてるけど、ぶらっと買い物に行ってたらたまたま会った。
と言っても片方はバイクの洗車を終えた後に気晴らしに来たのだが。
「・・・」
「・・・」
お互いの目がお互いの手に握られている商店街の福引券に注がれる。
十枚揃えば一回引ける事が出来る。
男―――スコールの手には福引券が8枚。
男―――クラウドの手には福引券が2枚。
「「・・・」」
瞬間、二人の男は握手をして通じ合った。
ここでクラウドが何かしらのツッコミを入れるべきなのかもしれないが、ここだけは見逃してほしい。
そうしてやってきた福引場。
何人かの者たちが挑んではティッシュを渡され、敗れていく。
けれどそんな者たちの屍を踏み越えて二人は一等の『ゴールドソーサープレミアムツアーチケット』を掴み取るつもりだ。
このプレミアムツアーというのは、ゴールドソーサーで一番高級なホテルに泊まる事ができ、更には最近新設されたVIPエリアなるものを楽しむ事が出来るのである。
しかもこのチケット、4名様ご招待という今の二人にとってはなんとも都合の良い数字。
狙わない訳にはいかない、むしろ狙わない方がおかしい。
愛する彼女の顔を思い浮かべ、二人は福引に挑む。
「どっちが回す?」
「今日の星座占いは?」
「俺は2位だ」
「俺は8位だ。お前がいけ、クラウド」
「任せろ。2位の力を存分に発揮してみせる」
スコールから福引券を渡して貰い、クラウドはセフィロスオーナーに挑む気持ちで福引に臨んだ。
チャンスは一回。
なんとかこの一回で一等をものにしてみせる。
「いらっしゃいませー!福引券をお持ちですかー?」
にこやかな営業スマイルで店員がクラウドを迎える。
クラウドは静かに頷くと福引券を店員に渡した。
「はい、では一回ですね。どうぞお引きください」
「うぉおおおおおおおお!!!」
許可を得るや否やクラウドは雄叫びを上げて勢い良く福引を回した。
ガラガラと玉が転がる大きな音が響き渡る中、クラウドの中でティファの笑顔が鮮明に浮かび上がる。
きっと一等を当てて誘ったら喜んでくれるに違いない。
大好きって言ってくれるかもしれない。
もっと自分にメロメロになってくれるかもしれない。
そしてゴールドソーサーの夜に―――
「はい、残念賞のポケットティッシュです」
邪な考えをしていた所為か、排出口から出てきたのは白い玉で、クラウドの心情を察する事なく店員は無情にもポケットティッシュを差し出してきた。
それを無言で受け取り、無言でスコールの元に戻ってくるクラウド。
「・・・」
「・・・」
お互い無言のままでいると突然、ベルの音が大きく響いた。
「おめでとうございます!一等のゴールドソーサープレミアムツアーチケットを贈呈致します!」
「「「やったー!!!」」」
音の元を辿れば、ユフィ・セルフィ・リュックの三人娘が飛び上がってはしゃいでいた。
「凄いじゃんユフィ〜!」
「どーよ!ま、二人がパワーを分けてくれたお陰だけどね!」
「なぁなぁ、これ4名様ご案内やけど後一人誰誘う?」
「ケイト誘ってあげようよ!」
「ええな〜それ!ほな早速ケイトに連絡して―――」
ポケットから携帯を取り出したセルフィだったが、背後の人物にそれを取り上げられてしまう。
同時にユフィも肩を叩かれ、なんぞやと思って振り返ってみると、そこにはスコールとクラウドが真剣な面持ちで佇んでいた。
「なんだよ、クラウドとスコールじゃんか」
「はんちょー!アタシの携帯返してぇな〜!」
「・・・取引しないか?」
「は?取引?」
「・・・読めちゃったぞ〜」
クラウドとスコールの言う『取引』の意味を察したリュックは軽く溜め息を吐いた。
ゴールドソーサーのVIPエリアで遊ぶ日はまたの機会になりそうだ。
「やったー!スコールありがとう!!」
クリスタルヘブンで早速ティファとリノアを誘いに行った二人。
リノアはスコールの予想通り大喜びし、勢い余ってハグハグをした。
しかしここまでは予測出来ていてもやはり照れ臭くて恥ずかしい。
「・・・リ、リノア・・・!」
「クラウド、本当に私も一緒に行っていいの?」
「ああ、勿論だ。一緒に来てくれないか?」
「うん!」
とびっきりの笑顔で頷いてくれるティファにクラウドは心の中でにやけっぱなしである。
「そりゃそーだよねー。なんたってプレミアムツアーチケット手に入れたんだもんねー」
「喜ばない女の子はおらんよね〜」
「そうそう、頑張った結果だもんね〜」
クラウドの隣に座るユフィ・セルフィ・リュックはパンケーキを頬張りながら棒読みでそう述べる。
ギクッと固まるクラウドとスコールだが、すぐにメニュー表を三人娘の前に差し出して言った。
「・・・好きなものどんどん頼んでいいぞ」
「やりぃ!ティファ、イチゴパフェ宜しくー!」
「ほなアタシはプリンアラモード!」
「アタシはデラックスケーキプレートね〜!」
「はーい。珍しいわね、クラウドが奢るなんて」
「・・・俺も奢るつもりだ」
「スコールも?何かあったの?」
「まぁまぁティファ、クラウドたちだって色々あるんだって」
「せやせや、詮索するんは無粋っちゅーやつや」
「時にはそっとしとくのも大事だよ」
「(ぐっ!)」
「(落ち着け、俺たちに怒る権利はない)」
「(マテリアやレアアイテムを散々渡したのにか!?)」
「(そうだとしてもだ。相手は悪かったが・・・ここで我慢するだけで夢のような時間を過ごせるんだぞ)」
「(確かにそうだが・・・仕方ない)」
クラウドとスコールはその場をじっと耐え抜く事に努めるのであった。
耐え抜けばその後はこっちのものだ。
素晴らしい夢のような時間の代償と思えばなんてこたぁない。
クラウドたちは一生懸命自分たちに言い聞かせてその場を耐え凌ぐのであった。