クリスタル横丁

□シスターとオーナー
2ページ/3ページ

セフィロスは何の迷いもなく一つ目のショコラをフォークで刺し、エルオーネはほんの少し悩んだ後に同じように一つ目のショコラを刺した。
ゆっくりと慎重に噛みしめるエルオーネだが、甘いミルクチョコの味に思わず顔を緩ませる。
対するセフィロスの方は顔を緩ませる事も歪ませる事もなくチョコを咀嚼していた。

「ビターでしたか?」
「ミルクチョコだ」
「では、第二戦目ですね」

第二ラウンドの開幕。
セフィロスはまたも迷いなくチョコを刺して口に含む。
エルオーネは三つのチョコのどれにしようかとフォークを彷徨わせたが、やがて一つのチョコに狙いを定め、それた食べた。
口の中に広がるのは甘いミルクチョコの味。

「美味しい〜!」
「チッ、ビターじゃなかったか」
「フフン、残念でしたね。次も私が勝利をいただきますよ。なんだったらお先どうぞ?」
「後悔するなよ」

言ってセフィロスは二つの内の一つのショコラにフォークを刺した。
そしてそれを何の躊躇もなく口に含み、咀嚼する。
セフィロスは―――笑った。

「甘い」
「え・・・」
「ミルクチョコの味だ」
「・・・う、嘘ついてるんじゃないですか?本当はビターで、でも私に負けを認めさせる為にわざと―――」
「ならば最後の一つをお前が食べてみろ」

鋭い視線がエルオーネを射抜く。
溢れ出るその自信にエルオーネは戦慄し、そして震えた。
これは負ける、絶対に・・・。
そんな確信がエルオーネの中で生まれていた。
目の前にある四角い小さなショコラが今じゃ巨大な兵器にすら見える。

「どうした、食べないのか?」

悪逆非道の魔王が囁き、ショコラにフォークを突き刺してエルオーネの口元にそれを運ぶ。
人は死を目の前にした時にこんなにも絶望するのだろうか。
しかし、女は度胸。
エルオーネは震える唇を小さく開いてショコラを口に含んだ。

「・・・」

口の中でゆっくりと溶かし、その味を確かめる―――。

「・・・・・・〜〜〜〜苦い・・・!!」
「クククク・・・!」

それはそれは楽しそうに笑うセフィロスが憎たらしいが、口いっぱいに広がるビターチョコがそれを邪魔する。
急いで水を飲んで誤魔化そうとするが上手く味は流れてくれず、未だ口内に残る。

「次は・・・次は負けませんからね!」
「そうだな、次も勝てるといいな」

盛大な嫌味にしかしエルオーネは負けない。
次こそは負けないと心に誓い、会計を済まして店を出た。
それにセフィロスも続いて会計を済まし、店を出てて行った。
後に残されたティファたちは半ば呆然としつつも皿を片付ける。
けれど、その時にボソリと言葉を漏らした。

ティファ「なんていうか・・・いつも通りだったわね」
リノア「うん、いつもの二人だったね」
ガーネット「これが通常運転って言うのね」
ユウナ「もう慣れてきたけどね」

今日もクリスタルヘブンは平和です。










END





→後書き
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ