クリスタル横丁

□シスターとオーナー
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お昼のピークを過ぎたクリスタルヘブン。
客もまばらになってきて、まったりとした時間が流れるこの店のカウンター席にシスター・エルオーネはいた。

「はい、お義姉ちゃん、ショートケーキだよ!」
「ありがとう、リノアちゃん」

スコールの恋人であるリノアはエルオーネの注文した品であるショートケーキをエルオーネの前に出した。
手作りであるにも関わらず完成度の高いそのケーキにエルオーネは胸を躍らせ、満面の笑顔を浮かべる。
一週間に一度、自分へのご褒美としてエルオーネはこうしてケーキやパフェなどを食べに来ている。
まさに至福の日だ。

「いただきまーす」

エルオーネはフォークを持つとショートケーキの上に君臨している大きなイチゴを刺そうとした。
好きな物は先に食べる派だ。
が、その好きな物であるイチゴは横から伸びてきた別のフォークによって掻っ攫われてしまう。

「あっ!?」

イチゴの行方を追えば、いつの間にか隣にいたカジノ『リユニオン』のオーナー・セフィロスに現在進行系で食べられていた。

「酷い!私のイチゴ!」
「美味かったぞ」
「感想なんか聞いてませんよ!私のイチゴ・・・」
「また来週注文するんだな」
「そこでまた邪魔するつもりなんじゃないですか?」
「ああ」
「ハッキリ言わないで下さいよ!」

プリプリと怒りを露わにするエルオーネなど無視してセフィロスは涼しい顔でステーキセットを注文する。
つくづく意地悪な男である。

「ステーキセットのヨーグルトをやるから機嫌を直せ」
「えっ?くれるんですか!?やった!」

途端にエルオーネは喜びの笑みを浮かべ、機嫌を取り戻す。
こうした切り替えの早さはエルオーネのいい所でもある。

「悪く言えば単純だがな」
「悪く言わないで下さい」

そんなやり取りをしている間にセフィロスが注文したステーキセットが出された。
セフィロスがステーキを食べている間にエルオーネは王様のいなくなったケーキを食べる。
それはそれで幸せそうに食べている姿に、自分のデザートのヨーグルトはいらないんじゃないかとも思ったが、また喚かれると煩わしいのでやっぱりヨーグルトを分けてやる事にした。
そう、分けてやるだけ。

「デザートのヨーグルトです」

ガラスの器に盛られたヨーグルトをガーネットがセフィロスの前に出すと、セフィロスはそれをスッとエルオーネの前に置いた。

「一口だけ分けてやろう」
「えっ!?一口だけ!?メインディッシュを奪っておきながら一口だけですか!!?」
「そのヨーグルト一口はメインディッシュに値すると思うが?」
「しませんよ!もう・・・」

エルオーネは頬を膨らませながらもスプーンでヨーグルトを掬うと口に含んだ。
「美味しい!」とたった一口であるにも関わらず幸せそうな笑顔を浮かべる。

「ありがとうございます」
「フン」

エルオーネからヨーグルトとスプーンを受け取るとセフィロスはそれを黙々と食べ始めた。
あのオーナーがヨーグルトを食べるのかよ!とかエルオーネが使ったスプーンで食べるなんてそれ・・・などツッコミたい所が諸々あるがセフィロスの機嫌を損ねてフルボッコにされたくないので誰も何も言わない。
なんともカオスな空間である。
そんな空間など気にも留めずエルオーネは『期間限定!ロシアンルーレットショコラ!』のメニュー表をセフィロスに見せながら言った。

「オーナー、一緒にロシアンルーレットしません?」
「一人でしてろ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・金はお前が払え」
「判ってますよ!リノアちゃん、ロシアンルーレットのショコラお願いね」

「はーい」

オーダーを受けたリノアは皿を取り出すと、あらかじめ分けておいた小さなタッパーからショコラを取り出して皿の上に並べた。
そしてそれを二人の前に出した。

「6個のうち1個がビターでとっても苦くて、それ以外は普通のミルクチョコ味だよ」

「だそうです」
「お前がビターチョコを当てる未来が視えるな」
「その言葉そっくりそのまま返します!」

そんな訳で二人の勝負が今、幕を開ける!
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