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□誕生日プレゼントを考えたい
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11月20日は言わずと知れたユフィの誕生日。
まだまだ先の事とは言え、プレゼントについて考える必要がある。
流石にシドと同じように沢山のマテリアを贈るなんてのは出来ない。
いくらマテリアが大好きなユフィと言えど年に一度の誕生日で贈られた物が被るなどあまり良い気分がしない筈だ。
しかし・・・

(何にしたものか・・・)

ユフィの誕生日プレゼントにぴったりな物を求めてとりあえずいつものショッピングモールにやってきたヴィンセント。
色んな店を見て回れば何か閃くかもしれないと望みをかけてやってきたものの、今の所収穫はゼロである。
服や靴、バッグなどは自分のセンスで買っても相手のセンスと合わない可能性が大なのでまず最初に選択肢から外れる。
次に家電製品だが機械音痴で興味のない自分が、それとは正反対の位置にいるユフィに贈れる物など何もない。
そうなると小物・雑貨・食器などがあるが、どれもピンとくる物がなかった。
ユフィの趣味じゃないかもしれない、これは好きじゃないかもしれない、なんて考えるとどうしてもレジに進む気になどなれないのだ。

(今まではこんなに悩まなかったのだがな)

ふと、これまでのユフィの誕生日について思い出す。
今まではそう・・・実用的な物を贈っていた。
マテリアや武器を磨くのに使う道具、エリクサーなどの回復薬セット、マテリアを入れる為の丈夫な布袋。
ちなみにマテリアを入れる為の布袋は後日、ユフィの手でモーグリのアップリケが着けられていた。
ならば今回も実用的な物を贈ろうかという考えが脳裏を過ぎるが、連続で実用的な、それも戦闘系の物を贈るのは如何なものだろうか。
相手がユフィとはいえ、年頃の女性なのだしもう少し洒落た物を贈って喜んでもらいたい。
しかしその肝心な洒落た物がどうにも思いつかない。
かと言って実用的な物に逃げる訳にもいかない。
延々とループする思考に疲れ果ててヴィンセントは息抜きにとある店へと足を向けた。

(そろそろなくなりかけていたからな)

様々な種類のワインが並ぶ店の中を躊躇なく進んで目当てのワインを見つける。
今のヴィンセントのお気に入りはロケット村で造られる年代物の赤ワインだ。
ロケット村の近くには葡萄園が沢山あり、そこではワインの製造も昔から多く行われている。
他にはない深い味わいとほんのり鼻を抜ける甘みが病みつきになってやめられない。
今の楽しみは本を読みながらこのワインとビターチョコレートを楽しむ事だ。
お気に入りの一本を手にしっかり持ってレジに向かおうとしたその時、ヴィンセントはある事を閃いた。

(ワインか・・・)

今年の誕生日でユフィは二十歳を迎える。
晴れて成人となり、飲酒が解禁されるのだ。
その記念としてワインを贈るのもいいかもしれない。
オシャレな物だし服や靴のように似合う・似合わないなんて物もない。
酒を全く飲まない・飲めないのであれば贈れる物ではないが、まぁユフィならその心配もいらないだろう。
もしもダメだったらその時は素直に謝って改めて代わりになる物を用意すればいい。
そうと決まれば善は急げだ。
ヴィンセントは早速アルコール度数の低い棚の前に立つとユフィの為のワインを選び始めた。
なるべく度数が低くて飲みやすくて親しみやすい見た目のもの・・・。

(やはりこれだな)

淡いピンク色の液体で満たされたワインボトル、その名もロゼワイン。
アルコール度数は低く、フルーティーな味わいと可愛らしいピンク色の見た目で女性に人気のワインだ。
洋食は勿論、ウータイ料理にも合うワインなのでユフィもきっと気に入ってくれるだろう。
ヴィンセントは満足したように頷くと自分のワインとユフィのワインを持ってカウンターの前に立った。

「いらっしゃいませ」
「この二つを頼む。それからこっちは贈り物用だから包んでくれないか」
「承知致しました。少々お待ち下さい」

紳士のような髭を蓄えた中年の男性は恭しく返事をすると上品な包装紙を背後の棚の中から取り出して包み始めた。
手際が良く、無駄な皺を作らずに包むその手は男性がその作業に慣れている事の証である。
恐らくはよくここでプレゼント用として購入する者が多いのだろう。
包装紙も仕上げのリボンも上品でセンスが良いしここでプレゼント用として求める者が来るのも頷ける。

「こちらで宜しいでしょうか?」
「ああ」

出来上がったラッピングされたロゼワインに満足したように頷き、会計を済ませて店を出た。
ワインを二本抱えている事もあってどこにも寄らずに真っ直ぐ家へと帰る。
部屋ではストーブを点けるので室温が上がってしまう為、いつものように冷蔵庫の野菜室に保管する。
本当はワインセラーなどに保管するのが好ましいのだがこの狭い部屋ではそんな物を置くのは夢のまた夢。

「喜んでくれるといいが・・・」

閉じた野菜室を見下ろして呟き、当日の誕生日の主人公の事を思い浮かべるのであった。











END

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