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□ジムに行きたい
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「しっかり汗かいて来いよ〜」

ドン、と背中を叩かれて後ろのユフィを見やる。
今日のユフィは珍しくスカートを履いてオシャレな格好をしていた。
その隣のティファとマリンも同じようにオシャレな格好をしていて、これからショッピングに行くという出で立ちだ。
いや、実際ショッピングに行ってくるわけだが。
対するヴィンセントとクラウドとデンゼルはスポーツ向きの動き易い服装をしている。
それもその筈、ヴィンセントの希望とクラウドたちの予定が一致してこれからスポーツジムに入るからだ。

「お昼になったら戻ってくるからその時にみんなでご飯にしよっか」
「ああ、そうしよう」
「頑張ってね、デンゼル!」
「うん、しっかり鍛えてくるよ」

ティファとクラウド、マリンとデンゼルのやり取りのなんと微笑ましい事か。
どこからどう見ても立派な夫婦と兄弟だ。
ただ、デンゼルはどちらかというと兄弟というよりは好きな女の子の前でカッコを付けたい男の子、という感じだが。
しかしそれはそれで微笑ましい。
そうやって四人を眺めていると横からユフィが顔を出して見上げてきた。

「ちゃ〜んと着替えとタオルは持ってきたのか〜?」
「当たり前だ」
「タオルは使っても恥ずかしくないキレーなタオルか〜?」
「・・・恐らく」

一応、なるべく綺麗なタオルを持ってきたつもりだが果たして。
袋の中から取り出して見せてみるがユフィは「ふぅん」と鼻を鳴らすだけで良いとも悪いとも言わない。

「何かおかしな所でも?」
「別に〜。ただ味気ないな〜って」
「汗が拭ければ味気ないも何もないと思うが」
「でもいいタオル使ってるとやる気違わない?」
「そうでもないと思うが」
「ふ〜ん」

どこか納得のいっていない様子のユフィだったがそれ以上何も言って来る事はなかった。
代わりに・・・

「あ、そーだ。ちょっと後ろ向いて」
「・・・何をする気だ」
「いいから早く!」

嫌な予感がしつつも仕方なく後ろを向く。
すると背後から「え〜っと・・・あった!」なんて声が届く。
そうしてヴィンセントが身構えていると予想通り髪をまとめられた。
しかも持っていたのか、櫛かブラシで丁寧に髪を梳かれてまとめられる。

「・・・ユフィ」
「まとめてないと邪魔でしょ」
「問題ない」
「問題あるっての!ぜっ〜たい後で後悔するって!」
「・・・・・・ならばせめてまともな髪型にしろ」
「ちぇ〜、釘刺された」

刺しといて良かった。
結局一つに結われるという無難な形に留まったのは幸いと言うべきか何と言うべきか。

こううして話もそこそこにヴィンセントたちはジムへ、ユフィたちはショッピングへと向かうのであった。











そしてジムの中。
様々な男女が器具を使ってトレーニングに励んでいた。
ダイエット感覚の女性から戦士として鍛えに来ている男性まで様々。
他人から見ればその様々に自分たちも入っているだろうが。
とまぁ、そんな事は置いといて三人で軽く準備運動をして何から始めるか相談する。

「いつもは何から始めるんだ?」
「大体エアロバイクからだな」
「クラウド、丁度三人分空いてるよ!」
「よし、早速使うか」
「ランニングマシンからではないのだな」
「ランニングマシンは・・・―――最後だ」
「最後だ」

フッと意味深に笑うクラウドとそれを真似するデンゼル。
一体何を考えているか知らないが多分言うほど重要な事ではないだろう。
なんとなくだがそう思う。
敢えてそれ以上はツッコんでやらずヴィンセントはクラウドたちと共にエアロバイクを使う事にした。



現役タークス時以来のエアロバイクの感触に最初は初めて使った時のような心地がしたがすぐに懐かしさで体に馴染んだ。
思えばニブルヘイムに護衛任務で出向するまでは暇さえあればトレーニングルームに訪れて体を鍛えていた。
他にやる事もなくて無駄に時間を潰すくらいなら体を鍛えておこうと。
おかげで体力も持久力も他者より随分ついて任務で大いに役に立った。
しかし、その割には宝条の実験には耐えられなかったが・・・。
いや、あれは不意打ちをくらった所為もある。
だから本当であれば・・・いや、耐えられても嬉しくないが。

「・・・おい、アンタ」
「どうした」
「顔が暗いぞ。何か嫌な事でも思い出したのか?」
「・・・そんな所だ」

自嘲気味に笑っているのを悟られたらしく、クラウドに呆れられたように溜息を吐かれる。

「やっぱユフィも連れてきた方が良かったんじゃないか?騒がしくて余計な事を考えなくて済むだろ」
「ティファが買い物に行くと言った以上は無理だろうな。お前がティファを連れてきたらついてくるかもしれんが」
「・・・ティファがここに来るのはダメだ。女性専用のジムにマリンと一緒に通わせている」
「意外だな。家族仲良くここに通っているものだと思っていたが」
「いや、ティファとマリンには女性専用のジムに通わせている。ティファなんか特にこんな男もいる所にきたら注目の的だ」

言われてなるほどと頷く。
ティファは抜群のプロポーションと格闘家という事で柔軟な体も持ち合わせている。
しかも体を動かす方が輝くタイプだからここでトレーニングに勤しんでいればクラウドの言う通り注目の的となるだろう。
それも主に男性の。
そう考えるとクラウドの考えも分からなくもない。

「マリンも女性専用に行かせているのはバレットからの要望でもある」
「それも男の目を気にしてか?」
「そうだ」
「・・・マリンには失礼だが、まだ子供だから心配する必要はないと思うが」
「今の内に目をつけられると困るらしい。それにティファが女性専用に通う以上はどのみち一緒に行かせていたがな」
「フッ、そうだろうな」
「クラウド」
「どうした、デンゼル」
「俺、そろそろ他のやりたい」
「なら、後十分したら他のをやろう」
「うん!」

クラウドの宣言通り、三人は後十分くらいエアロバイクで鍛えてから他の器具に移った。
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