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□早く帰りたい
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それからしばらく歩いて現在地は公園。
とうとうユフィが我慢出来ずにギブアップをしたためにここで途中休憩することとなったのだ。
無機質な白い街灯の下に設置されてるベンチにユフィとヴィンセントは座っていた。
ユフィなんかはヒールを脱いで足をブラブラと揺らしている。

「はぁ〜辛かった〜!超痛かったよ!」
「しっかりケアルをかけておけ」
「はいよ〜」

ユフィはバッグからマテリアを取り出して痛む足にケアルをかけ始める。
その間にヴィンセントは小銭を確認して自動販売機の前に立った。

「何か飲むか?」
「サイダー!」
「缶でいいな?」
「うん」

ユフィのサイダーと自分用のコーヒーを選び、取り出してベンチに戻る。
サイダーをユフィに渡してすぐにコーヒーを開けた。
その時にユフィのサイダーを開ける音と自分の音が重なった。

「―――ぷはぁっ!!やっぱ疲れた時はサイダーだね!」
「元気が出たようで何よりだ」
「でも家までまだもうちょっとあるんだよね〜。だからさ―――」
「おんぶはしてやらないぞ」
「ちぇー、やっぱりか」

ユフィは不満そうに唇を尖らせてサイダーを飲む。
むしろまだ諦めていなかったのかと呆れる。
サイダーを一口飲んでからユフィはいつもと同じ調子で他愛のない話を始めた。

「そーいえば近々社員旅行あるけどヴィンセントは行くの?」
「不参加だ」
「言うと思ったよ。アタシもバックレちゃおっかな〜」
「行き先はどこた?」
「ヒーリン。静かな場所でしっかり療養しましょうだってさ」
「・・・それは退屈だな」
「でしょ〜!?だからさ、バックレてアタシたちだけどっか他のとこに行かない?ゴールドソーサーとかジュノンとかさ!」
「・・・私も自宅で一人静かに療養したいのだがな」
「何さソレ!」
「冗談だ」

ぷくっと頰を膨らませて怒るユフィに軽く笑いながらコーヒーを口に含む。
程よい苦味が体中に染み渡り、疲れを癒す。

「でもさ、ホントーにバックレて家に引きこもるつもり?」
「それも悪くはないが・・・少し勿体ない気もする」
「じゃあさじゃあさ!アイシクル行かない?スキーに行こうよ!」
「流石にそこまで行くとリーブに何を言われるか分からん。自宅周辺が限度だ」
「ちぇー。でも自宅周辺って何すんのさ?」
「・・・図書館にでも行くか」
「えー?退屈」
「何も私に合わせる必要はない。お前はお前の好きな事をするといい」
「社員旅行をバックレる共犯者なんだから一心同体に決まってるだろー」
「どういう理屈だ」
「それよりもなんかないの?面白そうな所とか近場で行きたい所とかさ」
「・・・スポーツジム」
「え?」
「スポーツジムに久し振りに行きたいな」
「ヴィンセントってスポーツジム行くの?」
「タークスの頃は普通に通っていたが」
「え〜?想像・・・出来ない事もない、か」
「任務に頻繁に参加しているとはいえ、それでも体は鍛えておかなくてはな」
「それだったらクラウドがデンゼルと一緒にジム通ってるらしいから紹介してもらったら?
 多分割引とかサービスとかあるだろうしさ」
「ほう。ならば今度クラウドに相談してみるか。お前もジムに行くか?」
「う〜ん、状況に寄るかな。
 もしもティファとマリンもジムに行くなら行くし、そうでなかったら行かないかもだし。ティファ次第かな」
「お前は鍛えなくていいのか」
「努力家なユフィちゃんは常に鍛えてるからそんな心配はしなくていいんだよ〜だっ」
「努力家、か・・・フッ」
「あ!今笑っただろ!?」
「縄抜けの練習をしてなくてまんまとダチャオ像に張り付けられていたのはどこの誰だろうな?」
「あ、あれはちょっとした事故だっての!ちょっと油断しただけ!今はちゃんと抜けられるし!」
「では、今度試しても問題はないな?」
「勿論だよ!どっからでもかかってこい!」

簡単に乗せられるあたりがユフィらしい。
一つ楽しみが増えた事に喜びを感じつつヴィンセントはコーヒーの残りを全部飲み干して缶を捨てるカゴに放り投げた。

「そろそろ帰るか」
「おんぶしてー」
「ダメだ」
「やっぱダメか」

ユフィはベンチから缶を放り投げると見事にカゴの中に投入させた。
中で缶と缶のぶつかる音が大きめに響く。
それからユフィはハイヒールを履き直すと少し怠そうに立ち上がった。

「はぁ〜あ、道のりは長いよ」
「せめて家まで送ってってやろう」
「サンキュー」

ユフィの隣に並んで立ち、ユフィに合わせてゆっくりと歩き出す。

「う〜足いた〜い」
「ケアルをかけてやるから我慢しろ」
「うへ〜」

ユフィの足にケアルをかけ、ゆっくりと歩いたから帰宅時間は遅くなったものの、どこか満足しているヴィンセントなのであった。
















END
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