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□雑談したい
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「あとどのくらいだろうな」
「・・・さぁな」

クラウドとヴィンセントは近場の喫茶店の窓側ボックス席でのんびりコーヒーを飲んでいた。
周り(特に女性)からしてみれば二人のイケメンがいてはしゃいでいるだろうが、当の本人達はどう暇を潰すか悩んでいた。
これがユフィとかいれば面白い所を教えてくれたのだろうが、現在ユフィはティファとマリンと一緒にチョコを製作中だ。
そう、クラウド達へ贈るバレンタインチョコを・・・。

「・・・そういえばデンゼルは?」
「友達と遊んでる」
「お前がいるのにか?」
「俺が行けって言ったんだ。友達と約束してたならそっちを優先して友達を大切にしろってな」
「説得力があるな」
「うるさい」

クラウドはややムスッとした表情を浮かべると砂糖とミルクの混ざったコーヒーを一口含んだ。
その様子をややおかしそうに眺めながらヴィンセントもブラックコーヒーのカップを優雅に口に運ぶ。

「そういえばアンタ、最近スマホを買ったんだってな」
「あぁ、ユフィに手伝ってもらってな」
「集られたんじゃないか?」
「先手を打っておいた」
「流石だな」
「だがラインでメッセージを頻繁に入れてきてる」
「相変わらずだな。アンタの事だから既読スルーでもしてるんだろ?」
「そのきどくするーとやらについては既に諦めているらしい。
 ユフィには悪いが、前の携帯の時から送られてきたメールの半分は返せていない」
「ユフィもユフィだが、少しは返してやったらどうだ?」
「それなりの努力はしている」
「努力なぁ」

クラウドは苦笑いするとまたコーヒーを一口飲んだ。
対するヴィンセントは時計を確認してみるが、まだ10分くらいしか経っていなかった。
チョコはまだ出来上がってないだろうと推測しつつ今度はヴィンセントの方からクラウドに話を振る。

「ところでホワイトデーは何を贈る?」
「マリンにはマリンの好きなお菓子を贈ってティファには花と何か洒落た物を・・・」
「洒落た物とは?」
「それで悩んでる。なんか気の利いた、ティファが喜んでくれそうな物・・・何がないか?何でも喜ぶはナシだぞ」

言おうとした事を封印されてヴィンセントは言葉に詰まる。
自分も女性への贈り物選びは得意ではない為、こういう質問をされても上手く答えてやる事が出来ない。
しかしクラウドは真剣に悩んでいるし出来れば力になってやりたい。
こうなったら仕方ない、とヴィンセントは自分がティファにホワイトデーに渡そうと思っていた物をクラウドに教える事にした。

「ワインはどうだ?」
「ワイン?」
「私がティファにホワイトデーのお返しに贈ろうと思っていた物だ」
「ワインか・・・いいかもしれないな。でもいいのか?アンタが思いついたものだろ?」
「私は代わりに洋酒入りのチョコレートを渡す。それをつまみにしてティファと仲良く飲むといい」
「ああ・・・ありがとうな、ヴィンセント」

思わぬ提案にクラウドは嬉しそうに薄く笑う。
頭の中は恐らくティファとのホワイトデープランでいっぱいになっているだろう。
きっと上手くやるのだろうなと予測しながらコーヒーを一口飲んだ。

「後はユフィだな。マテリア3つくらいでいいとは思うんだけどな」
「私のと合わせて6個手に入るから十分だろう」
「アンタもマテリア3つ渡すのか?」
「そのつもりだ」
「一応マスターにして渡すか?」
「そうしておいた方が文句もないだろうし、ユフィもより喜ぶだろう」
「種類はなるべく分けておこう。俺が攻撃魔法・独立・支援マテリアを渡すからアンタは残りを頼む」
「では私は回復魔法・コマンド・召喚マテリアを担当しよう」
「そのままの状態で渡すのは・・・流石にマズイよな?」
「マズイ・・・だろうな、いくらなんでも毎年の事とはいえ。
 バレンタインでなんのラッピングをしないままむき出しのチョコを渡すようなものだ」
「ユフィはファミリーパックのチョコを2、3個渡してきた事があっただろ」
「旅の時はな・・・だが最近のはティファたちと一緒に作ってるからちゃんとラッピングして渡してきているだろう」
「まぁな」

やれやれとクラウドは軽く息を吐く。
ユフィと言えど女性で、ティファやマリンと同じように扱うべきなのだろうがそれはそれで何を贈ってやればいいかまた悩む。
それに本人はお返しはマテリアで宜しくなんて毎年のように言っていたのだし問題はないだろう。
さて、何に包んで渡すか・・・。
今度100ギルショップにでも行ってそれらしいものでも見てくるとしようか。
そんな風に考えているとスマホにラインメッセージの新着が入ってきた。
送り主はユフィだった。

「・・・ユフィからチョコが出来たから店に来いとお呼びがかかった」
「俺もティファから呼ばれた。行くか」

そんな訳でヴィンセントとクラウドは立ち上がって会計を済ますとセブンスヘブンへと足を運ぶのだった。

















「「「ハッピーバレンタイン!!!」」」

店に入るとティファ・ユフィ・マリンの3人が店内を満たす甘い香りと共にチョコレートケーキで二人を迎えた。
大きなホールケーキで、イチゴや生クリームが可愛らしく盛り付けされている。。

「今年は気合が入ってるな。大きいし飾り付けも豪華だ」
「このチョコレートケーキはクラウドとヴィンセントとデンゼルとナナキとシドの分よ」
「ナナキとシドも来るのか?」
「うん、午後に来るって。だからデンゼルのと一緒に切り分けてとっておくつもりよ」
「ふーん」
「あのねクラウド、お願いがあるの」

クラウドがティファと話しているとマリンが可愛らしいピンク色のラッピングが施された四角い箱を持ってクラウドの前に出てきた。
しゃがんで目線を合わせるとクラウドはマリンのお願いを聞いた。

「どうした、マリン?」
「このチョコをお父ちゃんに渡して欲しいの。お父ちゃん、今日もお仕事が忙しくてこれないって言ってたから・・・」
「ああ、分かった。必ず届けるよ」

クラウドは柔らかく微笑むとマリンからチョコの入った箱を受け取った。
お願いを聞いてくれて嬉しそうにマリンは微笑み、ティファも笑顔で「良かったね」と言うと「うん!」と元気に頷いた。
その光景を微笑ましく眺めていると、にゅっとユフィが視界の下から顔を出して口を開く。

「さてさて、ここで可愛いユフィちゃんからヴィンセントにサプライズプレゼント〜!」
「サプライズ?」
「そ!それは〜・・・じゃ〜ん!ヴィンセント専用のチョコレート〜!」

大袈裟に言い放って出てきたのは真紅のラッピングが施された丸い箱。
ユフィはそれをヴィンセントの前に差し出して言った。

「どーだー?嬉しいだろ?涙出ちゃうだろ〜?」
「私専用とはどういう意味だ?」
「そ、そりゃ・・・その・・・」
「チョコレートが余ったから作ったんだよね」
「そうそう!ティファの言う通りチョコが余っちゃってさ〜!それで仕方ないからヴィンセントにって思って作ったんだよ!!」
「何故私に?」
「ティ、ティファと賭けをしててさ!クラウドとヴィンセント、どっちがチョコ沢山貰えるかってやつ!
 それでヴィンセントに勝ってもらわないとアタシが負けちゃうからあげたんだよ!!判った!!?」
「あ、ああ・・・」

沢山言葉を並び立てられて押され、ヴィンセントは思わず一歩後ろに下がる。
何かを隠しているように見えるが聞いたら先程と同じような剣幕で押されるだろうから敢えて詮索はしない事にした。
それにしても一体何を企んでいるのか。

「ユフィ、お前ってやつはそんな賭けなんかやってるのか。勝ったからってティファから物を取るなよ」
「あ、そんな事言うんだ?べっつにそんなつもりなかったんだけどな〜。
 もう怒った。前借りでティファからクラウド専用チョコ貰うから」
「俺専用チョコ!?ティファ、あるのか!?」
「うん、あるよ」
「でも今からアタシの物だから」
「すまない、悪かったユフィ!マテリアいくらでもやるからこれだけは持っていくな!!」
「んじゃぁホワイトデーにマテリア5個ちょーだい。勿論マスターで」
「くっ・・・判った」

苦虫を潰したような表情でクラウドが頷くとユフィは勝利のガッツポーズをした。
余計な事を言うからこんな事になるというのに・・・。

「専用チョコを貰ったからにはお返しは三倍か?」
「それはつーじょーの量だよ。今回のは六倍だかんね!」
「六倍か・・・マテリア何個分だ?」
「うーん、6個って言いたいとこだけどマテリアは5個でいいよ」
「さりげなく要求してくるのだな・・・」
「んで、あと1個分はなんか他のプレゼントが欲しいな〜」
「何が欲しい?」
「そこはヴィンセントが考えるんだよ!男の見せ所だぞ〜?」
「そう言われてもな・・・」
「フフ、頑張ってねヴィンセント」

ティファが柔らかく微笑んでヴィンセントを応援する。
しかし頑張れと言われてもこれは中々ハードルの高いお題だ。
あのユフィを満足させられる自信はあまりない。


ヴィンセントの頭を悩ます日々が始まるのであった。











END

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