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□携帯を買い替えたい
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そして夜。


ピロリン♪


早速ユフィから通話をしてもいいかという伺い立てが来た。
今は特に忙しい訳でもないので慣れない手つきで文字を打ち込みながら承諾の返事をする。
でもその返事をするのに五分かかった。
更に言うならば、送信した後にスタンプの『OK』を送れば良かったと後悔した。
そんな後悔も束の間、さっそくユフィから電話がかかってきた。
教えられた通りに緑の受話器マークをタッチして応答する。

「・・・もしもし」
『もしもし?ヴィンセント?』
「ああ」
『お、繋がったね〜。どう?使い心地は』
「・・・悪くない。耳につけたまま会話をするという所はまだ昔のままなのだな」
『へ?耳につけたまま?・・・あーそっか、まだ教えてないか。これ、スピーカーにも出来るよ』
「何?」
『画面の下の方にスピーカーマークあるから押してみて』

言われるままにマイフォンを耳から離してスピーカーマークを探す。
容易く見つかったそれを軽くタッチして確認した。

「押したぞ」
『あーあー!聞こえる?』
「!?」

耳元でしか聞こえていなかったユフィの声がマイフォン全体から聞こえてくるような程、大きく響いてきてヴィンセントは驚きから一歩下がった。
舐めていた、今時の電話がここまで進化していたなんて。

『ヴィンセンとー?』
「あぁ・・・聞こえている。私の声も聞こえるか?」
『うん、聞こえるよー。どーだー?スマホ便利だろー』
「・・・そうだな」
「ヴィンセントも無事にスマホデビューした事だし、明日お祝いにご飯食べに行こーよ』
「お前はただ行きたいだけだろう」
『うぐっ、なんで分かったんだよ・・・で、でも祝いたい気持ちはちょっとくらいはあるんだからね!?』
「ちょっとなのか」
『ハンバーグの美味しい店があるんだよ〜!お昼休憩の時に一緒に行こ!』
「シェルクたちとじゃなくていいのか?」
『シェルクたちは明日は予定が合わないから今度行くの。ねーいいじゃん行こうよ!』
「・・・お前がそこまで言うのなら行ってやらんでもないが」
『やりぃ!んじゃ明日ね!』
「それにしてもお前ば次から次へと美味い店を見つけるな。何かコツでもあるのか?」
『んー?コツっていうか、噂で聞いたり自分で歩いて探してる感じかなー。不味い店に当たることもたま〜にあるけど』
「なるほどな」
『何々?ヴィンセントも美味しいお店探そうとしてんの?』
「自宅周辺でな」
『へ〜。いいとこ見つけたら今度つれてってよ!』
「見つけたらな」
『絶対だぞ!』
「分かったから今日はここまでにしてくれ。疲れて眠い」
『んー。じゃ、お休みー』
「ああ」

赤い受話器マークを押してユフィとの通話を終える。
これで本当に通話料がかかってないのか心配だが、ここはユフィの言葉を信じるとしよう。
さて、ユフィに教わったアラームの設定をして今日はもう寝よう。
・・・一応、設定に失敗した時の保険でデジタル時計のアラームも設定しておく。

「・・・鳴れよ」

変な念押しをスマホにしてベッドに潜り込む。
これでダメだったらこのスマホを好きになる事は出来ないだろう。
そうなったときは覚悟をしてもらう。
これまたおかしな警告をスマホに対してかけながらヴィンセントは眠るのであった。






















翌日


ピピピピッ

ピピピピッ


二つの電子音がヴィンセントを叩き起こす。
寝ぼけた頭でスマホを探り当て、ホームボタンを押す事によってそれを止めるを
けれどまだ、鳴り止まない。

「・・・」

やや不機嫌になりながら起き上がって音の出所を探る。
が、それはすぐにデジタル時計のものだと把握してボタンを押して止めた。
スマホもデジタル時計のディスプレイも両方を確認すると―――どちらも午前7時を表示していた。
そしてどちらもヴィンセントか設定した時間にちゃんと音を鳴らして彼を起こした。

「・・・これから宜しく頼む」

まるで返事をするかのようにスマホのディスプレイがラインのメッセージ取得を報せるのだった。
















END
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