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□器具を買いたい
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そうしてやってきた丼コーナー。
しかしホームセンターなだけあって柄はどれも微妙だ。
けれど贅沢は言っていられない。
とりあえずのしのぎとして適当なのを買い、後日どこか別の店で己の気に入る丼を買いに行こうではないか。
ヴィンセントはそう自分に言い聞かせて色んな丼を手に取って見比べてみた。

「どれにするか・・・」

どれもこれも似たり寄ったりで、どれを選んでも同じ気がする。
仕方ないので赤い線が一本引かれているシンプルな丼にする事にした。

「このウサギの丼なんてどう?ユフィはウサギが好きよ」

ティファが持っている丼に目を向けると、ウサギが二匹並んで日向ぼっこをしていた。
そこでユフィが使う所を思い浮かべて少し和む。
ティファの言う通り、きっと喜んでくれるかもしれない。
普段は子供扱いするなと言う癖にこういう所では喜んだりするのがユフィだ。
折角ユフィに時間を割いて作って貰うのだし、丼くらいユフィが喜ぶ柄の物を買ってっていいだろう。
ヴィンセントはティファから丼を受け取るとそれをカゴの中に入れた。

「そうだな、ユフィが使う丼はこれにしよう」
「お箸は大丈夫?」
「割り箸がある」
「レンゲは?」
「買っておこう」

無難な白のレンゲを二個ほど取ってカゴに入れる。
ティファが言ってくれなかったら危うくスプーンで汁を飲まなければいけない所だった。

「後は必要な物は特になさそうね」
「ああ。良ければ食材の方も選ぶのを手伝ってくれないか?」
「勿論よ」

ティファは笑顔で頷いて了承した。
この笑顔にはユフィとはまた違った太陽のようなものを感じる。
きっとクラウドはこういうところも好きになったのだろうなと思う。

さて、ホームセンターでの会計を終えたヴィンセントは今度はスーパーの方へと足を運んだ。
ティファに色々レクチャーしてもらいながら新鮮な食材を選び、次々とカゴの中へと放り込んでいく。
ついでに、いざという時のレトルト食品も放り込んでいった。
そして、デザートのコーナーを通りかかった時のこと。

「あ、このプリン、ユフィが好きなやつよ」

ティファが『とろける滑らかプリン』を手にとってヴィンセントに見せる。
甘い物が大好きなユフィが確かに好きそうなプリンだ。

「食後のデザートにどう?ユフィ、きっと喜ぶわ」
「そうだな、作って貰う礼も兼ねて買うとしよう」
「ヴィンセントはいいの?」
「私は・・・このコーヒーゼリーにしよう」

そう言ってヴィンセントはコーヒーゼリーを手に取ってカゴに入れた。
食べるのが楽しみだ。

「ヴィンセントってコーヒーゼリーをよく食べるわよね。他のデザートは食べないの?」
「甘すぎるのはあまり好きではないのでな」
「甘さ控えめだったら大丈夫なの?」
「それなりに。それがどうかしたか?」
「ううん、今度みんなでお菓子作る予定なんだけど、その中でヴィンセントだけが食べれないなんて寂しいじゃない」
「私の事は気にしなくていい」
「気にするわよ、仲間なんだから」

こうして気にしてくれるのは嬉しい。
嬉しいが、本当にお菓子を作る為にヴィンセントのお菓子の好みを聞いただろうか。
なんだか引っかかりを覚えるがティファにはきっと勝てそうもないのでこれ以上は追及しない事にした。

レジで会計を終え、天ぷらそばの材料を購入するミッションを遂行したヴィンセントは途中までティファと家路を辿っていた。

「今日は付き合ってもらってすまなかった。今度何か礼をしよう」
「いいのよ、気にしないで。大した事じゃないわ。それよりもユフィとの天ぷら作り、成功するといいわね」
「ああ。ユフィは得意だと言っていたし、きっと大丈夫だろう」
「フフフ、そうね。あ、私こっちの道だから」
「セブンスヘブンまで送る」
「そこまでしてくれなくても大丈夫よ。危ない道って訳でもないし。
 それにヴィンセントの方が荷持抱えてて大変じゃない。だから気にしないで」
「・・・では、その言葉に甘えるとしよう」
「じゃあね、ヴィンセント」
「ああ、気をつけてな」

ティファと別れ、一人家路を黙々と辿っていく。
頭に浮かぶのは天ぷらそばのこと。
ユフィが来て、ユフィが作って、作り方を教えてもらう。
その後はデザートタイムだ。
今日買った丼やプリンをユフィは喜んでくれるだろうか。
いや、ティファが選んでくれたものだ、喜んでくれるに違いない。
柄にもなく天ぷらそばを食べる日を楽しみにしながらヴィンセントはマンションに到着するのであった。











END
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