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□ホームセンターに行きたい
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壁際に寄せられている、新しく購入したフカフカのベッド(ユフィ一押し)に座りながらヴィンセントはある一点を見つめていた。
それはテレビと冷蔵庫の間の空間。
微妙にスペースが出来ていて勿体無い。
何か置こうと思うのだが、やはりここはメタルラックが適任だろう。
しかし部屋の風景を考えると木製の棚も捨てがたい。
だが、木製の棚はベッドの上方、窓の横に置いて本棚にしようと思っている。
さてどうしたものか。
両方木製の棚にするか、それとも本棚だけ木製の棚にするか。
寸法を記したメモを見つつ睨めっこをしていると、ピンポーン♪という軽快なチャイムが鳴って来客を報せる。
ヴィンセントはメモをポケットに入れるとカバンを持って玄関に向かった。

「よっ!ユフィちゃん只今到着!!」

玄関のドアを開けば春色の可愛らしく、動きやすさを重視したようなホットパンツ姿のユフィが太陽を思わせる笑顔を覗かせる。
ユフィの格好と笑顔からなんとなく春が来たという感じがした。

「行くか」
「うん!」

大きく頷いてユフィはヴィンセントと共にホームセンターへと足を運んだ。
最近エッジで大型ショッピングモールが新しく建ち、毎日沢山の人が買い物に来ている。
それは我らがリーダーであるクラウド一家は勿論のこと、エッジにアパートを借りているユフィも通っていたりする。
軽いテーマパーク感のあるショッピングモールは何度来ても飽きない。
そんな所に到着したヴィンセントとユフィは早速カートにカゴを二個乗せて店の中に足を踏み入れた。

「二個もいるのか?」
「二個目のカゴはアタシが使う予定」
「お前も何か買うのか?」
「洗剤とかゴミ袋とかね。心配しなくても会計は別でやるからいいでしょ?」
「それは勿論構わないが」
「そんじゃ、早速棚見に行こ!」

軽く拳を天井に向けて振り上げ、ユフィはカートを押し始める。
ゴロゴロゴロゴロゴロというカートを押す度に店内に響くキャスターの音が意外にも大きくてなんだか騒がしくしてるようで申し訳なくなるが、周りも似たようなものなので次第に気にしなくなった。
ペット用のカートに愛犬を乗せている客のカートに目を奪われつつユフィがヴィンセントに質問をする。

「どんな棚にすんの?」
「メタルラックか木製の棚を考えている」
「ふーん、いくつ買うの?」
「二つだ」
「二つともメタルラックにすれば?ちょっと高いけど後から追加出来たり段差調整出来るしさ」
「それは確かにそうだが、部屋の景色を考えると木製の棚も捨てがたくてな」
「まぁ、そういうのもいいけどいつか引っ越す時とか捨てる時とか処分に困るよ?」
「捨てる時は確かにそうだが、この先また引っ越しをするとは思えないな」
「あるかもよー?好きな人が出来てその人と一緒に住むってなった時に引っ越すかもしんないじゃん」
「そんな日が来るとは思えないが」
「来るの!好きな人出来るの!!」
「何故お前がムキになる?」
「っ!」

突然怒り出したユフィに内心驚きながら聞いてみると、ユフィはしまったという顔をして慌てて取り繕い始めた。

「とと、とにかく!今時は処分する時とかの手間も考えないと駄目なんだよ!そりゃ無理にとは言わないけどさ!」
「処分の手間か・・・それはあまり考えていなかった」
「ゴミ捨て場持ってくのとか大変だぞ〜?業者に来てもらうにしてもたかだか棚一個の為に金払うのも馬鹿らしいし」
「・・・そう言われると解体しやすいメタルラックでいい気がしてきたな」
「色々アレンジもしやすいしね」

そんな事を話しながら洗剤売り場を横切る。
様々な種類の洗剤が並ぶ中、半額商品の洗剤を見つけるなりユフィはそれを二個ほど手に取ってカゴに放り込んだ。

「ヴィンセントは洗剤いいの?」
「ふむ・・・買っておくか。ユフィが買ったこの洗剤はいつもより安いのか?」
「うん、超お得」
「ならば同じのを買おう」
「拘りとかないの?」
「汚れが落ちて洗えるならそれでいい」
「へー、なんか意外」
「拘っている所が想像出来るか?」
「うーん・・・出来ないや」

ひひひ、とユフィが笑い、ヴィンセントも微かに笑って洗剤をカゴの中に入れる。
そうして洗剤コーナーを後にした二人は、今度は洗濯ピンチなどが置かれているコーナーの前を通りかかった。
ユフィはカートをそのコーナーに向けるとヴィンセントに言った。

「あ、ごめん、ちょっと洗濯ピンチ見てっていい?」
「ああ」

ガラガラとカートを押しながらユフィはハンガー系のピンチの前に来るとあれでもない、これでもないと数種類のピンチを見比べ始めた。
なんだかその姿が主婦のように見えてきて、そういえばユフィも一人暮らしをしているのだと思い出す。
ヴィンセントからしてみればまだまだ子供とはいえ、少なくとも16歳の時から一人暮らしをしていればしっかりしてくるというもの。
するとこうした主婦っぽさにすとんと納得がいった。

「これでいいや。あ、ティッシュなくなりかけてたんだった。ティッシュのコーナー行っていい?」
「ああ」

ユフィの主婦っぷりをもう少し見たくてヴィンセントはユフィと共にティッシュのコーナーへと足を運んだ。
その後も色々なコーナーに寄っていき、漸くメタルラックのコーナーに到着する。
大小様々な大きさのメタルラックが置かれており、ついつい目移りしてしまう。
少し歩いて手頃な大きさのを見つけたヴィンセントが立ち止まった。

「この辺にありそうだな」
「寸法はどんなん?」
「大体こんな感じだ」

「あ、ユフィとヴィンセントじゃない」

聞き覚えのある声がして振り返ると、メモを持ったティファとカートを押しているクラウドがそこに立っていた。
ユフィはティファの元に駆け寄ると早速冷やかしを始めた。

「ティファにクラウドじゃん!二人仲良くホームセンターで買い物なんて益々夫婦らしいね〜」
「も、もう!茶化さないの!そういうユフィだってヴィンセントと買い物に来てるなんてもしかしてデー―――」
「わーわーわー!!そ、それよりマリンやデンゼルはどーしたのさ!?」
「バレットが屋上遊園地に連れてってくれてるの。で、私達はその間にお買い物してるってわけ」
「へ〜、バレット帰ってきてたんだ?」
「一昨日ね。そういえば知ってる?今日サランラップが特売なのよ」
「マジで!?」

仲良くお喋りする二人をそのままにヴィンセントはクラウドと会話をする。

「世界を救った英雄もやはり人の子か」
「アンタも変わらないだろ?こんなメタルラックコーナーなんかに来て」
「フッ、確かにな」
「それにしてもユフィと来てるなんて珍しいな。どういう風の吹き回しだ?」
「ユフィがついて行きたいと言ったから呼んだまでだ」
「へぇ、ユフィが」
「私のメタルラックを買いに来たついでに自分の日用品を買っていっているがまるで主婦のようだぞ」
「・・・想像出来ないな」

「なんか言ったチョコボ頭!?」

「なんでもない」
「買い物もいいが、デートはしなくていいのか?」
「ここに来る前に充分楽しんださ。服を見たり喫茶店で休憩したりな」
「抜け目がないな」
「貴重な二人っきりの時間だからな。堪能しなくてどうする」
「違いない」

そんな風に二人で静かに言葉を交わしているとユフィとティファの方で話しが終わったらしく、別れる事となった。
別れ際にティファがユフィに何かを耳打ちした事によって途端にユフィは顔を真っ赤にし、ティファに怒ったような素振りを見せる。
しかしティファはクスクスと綺麗に笑ってクラウドと共にさっさとその場を立ち去ってしまった。

「ったく、ティファってばホントに・・・」
「何を言われたんだ?」
「べ、別になんも言われてないよ!!それより早くラック買うよ!!」

ヴィンセントからメモをひったくり、ユフィはメタルラックを探し始める。
耳まで顔を赤くしていたが、雰囲的に聞き出せそうな感じでもない
結局内容を聞けないまま買い物は終了した。
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