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□引っ越ししたい
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そして引越し当日。
引越し業者に荷物を引き取って貰ったヴィンセントはユフィと共に電車に乗って引越し先のマンションへと向かった。
電車に乗っている最中、ユフィが持っている紙袋が気になってヴィンセントは尋ねてみた。

「ユフィ、その紙袋は?」
「ん?これ?エヘヘ、気になるでしょ?引っ越ししてからのお楽しみだよ!」

まるで悪戯を企んでいる子供のような笑みを浮かべるユフィ。
しかしそこには照れのようなものも見え隠れしていて嫌な予感はあまりしない。
一体何を持ってきたのだろうとぼんやり考えながらヴィンセントはユフィと共に電車を降りてマンションを目指した。
マンションには引越し業者よりも早く到着し、二人は部屋の中で業者を待つ事にした。
部屋の中は綺麗で前のアパートよりも広く、そして明るい。

「広いワンルームだね」
「すぐに狭くなる」
「棚とか買うの?」
「そのつもりだ・・・お前も行くか?」
「もっちろん!」

ユフィが言うであろう言葉を先に言うとユフィは元気よく頷いた。
ホームセンターなどでブラブラ探すつもりで、退屈かもしれないがユフィもそれは承知の上だろう。
それでもユフィが行きたいというのなら止はしない。
そんな事をつらつらと考えていると引越し業者がやってきて瞬く間にダンボールを部屋に置いて行った。
しかしダンボールの数が少ない事もあって廊下や部屋がダンボールで埋まる、なんて現象が怒る事はなかった。

「さ、片付けられる物と片付けられない物、すぐ使う物に分けよっか」
「その前に少しいいか?」
「ん?」
「先程の紙袋の中身は何だ?」
「ああ、あれ?えっとねー・・・」

ユフィは紙袋をガサガサと漁ると、ラッピングされた小さめの箱を取り出す。
そしてそれをヴィンセントの前に差し出した。

「はい」
「・・・私にか?」
「そ!引っ越し祝いだよ!」
「開けても?」
「いいよいいよ、開けて!」

ユフィから箱を受け取り、丁寧にリボンを解いて包装紙を止めるテープを剥がす。
すると茶色の箱が顔を出し、そっと蓋を開けてみると・・・チョコボに乗ったモーグリの置物が姿を現した。
チョコボの背の上でモーグリは腕を天に向けて広げており、手には銀色のクリップが握られていた。

「・・・メモスタンド?」
「可愛いっしょ?インテリアにもなるんだよ。ヴィンセント、インテリアとか持ってないって言ってたからどうかなって思ってさ」

忙しなく視線を彷徨わせて頬を掻きながら、ユフィははにかむように笑って言った。
この間のインテリアを持っていないという話を覚えていて、そして気遣って買ってきてくれたのだろう。
ヴィンセントの生活が少しでも彩られ、豊かになるようにと。
そんなユフィの優しい気遣いにヴィンセントの心は温かくなり、彼に自然と笑顔を浮かべさせた。

「・・・ありがとう、ユフィ」
「うん!」

この日から殺風景なヴィンセントの部屋をチョコボとモーグリのメモスタンドがささやかながらも彩り続ける事となった。












END
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