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□キングとデート
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晴れ渡る青い空。
悠々と浮かぶ白い雲。
初夏の白い日差しが眩しいけれどつばの広い麦わら帽子という立派な騎士が紫色の慧眼を守っている。
更にノースリーブの白のワンピースの下に濃いめの水色のキャミソールを着ている少女の見た目はとても涼し気だ。
本人としてはデニムなどを好むのだが、デートなのだからと妹達に勧められて白のワンピースを着る事になったのだ。
デートと言っても散歩のようなものだからそこまで気合いを入れる必要はないのだが、それでも涼しくて今の気分には丁度合っているので良しとする。

「どこに連れて行ってくれるんだ?」

一歩前を歩く白のポロシャツの背中に尋ねる。
昨日の夜、予定を空けておけとしか言わなかった仏頂面を思い出す。
どこに行くかは教えてくれなかったが多分大した所に行く訳じゃないだろう事は雰囲気で分かった。
それなのに妹達がデートだと騒ぎ立てた時は参ったものである。
キングは欠伸をしながら片手で肩を抑えて首を回すと一言。

「サボテンダー展覧会」
「は?」
「サボテンダー愛好家たちが制作した様々な形で表現したサボテンダーが見れる」
「様々な形で表現って何だ?」
「彫刻、粘土、ビーズ、ペーパークラフト、デザートや食べ物など多岐に渡る」
「・・・最近お前が洗脳したエイトと行って来たら良かったんじゃないか?」
「布教と言ってくれ。エイトは今日は任務に行っている。俺も行けるのが今日しかない」
「だからって何で私を連れて行くんだ」
「お前にも布教してやろうと思ってな」
「謹んで断るよ」
「そう言うな。サボテンダーのコスプレシリーズアクリルキーホルダーで好きなの一つ買ってやるぞ」
「いやぁいらん」
「分かった、アクリルスタンドで手を打とう」
「グッズの問題じゃないぞ」
「くっ、欲張りさんめ。サボテンダーの団扇で満足か!?」
「何でそれで私が頷くと思ってるんだお前は」

口では呆れた風に、けれど表情は初夏の日差しと同じくらい明るくおかしそうにセブンは笑う。
いつもぶっきらぼうで口数少ない癖にこうやって時々子供っぽい事を言うのは不意打ちでズルい。
けれどこんな調子の時のキングにはセブンは自然とワガママが言えるのだ。

「私を懐柔したいなら美味しい物の一つや二つ奢るんだな」
「いいだろう。サボテンダーのお子様ランチとサボテンダーパフェを奢ってやろう」
「お子様ランチとか舐めてるだろ」
「安心しろ、サボテンダー展覧会で提供されるお子様ランチに年齢制限はない」
「どこに安心を覚えればいいんだ」
「約777種類あるとされるサボテンダーの旗集めに協力してくれ」
「無駄に多いな。そして結局はお前の思う壺か」
「ちなみにパフェにも旗が付いてくるぞ」
「もういい、それでいい。ちなみにパフェの味は何だ?抹茶か?ゴーヤか?」
「メロンだ」
「サボテンダーをイメージするには色が薄くないか?」
「都会デビューする為に脱色したサボテンダーがテーマの人気デザートだ」
「サボテンダーにとっての都会デビューは脱色なのか・・・」

どうやって脱色するのだろうかとあれこれ想像してみるがしっくりくる答えは見つからない。
見つからなくても何ら困らないが。
それよりも味がメロンとなれば話は別だ。
メロンパフェが食べられるならキングの為に旗の一本や二本、貢ぐくらい何て事はない。
むしろ安いくらいだ。

「土産になるような物は売ってるのか?」
「サボテンダー饅頭、クッキー、チョコ、煎餅、何でもあるぞ」
「土産選びには困らなさそうだな。私はゆっくりご飯とパフェを食べた後にのんびり土産屋を覗いてるからお前は展覧会を楽しんで来るといい」
「待て、何の為にお前を連れて来たのか分からなくなるぞ」
「いいんじゃないか?分からなくて。私は美味しい物を奢ってもらえて満足だという事実があればそれでいいと思うが」
「いいやダメだ。お前にも立派なサボテンダー愛好会になってもらうぞ」

キングはぶっきらぼうにセブンの手をガッと握る。
しかしズンズンと前を歩くのでやっぱりセブンの目に映るのは白のポロシャツの背中だった。
でも子供っぽくて無邪気な彼の背中を見るのが好きなのでセブンはわざと引っ張られて歩くのだった。





END
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