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□お弁当
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お昼のWPOの食堂。
色んな隊員たちが食堂のご飯を求めてやって来るこの場所。
今日も今日とて沢山の人で賑わう食堂にキング・アーヴァイン・ヴィンセントの三銃士も入ろうとしていた。
すると―――

「きょーおはユウナの手作りべんと〜♪」
「きょーおはガーネットの手作りべんと〜♪」
「普通に歩け!恥ずかしいだろ!!」
「落としても知らないぞ」
「弁当か・・・マザーの手作り弁当、最後に食べたのはいつだっけな」

可愛らしい弁当包みを両手で高く上げて片足でクルクルと回転しながら移動するティーダとジタン、それにツッコミを入れるクラウド、そして呆れるスコールと記憶を掘り起こそうとするエースが目の前の廊下を横切って行った。
その姿が完全に見えなくなってからアーヴァインが羨ましそうに小さく溜息を吐く。

「いいな〜手作り弁当。僕もセフィに作って欲しいよ」
「・・・逆転の発想でお前がセルフィに弁当を作ってやるというのはどうだ?」

珍しくヴィンセントから提案してきてアーヴァインは僅かに首を傾げる。

「へ?僕が?セフィに?」
「手作りをしたから味見をしてくれ、など適当に言って食べてもらうんだ」
「あ、そうか!胃袋を掴む作戦ね!さぅすがヴィンセント〜!」
「アーヴァインは料理は出来るのか?」
「舐めてもらっちゃ困るな〜キング。僕も料理くらい出来るよ〜。でも僕一人でやるの恥ずかしいから二人も弁当作ってやろう?ヴィンセントはユフィに作って、キングはセブンに作ってさ〜」
「言い出したの私だしな、いいだろう」
「・・・」

ヴィンセントは頷いたがキングは腕を組んで眉根を寄せた。
その様子にアーヴァインはまたも首を傾げて何事かと尋ねる。

「どーしたのキング?料理嫌?」
「いや・・・お菓子作りは何度かした事はあるが弁当を作った事はないと思ってな」
「あ、そうなんだ〜」
「弁当はいつもマザーかセブンたちが作っているからな。あまり弁当のノウハウを知らないんだ」
「そんなに難しく考えなくて大丈夫だよ〜。作る相手の好きな物を考えて作ればいいんだからさ〜」
「相手の好きな物か、なるほどな・・・だが、これくらいのお弁当箱におにぎりを詰めるのは絶対なんだろう?」
「変に知識が偏ってるね」
「私がユフィから聞いた漫画によると、おにぎりと弁当箱は別だろう、というツッコミがあったらしい。実際私も確かにそうなのでは、と思った。おにぎりはおにぎり、弁当箱は弁当箱なのではないかとな」
「お重にして別々に詰めるならまだしも、小さな弁当箱にラップをして詰めるくらいなら弁当箱の外に出して空いた分をおかずを入れるスペースに割いた方がより沢山のおかずを―――」
「はーい!話が長くなるからこの辺にしようね!!」

始まりかけた議論をアーヴァインは強引に打ち切り、それぞれで手作り弁当を作ってくる事に決まった。












さて、手作りの弁当を作る事になったキングは手始めに材料調達をするべくスーパーに立ち寄った。
自宅の冷蔵庫の材料は使えなくもないが、クイーンやセブンが鮮度を考えて計画的に使っている為、変に手を出して二人の計画を狂わせるのは些か申し訳ない。
それだったら自分で買ってきて余ったら夕飯の材料に足してもらう方がまだマシだ。
そんな訳でキングは買い物カゴを片手にスーパーの中を彷徨い始める。

(セブンの好きな物か・・・)

セブンは基本、好き嫌いのない人間なので苦手な食材を考える必要はない。
しかしだからと言って好きな料理がすぐに思いつくかと言われればそうでもないのだ。
外食した時に注文する料理はその時その時で違っていて決まったものなどないし、夕飯のメニューもクイーンやサイスと共にみんなのリクエストに応えながら作っているので、セブンの好きなおかずを優先的に作っている事なんてあまりなさそうだ。
それかそのリクエストの中にセブンの好きなおかずがあるのだとしたら、その中から探り当てるのは中々の至難の業である。
もっとも、好きなおかずがカレーやシチューなどといった汁物であった場合はお手上げなのだが。

(こうなれば作戦変更だ。出でよ、クッキングパッド!)

キングはスマホでクッキングパッドを検索した。
弁当のレシピで探してみると膨大な数のレシピがズラリと画面いっぱいに並ぶ。
内容はからあげやハンバーグなどのオーソドックスなおかず、何やら聞いた事のない凝ってそうなレシピまで様々だ。
さて、どれにするか。

(凝ったものを作ってみたい気もするが慣れないものを作って失敗するのは恰好がつかないな・・・あまり使わない材料を余らせて腐らせるのも勿体ない・・・やはりオーソドックスなおかずにするか)

危ない橋を渡るよりも安全な橋を渡ろう。
それにオーソドックスなものを作れなくて凝ったものなど作れる筈もない。

(そうと決まれば定番中の定番のおかず、みんなの人気者ハンバーグを作るとしよう)

ハンバーグ程度のものなら自分も作った事がある。
最近だってサイスに手伝えと言われて肉を捏ねて両手で交互に投げて空気を抜いた。
それにハンバーグヘルパーの箱におおまかな作り方などが書かれている筈だからいざという時はなんとかなるだろう。
なんならインターネットという最強にして最高の武器がある。
星の数ほどある情報の中から正確な情報を見つける力を問われるが、まぁ料理くらいの情報ならそこまで苦労する事もないだろう。

(初めてハンバーグを作ったのは子供の頃か。マザーと一緒にみんなで作ったな)

脳裏に浮かぶのは幼き日の頃、マザーを中心にみんなでキッチンに立って肉を掌サイズに掬って空気を抜き、焼いた。
たったそれだけの作業をするだけなのにナインやシンクやジャック辺りなんかはエプロンや顔まで汚れていた。
一番形が良かったのはクイーンとデュースだったか。
最初のハンバーグを捏ねる工程はマザーに変わってエイトがやっていたな。
結局まだ力が足りなくてマザーが仕上げに捏ねたのだが。
他にもみんなでスープを作ったりサラダを作ったり・・・色々楽しかった。
今はマザーもそうだし自分たちも仕事が忙しくて一緒に料理なんて出来ないが、提案したらみんな都合を合わせてくれるだろう。
マザーにも負担をかけてしまうのが申し訳ないがそれでもお願いはしてみようと思う。
そんな事を考えながらキングは一番小さいサイズのひき肉をカゴの中に放り込んだ。

「む、シャウェッセンのウィンナー・・・!」

大好きなウィンナーメーカーの特売に気付いたキングは何の迷いもなくそれらを三セットほどカゴに放り込んだ。
このウィンナーは二袋で一セットの販売なので、つまり合計六袋の購入となる。
一袋は勿論セブンの弁当に、残りはおやつや夕食に、だ。
ちなみに調理方法は切れ目を入れて焼くだけ。
でもこれが美味しい。

(後は何を作るか)

再びクッキングパットを開いて次なるおかずのメニューを探す。
見た目的にも美味しそうなおかずがより取り見取りだが作る手間はともかく材料の用意が果てしなく面倒だ。
聞いたこともないような材料を使って万が一にも口に合わない・失敗したとなってはあまりにも格好悪く情けない。
それにセブンの事だ、たとえそれを口にしても気を遣って美味いと言ってくれるだろうがそれは男のプライドが許さない。
だからここは手堅く・・・

(卵焼きにするか)

多少形は崩れるかもしれないが失敗する事はまずないだろう。
それにハンバーグやウィンナなどの肉類を入れるからバランスを取ってあっさりしたおかずを作らなければ胃もたれを起こしてしまう。
そう、これもセブンを考えての事であって決して逃げではないのだ。
そんな事を自分に言い聞かせながらキングは今度は野菜コーナーへと足を運ぶ。
バランスの取れた弁当に野菜は必須。
レタスは家にあるものを一枚くらい使っても問題ない筈。
なのでプチトマトを買って敷いたレタスの上に二つか三つほど置くしよう。

「このくらいで何とかなるか」

キングはカゴの中身をもう一度確認してからレジに進むのであった。
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