テーマ倉庫

□お買い物
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「お?何だこれ?」

底がやや深い掌サイズのフライパンを見つけてナインはそれを手に取って眺める。
フライパンと言っても全身赤・青・緑のどれかの色で彩られている物で、子供のおままごと用のオモチャのようにも見えるが、貼り付けられているシールを見るとどうやらそうでもないようで。
シールの説明によると、この小さなフライパンは目玉焼きを作る為の物であるようだ。

(ハンバーガーみたいに厚みのあるあの目玉焼きを作る用か?)

ナインは頭の中でファーストフードのハンバーガーに挟まれてるような綺麗に丸くなっている目玉焼きを思い浮かべた。
きっとああいった物を家でも作るれるようにする為の物なのだろう。
しかし思い浮かべるのは・・・

(ちっちぇエイトにお似合いだな)

男兄弟の中で一番背が低いエイトがこれを使う所を想像してナインは肩を震わせて笑う。
本人に話したら不機嫌な顔をするだろう事も考えて尚更おかしくなった。

「お、こっちはジャックがよく使ってる奴だなオイ」

ショーケースの中に置かれている砥石を見つけてナインはそれを眺める。
ジャックはいつも散らかっている部屋の真ん中で砥石やその他の道具を広げて使っている刀を研いでいる。
その場面をクイーンやセブンに発見される度に部屋を片付けてからやれと言われているのだが。

「お待たせ、ナイン。砥石なんか見てどうしたの?」

袋を持って戻って来たティファの方を振り向いてナインは先程まで思い出していた事を話した。

「いや、ジャックがこれ使ってよく刀を磨いてたのを思い出してよぉ。
 アイツ部屋散らかってる所にこれも広げるもんだからいっつもクイーンやセブンに怒られてんだぜコラァ」
「ふーん。そういうナインは片付けられてるの?」
「おうよ!ドアからベッドまでの道は片付いてるぜコラァ!」
「それ以外は片付けられてないって事じゃない!」

ティファは吹き出してまた笑いだす。
この分だときっとナインもジャック同様、クイーンやセブンに怒られている事だろう。
それなりに笑いが収まった所でティファはスマホで時計を確認するとナインに昼食の提案をした。

「少し早いけどお昼しない?12時丁度にレストランに入ったら混んじゃうし」
「おう、そうだな!」
「ナインは何食べたい?」
「勿論肉だぜコラァ!」
「お肉ね。だったら『ハンバーグストリート』に入ろっか」
「ティファも肉でいいのか?俺に遠慮しないで食べたいもん言っていいんだぜオイ?」
「私もハンバーグが食べたい気分だったから大丈夫よ。さ、行きましょう」

ニッコリと微笑んでティファは先を歩いて行く。
本音なのかナインを気遣ってなのかは分からないがそれでも上手に合わせられるティファは凄いなと思った。

(ありゃクラウドも惚れる訳だぜ)











楽しく昼食を終えたナインはその後、食料品コーナーに足を運んでティファの買い物に付き合った。

「ナインは確かコーラが好きよね?」
「おう、大好きだぜコラァ」
「じゃあ―――」

冷蔵ケースの扉を開けるとティファはコーラを一本カゴの中に入れた。

「オイオイティファ!別にいいってそんなもん!」
「お買い物に付き合ってくれたし荷物も持ってくれてるじゃない。だからそのお礼よ」

ティファの言う通り、ナインはティファが買った調理用品を手に持っていたし、何なら食料品も持ってあげると宣言した。
それでも大した事じゃないと言ってもティファは聞かずにそのまま他の食料品と一緒に会計を済ませてしまった。

「いいのいいの、今日はナインのお陰で楽しいお買い物になったから」
「そーか?」
「そうよ」
「・・・なら、コーラご馳走様だぜコラァ!」
「うん!じゃあ帰ろっか」
「おう!」

食料品の入った袋を抱えてナインはティファと共に電車に乗ってクリスタル横丁に帰るのであった。





電車に揺られている短い時間も二人は楽しくお喋りしていた。
そして改札を出ると―――

「それでケイトの奴が・・・うおっ!?」
「どうしたのナイン?・・・って、クラウド?」

改札口を出てすぐ、駅の大きな柱の陰から凄まじい殺意と嫉妬の炎を燃やしたクラウドがナインを睨み殺す勢いで呪詛を吐いていた。

「ティファと楽しくしやがってティファと楽しくしやがってティファと楽しくしやがってティファと楽しくしやがって・・・」
「クラウドオメー、めちゃくちゃこえーぞオイ!」
「ティファと楽しく買い物に行って調理器具コーナーで二人で器具を選んで一緒にお昼ご飯を食べて
 スーパーで一緒に買い物をして荷物持って帰りの電車で楽しく話をして家まで送って行く役目を奪いやがってこの野郎・・・」
「お前何で今日一日の俺たちの行動知ってんだよ!こえーなんてもんじゃねーぞコラァ!!」
「落ち着てクラウド!ナインは今日たまたま会って買い物に着いて来てくれただけなんだから!」
「・・・・・・俺も行きたかった」
「でもクラウド、今日はお仕事だったでしょ?」
「・・・でもティファと一緒に行きたかった」
「じゃあ次からは連絡するわ。また行く用事が出来たら一緒に行きましょう?」
「ああ。ナイン、さっきは悪かった。ティファの荷物は俺が持つから渡してくれ」
「おう」

ティファと約束を取り付けた途端に機嫌が良くなったクラウドに内心半ば呆れながらナインは荷物を渡す。
が、その直後に食料品を入れた袋の中からコーラを取り出した。

「そのコーラは?」
「今日の礼つってティファが買ってくれたんだぜコラァ」
「本当に今日はありがとうね、ナイン。色んな話が出来て楽しかったわ」
「おう、またな!」

チラリとクラウドの方を見やれば、悔しそうな視線を突き刺す勢いでナインにぶつけてきていた。
どうやらお礼のコーラを貰った事や楽しくお喋りをしたのが相当気に食わなかったらしい。
しかしそこは気の強いナイン、最大限のドヤ顔をかましてクラウドを見送ってやった。
その後、コーラを飲みながら二人が歩いて行ったのとは反対方向の道を歩いて帰るナイン。
すると、その帰り道でスーパーから帰って来たらしいクイーンとサイスに会った。

「あら、ナイン」
「丁度良い所にいたじゃねーか。荷物持て」
「面倒な所に居合わせちまったぜコラァ」
「いいからさっさと持て」
「へいへい」

めんどくさそうな顔をしながらもナインは二人から買い物袋を受け取る。
コーラは適当な袋の中にしまった。

「ナインは今日はどこに行っていたの?」
「ティファと電車に乗ってショッピングモールだぜコラァ」
「ティファとショッピングだとぉ!!?」

ナインを真ん中に挟んで歩きながら話していると、隣にいたサイスが驚いて悔しそうな顔をした。
その顔は先程のクラウドに似ていると内心思いながらナインも驚いたような反応を示す。

「うおっ、何だよ急に大きな声出してよぉ」
「何でお前みたいな奴がティファとショッピングに行ってんだよ!!」
「あぁ!?俺がティファとショッピングに行っちゃいけねーのかよゴラァ!!」
「やめなさい二人共!公道で大声で喧嘩するなんてみっともないですよ!」

怒ったクイーンが二人の間に割って入って引き離す。
こうなってしまうとナインはクイーンに勝つ事が出来ず、不満な表情を浮かべたまま引き下がる。
対するサイスはナインに抜け駆けをされたような気持ちになって悔しくて堪らなかった。

(くそっ、ティファ!何でアタシを誘ってくれなかったんだ!アタシ今日フリーだったのに・・・!)

強く握った拳が悔しさからわなわなと震える。
今度の料理教室の時に約束を取り付けよう、そうしよう。
しかしそう決めたサイスがクラウドと衝突するのだが、それはまた別の時にでもしよう。

「ナイン、ショッピングモールでティファと一緒に何を見て来たの?」
「調理器具コーナーで入れもんとか道具を見て来たぜぇ。それでいい事聞いたんだぜコラァ」
「いい事って?」
「ゼネコンっていう材質で出来たヘラを使うとチャーハンとか作る時にあんまりくっつかないらしいぜオイ」
「ゼネコン・・・?」
「シリコンの間違いだろ」
「あ〜そうだ!シリコンの間違いだぜコラァ!」
「これだからバカは・・・」
「フフフ、ナインらしいじゃない。でもそうね、シリコンのヘラは興味がありますね。今度買いに行こうかしら」
「そんときゃ俺も一緒に行ってやるぜコラァ」
「ありがとう、ナイン。サイスはどう?」
「アタシはいいよ、家で留守番してる」
「ピンポン鳴っても出るんじゃねーぞ」
「ガキ扱いすんな!」
「はいはい、喧嘩しないの」

そんなやり取りをしながら仲良く帰る三人なのであった。











END
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