小ネタ

□膝枕
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スコーンが焼けるまでの間、リノアはティファの膝枕に甘えていた。

「ティファの膝枕、良い匂いがしてあったか〜い」
「そう?」
「そうだよ〜。余は満足じゃ」
「フフフ、お褒めに預かり光栄であります」

二人の子供のようなやり取りをサイスはやや呆然と眺める。
なんと言えばいいのか分からないし、どう割って入ればいいのか悩んでいるのだ。
そんなサイスを察してリノアが誘いを掛けてくる。

「サイスもどう?一緒にティファの膝枕で寝ない?」
「アタシは別に・・・」
「はい、半分どーぞ」
「いやどーぞってお前なぁ・・・ティファの許可なく勝手に決めるなよ」
「私は全然いいよ。おいで、サイス」

優しい微笑みに優しい声音。
こんな風に許しを得ては従いたくなってしまう。
クラウドが見たら鬼の形相で嫉妬してきそうだが奴は今日はいない。
なのでサイスは遠慮なくティファのもう片方の膝の上に頭を乗せた。
すると、フワリとした甘い香りと柔らかな弾力を持った太腿がサイスを迎えた。
なるほど、これはリノアが甘えたくなる訳だ。

「気持ち良いでしょ?ティファの膝枕」
「ああ、そうだな。しっかし、膝枕なんて何年ぶりだろうな」
「ドクターにしてもらってたの?」

ティファが尋ねるとサイスは「ああ」と頷いて、遠い瞳で幼い頃を見つめながら語り始めた。

「小さい時はさ、みんなでマザーの膝枕を取り合ってたんだ。それでいつもいつも喧嘩しててさ。
 マザーの膝取るのに必死でエースとかエイトとかよく泣かしてたよ」
「エースとエイトかわいそ〜」
「ナインだって泣かしてたんだぜ?そんでその度にセブンやキングに怒られてた。曲者はジャックとシンクだったね。
 あの二人ときたらいつの間にかマザーの膝を占領してるんだ。しかも中々動かない」
「意外に二人共手強かったんだね」
「あぁそうだ。緩い顔して意外にやるんだ。
 そんでデュースなんかはアタシらと同じでマザーの膝を取りたいけど周りに気を配る性格なもんだから
 自分が取れてもアタシらに泣かされたエースやエイトに譲ってたんだ。
 んで、それを見兼ねたセブンがデュースの手を引いて『今日は私とデュースがマザーの膝で寝る番だ』って言うんだ」
「ふ〜ん、セブンらしいね」
「でもそこにナインが無理矢理割り込もうとするとデュースがメチャクチャ怒るんだよ。
 『ダメです!今日は私とセブンさんがマザーの膝で寝るんです!割り込みは許しません!』ってな」
「デュースったら小さい時から頑固な一面があったんだね」
「そりゃあの頑固さは昔からさ。でなきゃ今でも時々あんな頑固さは発揮しないよ。
 他はキングとトレイがタッグを組んでマザーの膝を狙ったり、最終的にはクイーンが当番表を作ってたよ」
「クイーンも小さい時から真面目だったんだね」
「なんか可愛い」

小さいクイーンが一生懸命当番表を作る姿を思い浮かべてリノアとティファはクスクスと小さな笑い声を漏らす。
サイスもフッと笑うと続きを語り始めた。

「でもさ、小さいアタシらがそんなん大人しく従うなんてしないからさ、クイーンの奴が泣くんだよ。
 それをセブンとデュースが慰めてやって、ナインがクイーンに譲るんだよ」
「あのナインが!?」
「そうなんだよ。流石に可哀相だって言ってな。んで、ここにちゃっかりケイトが入ってきて
 『ホラ行こう、クイーン』って言ってクイーンの手を引っ張ってマザーの膝の上で寝るんだよ」
「ケイトも小さい時からちゃっかり者ね。喧嘩にならなかったの?」
「そりゃなるさ。でもケイトの奴は『うっさい!今日はもうマザーの膝はアタシらのだよ!』って言って譲らないんだよ。
 コイツも相当なくせもんだなってその時のアタシは思ったよ」
「あはは!でもいいなー、兄妹。私も欲しかったなー」
「私も。特に妹が欲しかったな」
「じゃあ私とサイスが妹になってあげる!ね、ティファお姉ちゃん!」
「あら、大きくて甘えん坊な妹だこと」
「アタシはパスな。兄妹は間に合ってるどころか余ってる」
「じゃあ・・・他人?」
「役割の分類が極端過ぎるだろ」

サイスのツッコミにリノアとティファが吹き出して小さく笑い出す。


スコーンが出来上がったのはそれから一時間してからの事であった。










END
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