オリジナル倉庫

□待たれる婚約指輪
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「こちらのサイズはどうですか?」
「まだちょっとキツイかな〜」

WROの衣装室にてユフィはシェルクに指輪の付け替えをしてもらっていた。
というのも近々潜入捜査で若夫婦の妻役を演じるからだ。
ちなみに旦那役はユフィが想い寄せるヴィンセント。
仮初でもヴィンセントと夫婦を演じられる嬉しさがある反面、やはりその『仮初』という言葉が引っ掛かって素直に喜べない自分もいた。

「偽物の夫婦か〜」
「偽物だろうと夫婦を演じるのですから思う存分スキンシップしたりイチャイチャしてきたらどうですか?」
「任務でそれどころじゃないって」
「それもそうですね。それに普段のユフィの振る舞いを考えると冗談に思われて軽く流されてしまう可能性が高いです」
「だよね〜」
「焦らず慌てずじっくり攻略していきましょう。私でよければいつでも相談に乗ります」
「ありがと〜シェルク〜!今度シェルクの奢りでパフェデートしよ〜!」
「奢りはしませんがパフェデートはOKです。ところで指輪のサイズはどうですか?」

抱き付きながらちゃっかりした事を言い放つユフィを軽く流しながらシェルクは指輪のサイズの確認をする。
パッと離れたユフィは左手の薬指に嵌められたサンプルの指輪を眺めながら軽く頷いた。

「バッチリだよ。丁度良い!」
「分かりました。では当日はこのサイズの指輪を用意してもらうように手配します」
「ヨロシク〜!アタシこれから上がりでティファの店に行くけどシェルクもどう?」
「行きます。ユフィの奢りでパンケーキ食べたいです」
「パフェ奢ってくれないから奢らないよ〜だ」
「やはりそうきましたか。とりあえず今からこれを申請してきますのでロビーで待っててくれませんか?」
「んー、分かった。んじゃぁ後でね」

そう言い残してユフィは先に部屋を出て行き、シェルクも指輪のサイズをメモに書くとそれをポケットに入れて衣装室を後にした。
それからものの数分で備品申請を終えてクライアントのいる休憩室へ。
胸ポケットからサングラスを取り出すとそれをスチャ・・・とかけて赤マントの男の向かいの席に座った。

「依頼通り、指輪のサイズをメモしてきました」
「ご苦労だった。報酬だ」

シェルクは先程ポケットにしまったメモを取り出すと、すす・・・とそれを赤マントもといヴィンセントの前に差し出し、ヴィンセントも懐から茶封筒を取り出してシェルクの前に差し出した。
中身はスイーツビュッフェ招待券二枚だ。
ユフィの指輪のサイズを確認する見返りにシャルアとスイーツビュッフェに行く為に要求したものだ。
茶封筒の中身を覗いてそれが本物であると確認するとシェルクは静かに頷く。

「確かに受け取りました」
「一つ聞きたい事がある」
「答えられる範囲でなら」
「何故毎回サングラスをかける?」
「その方が雰囲気が出るからです」
「・・・そうか・・・」

納得がいったようないかないような表情で呟くヴィンセントをそのままにシェルクは茶封筒をポケットにしまうと話題を変えた。

「婚約指輪、いつ渡すんですか?」
「・・・時期を見てからだな」
「見過ぎてユフィが他の誰かと結婚するのを見送る事にならないように気を付けて下さい」
「同じ轍は踏みはしない」
「ならいいですけど。どんな指輪を買うかはもう決めてあるんですか?」
「ああ。見てみるか?」
「いえ、ユフィに直接見せてもらいます。その時がくれば、ですけど」
「必ず来ると約束しよう」
「私があと何回ユフィとスイーツデートしたら見れるのか楽しみにしてます」
「一桁台には収めるようにしよう」
「期待してます」

シェルクは不敵に笑うと席を立ち、静かに休憩室を出てサングラスを外した。
エージェントごっこ終了である。
そのまま何食わぬ顔でロビーに足を運ぶ。

「お待たせしました」
「んじゃあ行こー!」

二人並んで歩く途中、ユフィはシェルクの胸ポケットにサングラスが入っているを鋭く見つけてそれを指摘した。

「最近サングラス持ち歩いてるみたいだけどどしたの?」
「ええ、まぁ・・・ちょっとしたおふざけに」
「おふざけ?何々?面白そうな事ならアタシも混ぜてよ!」
「こればっかりはユフィを入れる訳にはいきません」
「ちぇー、つまんないの」
「それよりもパフェデートはいつにしましょうか」
「そーだな〜。今週は任務が立て込んでるから来週かな〜」
「では来週にしましょう。パフェデートの次はかき氷デートがしたいです」
「オッケー!色んなスイーツ巡りするよ!」

おー!と腕を振り上げるユフィの横でシェルクは内心、ヴィンセントに対してほくそ笑む。
こうやってどんどん遊ぶ約束を取り付ける訳だが、本当に自分とユフィの遊ぶ回数が一桁台のうちにユフィに婚約指輪を渡せるのか、と。
ユフィの左手の薬指に輝く婚約指輪が嵌められる日を色々な意味で待ち望むシェルクであった。







END
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