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□フラグを回避しよう
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「折角のゴールデンウィークだし友達とどこか別の星で遊んできたらどうかね?たまには羽を休める事も大切だ。私が管理している別荘を貸すよ」
「いいんですか?」
「ああ、勿論だとも。ただ、小さな別荘だからそんなに大勢は入れないがね。それに・・・」
「それに?」
「あの別荘には曰くが―――」
「あるんですか?」
「ないんだ、これが」
「は、はぁ・・・良い事なんじゃないでしょうか・・・」
「だが気を付けるんだ。あの別荘の周辺には怪しい人物が―――」
「現れるんですか?」
「現れる事はない程警備はしっかりしてるからハメを外し過ぎないように注意するんだよ。何か騒ぎを起こしたり王子にあるまじき行動を起こしたら私の耳に届くからね」
「あ、はぁ・・・気を付けます・・・」
「それから最後に、あの別荘は夜になると幽霊が―――」
「出る事はないから安心しろ、ですか?」
「あぁそうだ。だから思いっきり楽しんでくるといい」
「えっと・・・ありがとうございます・・・」






「という経緯の末に貸して貰った別荘だ」
「クレソンさんどうしちゃったの?」
「いつものクレソンさんじゃないみたいだけど」
「それが今日一番のホラーだね」
「ああ」

ここはクレソンが貸してくれたカマイタチ星の小さな別荘。
ゴールデンウイークで学校が休みとなり、シェイドはクレソンの厚意からファイン・レイン・ブライトを誘ってこの地に訪れていた。
今は夜で、談話室で冒頭のやり取りを話して不思議がっていた所である。
ちなみにピュピュとキュキュは寝る時間が来ていた為に早々にプーモと共に部屋で眠っている。

「でも何も起こらないのは残念ねぇ。折角雰囲気のある別荘なのに」
「や、やめてよレイン!大体雰囲気ってどんな雰囲気!?」
「ミステリー・・・つまり殺人事件とか!」
「えーっ!?」
「大きな声を出しちゃダメよ。キュキュ達が起きちゃうでしょ?」
「だ、だってぇ・・・」

ファインは涙目になりながら心細そうにレインの手を握る。
幽霊などの他にこういったものも苦手らしい。
怖がる姿も可愛いものの少し可哀想に見えたのでシェイドがさりげなくフォローを入れてあげる。

「クレソンさんが言うには警備は万全らしいからその辺の心配をする必要はないぞ」
「だ、だよね!」
「でももしもという事があるわ。どこかの星のプリンスを名乗る男の人が訪ねてきて私達を―――」
「うわーん!!」
「レイン、お前はファインを泣かせて何がしたいんだ」
「でも警備とかそういうのは抜きにして、本当にもしもそういう人が来たらっていうのを想定して対策を考えるのはどうかしら?こういう行動を取ったら死ぬかもしれないから気をつけよう、とか」
「所謂フラグ回避ってやつだね。いいんじゃないかな。そうすれば万が一の事が起きても大丈夫だと思うし」
「ね?いいでしょ、ファイン?」
「うぅ・・・」
「大丈夫大丈夫!ただのタラレバ話なんだから!」
「う・・・うん・・・」

涙ながらに渋々ファインが頷いた所で死亡フラグ回避談義が開始されるのであった。

「よし、まず前提条件としてファインとレインのグランドユニバーサルプリンセスの力は使えないものとするぞ」

「えー?何でー?」

「一発解決で話が進まなくなるだろ。それにもしも突然ピュピュとキュキュが熱を出して動けなくなったらという可能性もある」

「そうなると変身出来ないわね」

「加えてそこで土砂崩れが起きて駅に繋がる吊り橋が渡れなくなったらどうなる?」

「プーモが呼びに行く・・・とか?飛べるし駅に誰かを呼びに行くとかしそう」

「でもそれだとプーモが一人になるね。ミステリーのセオリーとしては一人になった者から死んでいく。つまり・・・」

「大変大変!プーモが死んじゃう!!」

「死亡フラグを回避しなくっちゃ!!」

「なら、ピュピュとキュキュを同行させた方がいいな。熱で倒れた二人を急いで治療してもらうという名目で連れて行かせるんだ。そうすればプーモの生存率は上がるし、ピュピュとキュキュも治療してもらえて一石二鳥だ」

「けれど、そうなるとこの別荘は僕達四人と犯人だけとなるね」

「ああ、かなり危険な状況だ。そして自分で言うのもなんだが俺は犯人の事を疑ってかかり、探りを入れる中で知り過ぎた為に犯人に殺される可能性が高い」

「え〜っ!?シェイド死んじゃうの〜!!?」

「確かにシェイドはそんな感じの死に方しそうだね」

「そして姿の見えなくなった俺をお前が探しに来るんだ」

「確かにしそうだなぁ。危険だからレインとファインを一旦部屋に避難させて様子を見に行くと思うんだ。そしてこの広間に来た所で後ろから犯人に殴られて死ぬね、きっと」

「何で二人共自分の死に方をそんなに冷静に分析出来るの・・・」

「それからしばらく時間が経っても戻ってこないブライト様を心配して私が様子を見に行くって言うと思うわ。ファインはどうする?」

「どうするって?」

「私と一緒にブライト様の様子を見に行くかどうかよ。ちなみに一人で部屋に残ったら確実に私も殺されて最後に犯人がファインを殺しに部屋に来て全員死亡エンドを迎えるわ」

「た、大変大変!!レインが死んじゃう!!アタシも一緒に行く〜!!」

「だがその場合、ブライトの死体を見つけてレインが駆け寄ってる間にファインが後ろから犯人に殺され、振り返ったレインが続けざまに犯人に殺されてやっぱり全員死亡エンドになるだろうな」

「だ、ダメじゃん!!みんなが生き残れるようにしないと!!」

「ブライト様の死亡を回避すればハッピーエンド間違い無しよ!」

「おい、さりげなく俺の死を確定事項にするな」

「いいじゃない別に。尊い犠牲だったって事で」

「ふざけんなっ」

「アタシはシェイドに生きててほしいなぁ」

「じゃあ、ファインだったらどうする?」

「うーん、と・・・一緒にいれば生存率は上がるんだよね?」

「ええ。まぁ時と場合によるけど」

「なら、アタシがシェイドと一緒にいる。そしたら死なないよね?」

「お前は勘が良いから何かしらの危険探知としては役立ちそうだな」

「それに可愛いヒロインがいた方が生存率は更に上がるだろうしね」

「えへへ」

「だったら私はブライト様といるわ!そ、そしたらブライト様は死なないですよね!?」

「ああ、勿論だよ。レインが一緒にいてくれるなら怖いものなんてないし、死ぬなんて事は絶対にないから安心だよ」

「はあ・・・!」

「あっ!?レインが倒れちゃった!!」

「殺し文句で殺してどうする・・・まぁいい。二人行動する事で生存率は上がったがまだ油断は出来ない。救助が来る朝までが勝負だからな」

「あのさぁ、四人で固まるってのはどうかな?そしたらもっと生存率が上がるんじゃない?」

「ただそうなると部屋で固まる事はあまりお勧め出来ないね。犯人に警戒心を持たせてしまうし、僕達としてもあまり目は離したくない」

「なら、この談話室で長話に持ち込んで足止めするのはどうかしら?上手くいけば朝まで足止め出来るかもしれないわ!」

「朝が来る前にお前達が寝落ちする方が早いと思うぞ」

「そんな事ないもん!」

「見てなさい!朝まで起きてみせるわ!」


五分後・・・


「クー・・・クー・・・ドーナツ・・・むにゃ・・・」

「スー・・・スー・・・すてきなデコール・・・むにゃ・・・」

「それ見た事か」

「そろそろ寝る時間だし仕方ないね」

「この二人が目を覚ましたら俺達二人が死んでたっていう展開が容易に浮かぶな」

「でも僕達視点ならそれも回避出来るんじゃないかな?勿論僕達の行動次第だけど」

「俺達が危機的状況に陥った時に場面が切り替わってこの二人視点になる訳か。だが朝まで寝てると思うぞ」

「都合よく途中で目を覚ます事を祈ろうか」

「最後は神頼みか・・・次回までの課題だな」

シェイドは苦笑しながらファインを抱き上げ、ブライトは小さく笑いながらレインを抱き上げると部屋へ運んであげるのであった。







END
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