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□闇の中で
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ランドールは孤独な闇の中で静かに横たわっていた。腕の中で小さな子供がうなだれている。

ああ、こんなつもりじゃなかったのに。

粘着性のある液体が口から飛び出した。壁掛けに描かれている女が自分をほくそ笑むかの様に歪んだ気がして、自嘲の念も込めて力なく笑った。それもランドールは胴体から真っ二つに切り裂かれていたからだ。ったく、これじゃお前を満足に抱きしめてやれない。お前は俺の4本の腕ですらもっと、とせがんでいたのに。貪欲に愛を貪るお前に俺をもっと与えてやりたかったのに。だが、どんなに願っても子供の瞳に光は戻ることはない。原因は他でもない俺だが。最後になっても俺はお前に何もすることが出来なかった。抵抗できないように手足を縛って、お前の首に手をかけ、お前を自分の手で楽にさせてやることは出来たが…いや、そんなことは自己満足に過ぎない。

俺は止めることが出来なかった。

苦しむお前をこんな方法でしか助けることが出来なかった。もし他の奴だったら違う方法を見つけることが出来たのだろうか。ああ、きっとそうなんだろう。俺はろくな生き方をしていないから、きっとバチが当たったんだ。

最後に瞼を閉じてやろうとした。だが、意識はどんどんまどろんでいく。もはや腕は使い物にならない。闇に呑まれていく。女はそんな俺たちをじっと見つめている。





ごめんな、好きになったのが俺だったばかりに。






好きになって、ごめんな。



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