短編
□貴方を想い守り抜く
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「アンタいつもそれ読んでるわよね」
看守室のソファに座り、手に持っている便箋を眺めていた猿鬼が声の方を振り向いた。
「三葉か」
「誰からの手紙なのよ?」
そう尋ねながら、猿鬼の向かい側に座るキジに、猿鬼が怪訝そうな顔をした。
「どうして手紙だと分かるんだ」
「...んー.........勘?」
その行間に、どこか誤魔化しているような気配を感じながらも、猿鬼は彼から視線を逸らして答えた。
「向こうに居た頃の知人だ」
「へぇ...知人ねぇ...」
口元をにやけさせ、何か言いたげに笑うキジに、猿鬼が眉を寄せた。
「...何だその顔は」
「...いえ?知人からもらったにしては...」
キジは小さく笑って、言いかけた言葉を飲み込んだ。
「...ふふっ、やっぱ何でもないわ」
彼の全てを見抜いているような態度を見て、誤魔化しが効かない相手だと悟り、諦めたようにため息をついてから、猿鬼がポツリと呟いた。
「...ただの知人、でないことは確かだな」
「...それどころか大事な人なんじゃないの?」
キジの問いかけに、猿鬼が少し目を見開いた。
何故この男には全部見透かされているのだろう。聞いたところでどうせまた勘だと答えるに違いないが。
「...そうだな」
特に否定もしない猿鬼に、キジは面白くなさそうな顔をして、アンタってつまんない男ね、とため息を吐いた。猿鬼はその言葉を素知らぬ顔で聞き流した。