短編
□君の爪先に
1ページ/5ページ
「あーあー…お前どうやったらそんなにはみ出すんだよ」
ジューゴが机に向かい、黙り込んで何かをしていたので、大人しくしてるなんて珍しいなと思い、ジューゴの背中から彼の様子を覗いたウノが、思わず呟いた。
ジューゴが何をしていたかと言うと、自分の手の爪にマニキュアを塗りなおしていたのだが、ムラがあるわはみだすわと、まだ片手しか塗っていないにも関わらず中々散々な状況だった。
しかも塗っていた手は利き手であるのにこの有様である。
…これは先が思いやられるってヤツだな、とウノは思った。
ジューゴが、ウノの呆れたといったような声色に、少しむっとした表情で振り返った。
「うっせ。手ぇ震えんだよ…無理だろこれ」
「利き手で震えて無理って…ほんと手先不器用なお前。てか、もう片方絶対無理だろそれ」
「…くっ…!」
相も変わらず言いたい放題のウノであったが、正直なところ本当のことであるので、ジューゴも言い返すことができず悔しそうに黙り込んだ。
その時、ウノがわざとらしく溜め息を吐いてから、にやりと笑った。
「しゃあねえなあ…俺様がやってやるよ」
「ええ…良いって別に…」
あからさまに余計なお世話、という顔をするジューゴに、ウノが面白く無さそうな顔をした。
「じゃあその悲惨な手を放っといていいのかよ?」
「悲惨とか言うなよ…」
ウノの遠慮のない物言いに、落ち込んだ様子で力なく抗議をするジューゴに、ウノが再びにっと笑った。
「塗り直しもしてキレイにしてやっからさ」
そう言って、ジューゴの隣に座り込んだウノは、まだ何となく渋っているジューゴの手をぎゅっと握って引き寄せた。
そのままもう片方の手で、器用に筆にマニキュアの液を付け、親指から丁寧に色を塗り始めた。
「相変わらずほっそいよなあ、手とか腕とか。日本人ってこんなもんなの?あーいやでもハジメとかヤマトも日本人だしなーお前がひょろいだけか」
「…うっせ」
からかうように言ってやると、思いのほか反応が薄かったので、少し不思議に思ったウノが、視線をジューゴの方に向けた。
その表情を見て、ウノが動きを止めた。