刀剣乱舞二次創作

□桜の季節に2
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春風の心地よい季節だった。最初の印象は、ふわふわとした儚げなやつだと思っていた。出会ったのは偶然で、怪我をしていたところをたまたま通りかかっただけだった。まだ小さな身体に生えている真っ白な翼には血が滲んでいた

「その怪我は、どうしたんだ」
「別に、大したことない」

何でもないようにさらりと言う。だが、なんとなくは予想がついていた。彼は恐らく烏天狗という種族なのだろうが、この真っ白な翼は虐げられる対象になったのだろう。すこしは泣いて縋れば可愛げがあるのにと長谷部はため息をついた

「痛かったら、痛いといえばいい」
「大丈夫だ。痛くないから」

翼は彼の血で赤く染まっており、痛くないはずがなかった。やはり、可愛げのない少年だと思った

「で?今日は何されたんだ」
「見ての通りだよ・・・」
「ふむ。殴られて翼から血が出るほどの怪我か。」
「・・・おいおい、まさかやり返しに行くとか言わねぇだろうな?」
「真逆。餓鬼の喧嘩に首突っ込むほど野暮でもないし大人気なくもない」

その言葉を聞いて、少年・・・鶴丸はむなでを下ろした。長谷部は真面目で優しいから、もしかしたらと思ったがこれは杞憂に終わっ

「とりあえず親シメに行くか」

たらいいなと思いました。

「待て待て、そんなことしたら長谷部まで変な風に言われるぞ!?」
「俺は別に構わん。そんなこと気にしたこともないしな」
「あ・の・な!俺はあんたが傷つくのは嫌だし、悪く言われるのも嫌なんだ!だから、こんなことで殴り込みとかはやめてくれ」

闇を知らない、純粋な金色の瞳が長谷部を見つめた。長谷部はこの目に弱かった。

「・・・わかった。わかったから服を引っ張るな。皺になる」
「あ・・・悪い」
「まったく・・・つらくなったら、いつでも言えよ」
「おう 」

こんなにも大事に育ててくれている長谷部に、あまり面倒なことをさせたくない。その一心だった。

「そういえば、桜の花が満開なんだ!花見をしないか?」
「人間臭い風習はやらん」
「たまにはいいじゃないか。ほら、行こう!」
「あ、おい!」

長谷部の制止も聞かず、腕をひっぱって桜の木まで案内する鶴丸は、どこか楽しそうに見えた。
(そういえば、あいつと会ったのもこの時期だったか)
そう、桜が舞い散る木の下でのことだった

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