春殉情

□ファースト・インプレッション
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悪の皇帝、ピエーロを復活させ、世界をバッドエンドに導こうと目論む一人。
ウルフルンによって召喚されたアカンベェと対峙する、五人のプリキュアは、苦戦を強いられていた。
攻撃が読めず、右往左往する彼女達を嘲ながら見下ろすウルフルンが。
アカンベェに命令を下そうと口を開いた―――その時。



「ウルフルン。」



玲瓏たる美しい声が、耳に届いた。
殺伐としたこの場に不相応なその声に、思わず目を向けた先―――
満月を背に佇む人物に、みゆきは息を呑んだ。


風に揺蕩(たゆと)う、漆黒の艶やかな長髪。
抜けるような白い肌に栄える、目元の赤いラインが印象的な彼女は。
華奢な体躯に、十二単を思わせる着物と、天の羽衣を身に纏い、恐ろしく端正な顔立ちをしていた。

そう、その姿はまるで―――



「かぐや姫…」



絵本で読んだ、竹取物語に登場する、かぐや姫そのものだった。
戦闘の最中(さなか)である事を忘れ、五人の少女達が、突然現れた麗人に恍惚する中。
名前を呼ばれたウルフルンは、彼女を双眸に捉えると。
先程まで浮かべていた嘲笑を一変、わたわたと慌て始めた。



「帰りが遅いと思えば、年端も行かぬ娘達と戯れておるとは…」

「おい待て。この状況の何処をどう見たら―――」

「そなたにそのような嗜好があるとは知らなんだ。
 世間ではそなたのような者を何と呼んだか…あぁ、確かロリコンだったな。」

「人の話を聞けェ!第一、俺はロリコンじゃねェ!!あいつ等はプリキュアだ!」

「、プリキュア…?」



そこで始めて、彼女は五人の存在に気が付いたように、菖蒲色の双眸をみゆき達に向ける。
ドキン、と鼓動が大きく脈打つ。
彼女の綺麗な瞳が自分達に向けられている事に、(はや)る鼓動を抑えながら、みゆきは口を開く。




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