書庫

□黄昏時
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「以上HR終了、解散―」
「さよーならー」
「ばいばーい」

HRが終わり、部活に行くもの、帰るもので暫く騒がしくなる教室。
けれど五分もすれば静かになり、教室には窓際の端で机に伏せって眠っている女子生徒だけになる。
西からの夕日は教室とまだ夏服のままの彼女の白い制服と肌を赤く染めていく。
秋の初めで昼間は暖かいとは言え、日暮れ時はもう肌寒い。人のいなくなった教室も冷えつつある

ガラッ

「あれ、まだいたのか…」

忘れ物を取りに来たのだが、思わぬ居残りが居た。
普段の彼女は帰宅部で一目散に帰ってしまうから、放課後の教室に彼女がいるのはとても珍しい。
それはともかく、寒い教室でいつまでも寝ていては風邪を引いてしまう恐れがある。そう思い、起こそうと近づいた。

腕を枕にして気持ちよさそうに眠る表情を見れば、起こすという行動は頭から出て行った。

「……」

起こしてしまわぬように、そっと頬にかかっている髪を払ってやる

「んー…」
「っ!」

起こしてしまったかと思ったが、目は閉じており、規則正しい寝息が聞こえてくる。それに少し安堵し、自分の着ていた学ランを脱ぎ彼女にかけた。
本来の目的であるはずの忘れ物を手に取り、もう一度度際に足を向ける。


「風邪 ひくなよ」

くしゃりとやわらかな髪を撫でて、教室を出た。


END
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