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□Reason
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万年雪の溶けぬ山の奥。
ひとつの木があった。誰も訪れることの無い深い雪の中。

一つの人影があった。
真っ白な着物。
真っ白な髪。
白い肌に伝う一筋の涙。

「羅刹……?いないのか…?」


† † † †

太陽が照り付ける夏の午後。
太陽は雲に隠れ、その雲からは季節に合わない白が降る。



雪が舞う。
風に誘われ、白い髪と着物の裾がはためく。


「……本当にいないのか……?私を残して…本当に…」



「……お前のいない世界に…私は居たくない…」









一日中降り続いた雪はあたり一面銀世界に染めていた。
夏だというのが嘘のように
それでも雪は足りないとばかりに降り続ける。

雪の降り続ける中、とある木に彼女はいた。
もう一人、黒の着物を纏った男性と。

「何故今更こんなことを……復讐のつもりですか?」

「……」

「仮に復讐だとしても、退化した力で勝てると思うのですか?
唯一四神殺しを許されているあの一族に」

「勝てないだろうな」

「分かっているのに 何故…っ」

「……私はもう、この世界にいたくはない」

「刹那様っ」

舞う白に消えた。














さくりと雪を踏みしめる音がした。
そちらへ目を向けると、刀を持った二人の男。

「雪姫・刹那 封印を破っていたとは…」

「封印くらいでは足りなかったか。やはり殺すしかないのか」

「殺せるのか?お前たちに」

「許可は下りている。おわりだ」


『本当に……いないのだな…』


鮮血が飛ぶ。
赤い血が彼女の白い着物と、地面の雪の白を染めていく。

「……」

避けれたはずなのに、何故、倒れる?
切りつけた本人が驚く。
四神の力はこんなものではない…封印されて力が削れたからと言って、簡単に殺せるものではないのに…

「雪…姫…?」

「……任務完了だ。帰るぞ」

踵を返し、去っていく。
もう一人もそれに習い、消えていく。
残されたのは…



「刹那様…何故死を…」

「……私たちは生まれたときから二人だった
あの子がいたから 永い時間…四神の永い時間を生きて来れた……
あの子のいないこの世界に私はいたくない」

「永い時間は殺されて終る。
私の時間も これで ようやく止まる」

「あとは…頼むな…」


雪が止んでいく。
彼女が死んだから。
彼女の骸は雪に消え、雪が溶けていく。





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