書庫
□雨が降ったら
1ページ/8ページ
サーサーサーと雨の音がする。
今日は雨かと、閉じていた目を開ける。
窓から見える空は雨のせいで薄暗くて、元々低血圧の私の寝起きをさらに悪くする。
時計を見れば、七時半。
起きなければ遅刻する時間。
「…寒い……」
寝起き特有の掠れた声。
小さくつぶやいただけでは、頭は覚醒してくれなくて、むしろ瞼が重くなる。
雨の日は気分が滅入る。
いいことなんてなにもないし。
だからいっそサボってしまおうと、布団を被りなおす。
「ニャー」
もそもそと布団に入り込んできた一匹の黒猫。
チリンと首の鈴がなる。
軽く爪を立てられて、目を開ける。
「痛いわね。なにするのよ迅」
「ニャーニャーニャー」
ひっきりなしに顔を舐めてくる。
「うるさい・・ご飯?」
寝るのを諦めて、食事を取りに下へ行く。
この広い空間にも、もう慣れてしまった。
トントンと、自分が階段を下りる音と、雨の音しか聞こえない。