遠き夜空に夢は落ちて
□第一章 夢に彷徨い、そして出逢う 第三楽章 The Rebellion of Toy Soldiers
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気が付けば、その空間に立って居た。
真っ白な空間。左も右も、前後上下も。
天辺の見えない高い白壁の通路の空間に、僕は立って居た。
「全員、居るな」
側で声がする。国木田さんだった。
「国木田さん」
「居ますよー!」
「はい」
周りには、乱歩さん、賢治君、谷崎さんも居た。
僕等は、横浜連続傷害事件の被害者を連れ戻すべく、犯人が作った異能空間に入り込んで居た。その異能空間は迷路であった。
「殺風景な景色だなあ。もう一寸面白そうな舞台にならないもんなのかなあ?」
辺りを詰まらなそうに見渡し乍ら、乱歩さんが云う。
「確かに、こうも単色だと、我々の居場所も判りにくい」
国木田さんは現実的に同調する。
「・・・一先ず、色々試してみましょう」
それから国木田さんは、携帯を取り出して、開く。だけどすぐにその顔を顰めた。
「矢張り、圏外になるか」
駄目か。つまり現実世界で待つ社長達とは勿論、この空間内に居る僕等同士でさえ連絡は取り合えないと云う事だ。
「次だ。全員離れろ」
僕等にそう促した国木田さんが、今度は手帳を取り出す。
「独歩吟客・手榴弾!」
手帳に走り書き、その貢が破り取られる。そして具現化された手榴弾が壁に向かって投げられる。
大きな爆発音と火花が散る。僕は目と耳を塞ぐ。
暫くして視界が開けた。壁は。
無傷、であった。
「破壊も不可能、と考えていいな」
国木田さんが深く溜息をつく。
「地道に歩き回るしかない様ですね」
僕も神妙な気持ちになる。隣の谷崎さんも。
「いいじゃないですか迷路。面白そう!」
対して賢治君は変わらず呑気だ。
あれ、そう云えば・・・
「ん、そう云えば乱歩さんは何処に?」
僕の思った事と同じ事を国木田さんが云った。
「あ、乱歩さんなら」
その質問に賢治君が何時もの調子で答えた。
「先行ってるねー、って一人で行っちゃいましたよ。『地図』も僕には必要ないって、ほら」
けろりと賢治君は僕等の前に地図を掲げた。
・・・
「はあぁぁぁぁぁっ?!」
異能空間に絶叫が、響き渡る。