遠き夜空に夢は落ちて

□第一章 夢に彷徨い、そして出逢う 第二楽章 正解はまた何時か
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武装探偵社社員一同が、二重の輪になって机の上の元の三つ折りにされた件の迷路を囲んでいた。
内側の円には、国木田、乱歩さん、賢治、谷崎、敦。迷路の中で、挑戦状を受ける奴らだ。

「さぁて、どんな迷路がこの僕に立ちはだかってくるのかな?」

「楽しみですね!」

ワクワクした様子で云うのは、外側の円に立つ妾の向かい側に居る乱歩さんと賢治。面白そうだから!と元気よく立候補した二人である。

「兄様・・・無事に帰っていらしてね」

「ナオミ・・・行ってくるよ」

肌と肌がくっ付く程に間近にナオミと見つめ合っているのは左手に居る谷崎。戦争に行く男とそれを健気に待つ女の演劇の開幕かの様だ。

「皆さんの力にならないと・・・」

不安そうにブツブツ呟いているのは右手の敦。彼は彼は緊張し過ぎな気がしなくも無い。
そして、妾の前には敵地進入直前まで自由すぎる各々の様子に溜息をつく国木田。ふと、思い出したかの様に彼は後ろを振り返った。

「おい枕伽。・・・太宰を頼んだぞ」

彼が言葉を向けたのは、妾の隣に居る逢為灯であった。太宰を探し、そして見つけ出して彼等を待つのである。

「お願いします!」

敦も続けて逢為灯に頭を下げた。

「・・・はい!」

既に疲れ切った様子ではあったが、精一杯力強く逢為灯は頷いてみせていた。
それを見て、国木田と敦は頷き返す。

「・・・よし」

それから国木田は、目の前三つ折りのその紙に両手に掛ける。

「行くぞ!」

「はい!!」

国木田が、その紙を開く。
五人の挑戦者達は、開かれた、迷路を見つめる。

「五」

「四」

「三」

「二」

「一」

「零!」

の瞬間。五人がその場に倒れた。

* * *

「スターーーット!」

リビーが叫び、タイマーのスタートボタンを押した。そして高笑いを響かせる。

* * *

一瞬驚いたが、成る程、確かに事件の状況と同じだ。
頼んだぞ、倒れた五人の外側の、妾の向かいに立つ社長が小さく、強く云った。

* * *

午後六時三十分。武装探偵社社員五枚、迷路突入。
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