短編

□金魚華火
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裏表現を多く含みます。モロ語注意






「もう三年前、ですか。」

アジア圏の拠点でもある魔法処にはあらゆる東洋の魔法文化が集約している。ホグワーツでは目にすることのできない独特の雰囲気を纏う建造物や食物、器具、書物……漢方や珍しい薬草もまた然りだ。
実は…前にも一度、ここへ訪れたことがあった。

「 そんなに経つか」
天井まで届くほど大きな檜の薬棚。ナナシ教授は脚立に乗って上の方の引出しを物色している。初老の彼はナナコの父親にあたるが血は繋がっておらず、彼女は養子なのだそうだ。


三年前から全く変わっていない、埃っぽい研究室を感慨深く見渡す。
そして或る、一点に目を留めた。

「おや、魚がおりませんな。随分可愛がっておられた…」
「あぁ、…実験に使ったのだよ。今回の、新薬の。」
「ほう。それで?」
「…………死んでしまった」
「………それは残念です。あれは実に美しい魚だった。」


彼はそれ以上何も言わなかった。
実験とやらは最近行われたものなのか、住人を失った水槽には今も並々と水が入れられたままになっている。
相変わらず薬棚の引出しを開けたり閉めたり忙しなく動く背中からは確かに哀愁が漂っているようにも思えるが…

それにしても、不可解さは拭えなかった。




:::
『お父様の新薬、腑に落ちてないみたいですね』

ヒグラシの鳴き声が昼間の暑さを鎮めるかの如く響き渡る中、宿にてナナコと夕涼みの刻を過ごす。

「………学会で聞かされたのは薬の調合法や開発成功への経緯やなんかばかりだった。確かに興味深いものではあるが…今ひとつ核心から逸れている節がある。実演も無しに成功とは言えまい。」

隣に座る彼女が肩に頭を乗せ凭れてきた。

「可笑しな話を聞いた。」
『可笑しな?』
「どういう風の吹き回しか、ずっと傍に置いて可愛がっていた魚を実験に使ったと言うのだ。……死なせてしまったとも。」
『……』
「実験は失敗したのに学会ではそのことについて一切触れていなかった。…妙だと思わんか」

彼女は何処か遠くを見つめたまま口を閉じている。我輩の発言を父上への批判とでも捉えて機嫌を損ねてしまったのだろうか。

ゆっくりと日は暮れていった。



:::

『あっ、やっ…はずかしぃ…』

今夜は裸のまま欄干に手をつかせる。当然、下からは何もかも丸見えだ。後ろから挿入してピタリと身体を重ね、乳房を揉みしだきながら亀頭をグリグリと子宮口に押し付けてやる。

『ああっ、…うぅ…嫌ぁ……エッチしてるの、見られ、ちゃぅ……』
「声を出せば気づかれてしまうぞ?見られたいのなら止めはしないが」
『あぁん、嫌ぁ、こんなの……ぁん、すごぃ…』

嫌々と言いながら膣は締まり波打つようにうねっている。更に愛液が溢れているのを見れば、彼女が興奮しているのは手に取るようにわかった。わざと、焦らすようにゆっくり腰を動かしながら胸や蕾も小さく刺激していく。

『ん…教授……もっと…』
「聞こえないな」
『、……もっと…激しく、してくださ…ひゃあっ!!!』

ぎりぎりまで引いていた肉棒を断りもなく一気に埋め込むと、ナナコは声にならない声をあげた。

「どうだ、ん?これが良いんだろう?」
『あぁっ!あっあっあっ声っ、出ちゃっ、あっ!あっ!』

腰を掴み彼女の爪先が床につくかつかないかというところまで持ち上げ、下から激しいピストンを穿つ。
ナナコは欄干を掴む腕で自身の体重を支えなければならずまた挿入する度に杭の上へ座る様な体制となる為必然的に全体重が接合部にのしかかる仕組みだ。

『あんっあんっあんっあんっ!しゅご、い、ぃ、きょ、じゅの、おちんちんッ、奥まで、来てるの、お、ぉ!』

他人に聞こえてしまうかもしれないという羞恥心までもが興奮剤となり、もはや誰にも制御できない。淫靡な言葉を恥ずかし気もなく叫ぶ彼女の壊れ様に、腰の動きは速度を上げていく。

パンパンパンパンパン
『ひゃああぁあん、だめええええっ!!きょぉじゅの乱暴おちんちんでイッちゃうっ、ナナコのぐちゃぐちゃおまんこイッちゃうううう』
「っ、くぁあっ……!!」

同時に果てると膣内が精液を搾り取るかのように収縮を繰り返し、吐き出されたものが奥へと送り込まれていく。
あれだけ激しくしたというのに階下の通りの様子はさほど変わらない。周囲の喧騒が耳の奥に戻ってくるのを感じつつ、顎や髪の先からは静かに汗が滴り落ちた。
しばらくは繋がったまま、脈打つ互いの体と乱れた呼吸を落ち着かせる。



「身体、冷やしてないか」
『大丈夫、です…。』
「もう少しこっちへ来たらどうだ」
『………』

布団の中で寄り添うも微妙にあけられた隙間が寂しい。
情事の間はあれほど互いの熱を貪り求め合っていたにも関わらず、今は打って変わって小さな背をこちらに向けたままだんまりを決め込んでいる。

「……致し方ない」
『……!』
我輩の方から距離を詰めてそっと包んでやると、驚きこそすれ、ようやっとまた素直に胸元へ擦り寄ってきた。

「何が気に入らないのだ。」
『そういうわけでは………ただ、怖くて』
「怖い?」
『貴方を想い過ぎると、息ができなくなるのです。』
「……。」

返す言葉が見つからない。
どれほど想おうとも、別れの時は必ず来る。明日には…ここを去らねばならないのだ。
敢えて何も言わずに口づけを落とし抱きしめる腕にきゅっと力を入れた。

彼女のすべてを記憶に刻みたくて…目を、閉じる。

「…………また必ず、会いに来る…」

そう呟いて、眠りに落ちていった。




『……私、貴方に愛してもらえてとっても幸せでした。三年前にお会いした時のことも覚えていてくださったんですね。

ありがとう…そしてさようなら教授。


心から、愛しています。』




それは夢か現か____。
彼女の声が聞こえた気がした。



溢れた私を掬って


翌日ホグワーツへの帰路、列車の中で新聞を広げる。


"魔法処ナナシ教授、新薬を発表__!

「逆変身薬」は動植物また物体など、意思を持たない対象を人間に変える効果があり従来の変身術における概念に新たな…<中 略>…またナナシ教授は自らが大切に飼育していた金魚を実験台とし今回の開発に成功したと供述。美人助手として話題になるも本来の金魚同様短命とされており薬学会からは惜しむ声が…"

新聞をたたみ、窓の外へ目を向ける。


魚の跳ねる水音が聞こえたきがした。



- E N D -


お読み下さりありがとうございました!
人外ヒロインでした!!といっても姿形は人間そのものなので人外ネタとしては弱かったかもしれませんが…
そして補足→最後の夜に、教授はヒロインちゃんによってオブリビエイトされまして彼女との思い出消えてます。切ないけれどひと夏の不思議体験みたいなお話にしたかったので…途中ちょっとホラーっぽくもなりそうで書いてて楽しかったです。笑


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