短編
□君が紡いだ世界の隅っこ
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どこまでも限りなく、白。
『ね、知ってた?』
ふかふかのベッドの上、光の中
眉間のしわを人さし指でなぞって
鬱陶しくて愛おしい前髪を掬い、耳にかける。
ここには時間も何もない。
私たちにとってそれはとうに無意味なものでしかなくなっていた。
それでもこうして寄り添って身体を横たえては戯れたりしている。生きていた頃と、同じように。
ちゃんと聞いてるくせに相変わらずの無口なんだから。
うっすらと目を開けながら深い呼吸をひとつ。早く続きを、と言っているみたいなので私はまたぽつりと呟いた。
『ハリーにね、ガールフレンドが出来たの』
「………くだらん」
冷たい言葉とは裏腹に、口元が僅かに緩むのを見逃さなかった。いつまで経っても親心というのは消えないものだ。ただの教え子だけど、ハリーは特別なの。それに結局私たちは最期まで子供に恵まれなかったから。
『ジニーよ、ほらウィーズリー家の末の子。覚えてる?』
「………」
少しだけ…昔のリリーに似てると思うんだけど、どうかな。ハリーが彼女を選んだのは無意識なんだろうか、それとも。
『あの子、真面目だからきっとそのままゴールインするんじゃないかしら。どうする?将来女の子が生まれたら〜』
私の言いたいことは伝わっているはずだ。
悪戯心ににやけた顔を彼の高い鼻先へ近づけてみた、ら、
『!』
先程から黙りこくってた人が突然、鼻を擦り合わせて頬にキスを落としてきた。それはそれは温かいキスを。
「ナナコ」
『は、はい』
「生まれ変わっても一緒になってくれるか?」
『へ…』
「子が、欲しいのだろう」
そんな優しくて真っ直ぐな瞳は反則。
「…今度は必ず君を幸せにする。だから
また我輩を、選んでほしいのだ」
白い光が次第に滲んで、貴方が見えなくなりそう。見失ってしまわない様にと目の前の厚い胸板へしがみついた。
この人は無口で無愛想で不器用だけれど、いつだって、純粋で素直。そういうところが、たまらなく好き。
『その言い方じゃ今が幸せじゃないみたいじゃない』
「む、確かに。」
抱き締められた温もりの中でくつくつと笑いを噛み殺していると、大きな手の平が私の頭をゆっくり撫でてくれた。
君が紡いだ世界の隅っこ
結局のところ、貴方が居てくれればそれだけで。
titleは 3秒死 様より。