短編

□照れるは恥だが歳はとる
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何かがおかしい。



いつもと同じ様に、朝食を摂るべく大広間へと廊下を歩いているだけなのだが

やたらとすれ違う生徒たちの視線を感じるのは何故だ。
上級生に至ってはひそひそと噂話を耳打ちし合っている。視線のこともあり我輩の話をしているのであろうことは大方予想つくが、内容がはっきり聞こえているわけではない為責めるに責められずこうして睨みをきかせてやるまでである。



しかしその訳はすぐに、目の当たりにすることとなった。




『リーマス先生!違う、もっと右を上に!』
「右ね、OK……どうかな?」
『あ、いい感じです!そのままそのまま』




大広間に群がる人だかりをかき分け教員テーブルまで進む。(途中からマズイという顔でこちらに気づいた生徒数人は自ら道を譲りそそくさと自寮のテーブルへ戻っていった)



"祝☆生誕!セブルス・スネイプ先生!!
〜みんなでスネイプ先生をお祝いしよう!〜"



我輩が座る席の頭上にチカチカキラキラと目障り極まりない垂れ幕がだらりと下げられている。思わず背筋を悪寒が走り抜けた。


「……また貴様か。余程自分の寮を最下位にしたい様ですな。グリフィンドール30点げん「やあセブルス!ハッピーバースデー!」

パン!と素っ気ないクラッカーが鳴らされ、時間差でカラフルな紙吹雪やリボンがパラパラと頭に降ってくる。

眉間に力を込めてこめかみをヒクつかせながらどの罵声を浴びせてやるのが一番効率的かしばし考えを巡らせていると、目の前の主犯・ナナシがくるりと勢いよく振り返った。
しまった、我輩としたことがこやつに隙を…


『あっ!ずるいリーマス先生!私が一番にしたかったのにっ!スネイプ先生はぴばーーー!!!』

パァン!


魔法で手を加えたのか、先程の物より少々派手なクラッカーが鳴り響く。(リボンに加えて雪や星屑が降ってきた)
朝食を摂るフリをしながら固唾を飲んで我々のやりとりを見守っていた大広間の数か所から、まばらな拍手と遠慮がちなヒュウッという囃しが飛ぶ。やるならちゃんとやれ。減点は50点にしよう。

「わあー!ナナコのクラッカーすごいじゃないか!綺麗だね〜」
『えへへ、昨日徹夜で作ったんです』


もはやここで怒り散らすのも馬鹿らしく、腹の底を煮え滾らせながらも無言のまま杖を一振りして幕とクラッカーの散らかりを一掃した。


「あー!ひどいなあセブルス!これはナナコが一生懸命「今夜7時、地下室」

「…え?私かい?」
「貴様に用は無い。ナナシ、良いな?」
『はあーい』


ふん、せいぜい楽しい罰則を考えておいてやろうではないか。朝食の気分では無くなったのでしんと静まり返った大広間を大股で去った。





「……気にすることないよ、君は十分…ってナナコ?何にやにやしてんの」

『リーマス先生、今の、見てなかった?歩き出す前私を見て、フッて、フッて笑ったの彼!!かっこいい…』

「うん、楽しそうで何よりだよ。」




:::


散々な一日であった。


廊下を歩けばそこかしこに"祝☆生誕"のポスター。(アルバスが微笑みながら魔法でポスターをより派手にして回っていたのも見た)

引き出しを開ければ吹き出す花びらや小さな花火。(髪についたままであった花びらをミネルバがうっとり払ってきたのには背筋が凍った)

羽根ペンを走らせればインクは勝手に虹色になり、消しても消しても部屋はプレゼントや花で溢れかえる。(花に至っては双子呪文がかけられていた。フリットウィックだな)(気味の悪いピンクのふわふわした花はポモーナか)(次々とそれらを運んでくるふくろうはマダム・フーチ…)

げっそりしながら夕食を、と席に着けば我輩の皿にだけ見たことのないほど分厚く切られたジビエ(これが何の肉なのかは考えないことにした)。
顔を横に向けるとウインクをしながら親指を立てるハグリッドと目が合う。そして顎をクイクイと動かして何かを示してきたので、そちらに目を向けると、

「………。」

こちらにキスを投げて寄越すナナシ。
思わず目に見えないそれを手で払いそうになったが、それも奴の思うツボだと思い、無視することにした。



:::

コンコン

『失礼しまー…ぁんっ』

7時きっかりに扉を開けるなり、勢いよくその手を中へ引き入れ、閉めた扉に背を預けさせて身体を押し付ける。
おまけに片手で両頬を掴み上げ、うーっと唇を突き出させた。


「……説明してもらおうか」
『おいわい、したかった、だけでふ!』
「他の者を巻き込む必要はなかろう」
『えぇー、たまにはいいじゃない!先生たち、喜んで協力ひてくれまひたよ?ダンブルドアへんへぇなんて自主的に参加ひてくれまひた!』
「虹色インクはミネルバだったか…」


『ちゃんと、みんなに愛されてるんでふ。それを、伝えたくて……ね、ふぇんへ?』
「……。」


頬を掴む手だけ解放してやる。
が、身体はまだ押し付けたまま太腿の間に膝を割り入れた。

『んっ…、罰、則、ですか?』
「ルーピンと親しげにしていた」
『もうっ、協力してくれただけなのに…やきもちやきなんだから!』
「なっ」



『私が好きなのは、先生だけですっ!』


強がりながらも頬を染めて抱きついてくるなど、反則ではないか?


「………、…まだ君からプレゼントをもらっていないが」
『え?だから、計画して先生たちにっ、ひゃあ!』

辛抱ならずひょいっと横抱きに持ち上げる。


「…今届いたようだ。帰さんからな」



部屋を埋め尽くす咽返る様な花の香に、神経を犯されたことにでもしておこう。




(わあ、先生ったら真っ赤になっちゃって。ふふ)


照れるは
恥だが歳はとる



お誕生日、おめでと、せーんせ!




実は付き合ってました設定。付き合ってても先生呼びしたい。この後プレゼントのケーキでクリームプレイとかしちゃうんだ←



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