短編

□IIII
1ページ/1ページ



中庭のベンチに2人で並んで座って、だいぶ寒いね、もう少しこっちにきたら?なんてこそばゆい会話をして楽しんでる。気温は相当低いがここ最近の悪天候からしてみれば珍しく抜ける様な青空になったので寒さも構わずリフレッシュしに来たのだった。


『…リーマス先生、何食べてるの?』
「ん、これかい?マグルのお菓子だよ。スティック状のビスケットにチョコレートがかかってるんだ。……何か可笑しい?」
『ふふっ、ううん、リーマス先生は本当にチョコが好きなんだなあって思って』
「まったく目が無いね、はは。良かったら、ナナコも食べてみるかい?」


彼女はグリフィンドールの優秀な生徒だが純血の出身なのでマグルのことをよく知らない。日頃このホグワーツで多くの友人に囲まれている彼女がマグル界のものに興味を持っていることはよくわかっていた。

『え!いいんですか!?やったぁ!』

きゃっきゃとはしゃぐ彼女が可愛らしくて、つい。

『……、?…先生?』

伸びてきた彼女の手が届かないところまでパッケージを遠ざける。代わりに急接近した顎をくいっと掬ってチョコレートの先端を淡いピンク色の唇にぴと、とくっつけた。私が咥えている、反対側の端をね。

「…ん。」
『……っ…』

ほら、食べたいでしょ?咥えてごらん?
と、いう意味を込めて至近距離でにっこり見つめると彼女はみるみるうちに耳まで真っ赤になってフリーズしてしまった。もっとそういう顔を見たくて、体温で溶け始めたチョコが唇に付着するのも構わずポリ、ポリ、とゆっくり少しずつ食べ進める。当然、彼女が逃げてしまわない様に後頭部を押さえてね。
…恥ずかしさがピークなのか、ナナコがぎゅっと目を瞑ったその時



パッキィィイン


鼻と鼻の間、約3センチ。
もう少し…というところで何者かの手刀がギロチンの如く振り下ろされ、ナナコの身体もバッと離されてしまった。

「………。」
ベンチの背凭れに頬杖をついて、中途半端に折れたそれを口先で遊ばせながらじとっと邪魔者に目を向ける。



「…仮にも教師である貴殿が生徒と、かような、ふしだら極まりない行為に及ばれるなど…ご自分の立場をわきまえられてはどうかね、"プロフェッサー"……?」

「…やあ、セブルス。君も一本どう?」

無理矢理口角を上げてパッケージを差し出すも、ガン無視だ。まあ、いつものことだけどさ。

「ナナシ」
『は、ハイっ』
「グリフィンドール寮諸君は全くもって風紀を乱すのが得意な様ですな。お望み通り罰則を与えよう。20時、地下室だ。これは我輩が没収する」

油断していた私の手からパシンと赤い箱を引ったくるとローブを翻し大股で城の中へ戻って行ってしまった。その背中を、二人でぽかんと見送る。


『…ご、ごめんなさい、私のせいでお菓子が……』

「いやいや!君は何も悪くないよ。ちょっとした…やきもち、かな?」

頭にハテナを浮かべて首をかしげる彼女の耳元に口を寄せて、コショコショと吹き込んだ。

「たぶん…セブルスもやりたいんだよ、さっきの。君とね。」


罰則、とやらが、もはやそれしか思いつかない。そしてそんなことを素知らぬ顔で「罰則だ」と言ってやってのける彼が全く想像できない。君の方がよっぽどふしだらだと思うよ?

はっとナナコを見るとまた真っ赤になってフリーズしてるので、思わず吹いてしまった。


まったく困ったお姫さん。




IIII


『………。』
「……貴様を呼んだ覚えはないが」
「ほら、私だって共犯なわけだしさ」





チャラ男リーマスも意外に萌えなんですよ。






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ